前週末4日の米株式市場のNYダウは401.97ドル高(+1.26%)と大幅反発。10月雇用統計では依然健全な労働市場が証明されたものの同時に失業率が上昇、さらに連邦準備制度理事会(FRB)高官の発言を受け利上げ減速観測も再燃し長期金利が一時低下すると一段高となった。ただ、長期金利が再び上昇すると相場は失速。引けにかけて再び大きく上昇する変動の激しい展開となり終了した。ナスダック総合指数も大幅反発、主要株式指数がそろって上昇した米株市場を受けて、日経平均は前週末比207.04円高の27406.78円と3日ぶりの反発でスタート。その後は、上げ幅を拡げるも上値の重い展開となっている。
個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>、アドバンテ<6857>などの半導体関連株が上昇、日本郵船<9101>や川崎汽船<9107>、商船三井<9104>などの海運株も堅調に推移している。ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>、キーエンス<6861>などの大型株も上昇。ソニーG<6758>や任天堂<7974>、ベイカレント<6532>などのグロース株の一角、住友商事<8053>や三菱商事<8058>などの商社株の一角も上昇した。ほか業績予想の上方修正を発表したヤマシンフィルタ<6240>、当面の収益2ケタ成長見通しや株式分割を好感されたインソース<6200>が急騰、セレス<3696>、アイスタイル<3660>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。
一方、東邦チタニウム<5727>や大阪チタ<5726>などの非鉄金属が下落。ANA<9202>やJAL<9201>などの空運株、エーザイ<4523>やメルカリ<4385>などが軟調に推移、今期営業減益見通しをネガティブ視された山一電機<6941>、通期業績予想を下方修正したリコー<7752>などが大幅に下落した。そのほか、テモナ<3985>、新電元工業<6844>、ケーズホールディングス<8282>などが東証プライム市場の値下り率上位に顔を出した。
セクターでは鉄鋼、海運、金属製品が上昇率上位となった一方、空運、不動産が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の72%、対して値下がり銘柄は25%となっている。
本日の日経平均株価は、3日ぶりの反発でスタートした後上げ幅をじりじり拡げる展開が続いている。シカゴ日経225先物清算値は大阪比315円高の27505円で、シカゴ先物にサヤ寄せする格好から本日の日経平均は買い先行で取引を開始した。ただ、今週は8日に米中間選挙の投開票のほか、10日には10月の消費者物価指数(CPI)の発表を控えているため、積極的な売買は手控えられやすいとの指摘も聞かれている。そのほか、アジア市況は堅調に推移、米株先物はやや軟調な展開が続いている。
新興市場は冴えない展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は下落してスタートした後前場中ごろにかけてじりじりと下げ幅を縮小、その後プラス圏に浮上した。米長期金利が依然として4%を超えて推移していることはバリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株にとって重しとなっている。東証プライム市場の決算発表を終えた銘柄中心に物色が向かっていることも新興市場の冴えない動きに繋がっている可能性があろう。前引け時点で東証マザーズ指数が0.01%安、東証グロース市場Core指数が0.13%
安となっている。
さて、4日には米10月雇用統計が発表された。非農業部門雇用者数が26.1万人と市場予想を大きく上回り、平均時給は前年同月比で+4.7%と市場予想に一致して前月比では+0.4%と市場予想を上回った。一方で、失業率が3.7%と市場予想を超えて上昇した。10月の雇用統計は結果的にまちまちなものとなった。ブルームバーグ・エコノミクスのリポートでは、「雇用の伸びは力強かった一方で、失業率が大きく上昇した。
データのノイズを整理した上での結論は、労働市場はなお非常にタイトで失業率が中立水準付近になるにはまだ大きな調整が必要ということだ」と指摘している。
FOMCでは政策金利の0.75ポイント引き上げを決定、FRBのパウエル議長は記者会見で労働市場の状況について、「明白な」形ではまだ軟化していないと述べていた。金融当局の引き締め策が雇用に重しとなるが、パウエル議長は労働市場への悪影響について明白な失業増加ではなく主に求人件数の減少という形で表れることへの期待を表明しているようだ。
8日には米中間選挙が予定されている。中間選挙では議会多数派の交代が決まる可能性があるため政局の動向にもある程度の注意が必要である。ただ、インフレ率が市場予想を大きく下回るか、やはり10日に発表される米10月CPIの結果に市場の注目が集まっている。10月の総合CPIは前年同月比7.9%上昇と9月の8.2%上昇からわずかな減速にとどまる見込み。コア指数も同6.5%上昇で9月の6.6%上昇に比べて伸びが若干鈍るとみられているが、なお非常に高い水準。FRBは、12月のFOMCで利上げペースを落とす可能性も示唆しているが、最終的な判断は今回の物価見通しが鈍るかどうかが極めて重要である。
常々、毎週月曜日の当欄では年末にかけて一旦の反発が起こる可能性があることを示唆してきた。CPIの結果には注目しているが、中間選挙が実施される11月以降のS&P500指数の株価パフォーマンスは良好という経験則が市場では知られている。こうしたアノマリーが意識される形で、今後も筆者の想定に変化はない。世界的に様々なリスクが散見されるなか年末にかけて一旦の反発があったとしても来年以降大きく下落する可能性があることを念頭に置いている。さて、後場の日経平均は、堅調な展開が続くか。米株先物の動向を横目に、個別に材料が出た銘柄中心に物色が継続するか注目しておきたい。
<AK>
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