27日の米株式市場でダウ平均は194.17ドル高(+0.60%)と5日続伸。7-9月期国内総生産(GDP)速報値が3四半期ぶりプラス成長に回復したことを好感し買いが先行。
一部企業の好決算を好感した買いや長期金利の低下も相場を支援し、ダウ平均は終日堅調に推移。一方、メタ・プラットフォームズの低調な決算を受けた株価下落が重石となり、ナスダック総合指数は−1.62%と大幅続落。ナスダックの下落や引け後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算が失望的だったことを背景に、日経平均は247.86円安と大幅下落でスタート。ただ、時間外取引のナスダック100先物の下落率が小幅だったことや、日銀金融政策決定会合の結果と黒田総裁の記者会見を控える中、持ち高を傾ける向きは限られ、その後は、前引けまで下げ幅を縮める動きが続いた。
個別では、ファーストリテ<9983>のほか、郵船<9101>、商船三井<9104>、川崎汽船<
9107>の海運が大幅安。日立<6501>、SMC<6273>、エムスリー<2413>、TDK<6762>、オムロン<6645>なども大きく下落。ほか、INPEX<1605>、三井物産<8031>のエネルギー関連、東エレク<8035>、ディスコ<6146>の半導体関連が軟調。ファナック<6954>が業績予想の下方修正で急落しており、HOYA<7741>は前日の後場の取引時間中に発表した決算が引き続き売り材料視されている。NRI<4307>は市場予想を下回る決算で大きく下落。鉱区延長に関してネガティブなニュースが伝わっている三井松島HD<1518>は急落となっている。
一方、ソフトバンクG<9984>、トヨタ自<7203>、メルカリ<4385>、コマツ<6301>、東京海上HD<8766>、SHIFT<3697>などが高い。決算関連ではイビデン<4062>、新光電工
<6967>が急伸し、アドバンテスト<6857>、東邦チタニウム<5727>、OLC<4661>、富士電機<6504>、富士通<6702>なども高い。業績予想を上方修正した信越化<4063>も上昇率は限定的ながらも買い優勢となっている。東証プライム市場の値上がり率トップは決算が好感されたシンプレクスHD<4373>となった。
セクターでは海運、精密機器、鉱業が下落率上位となった一方、陸運、保険、輸送用機器が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の43%、対して値上がり銘柄は52%となっている。
27日の米株式市場の引け後に発表されたアマゾン・ドットコムの決算は失望的なものとなった。7−9月期実績としては、売上高は市場予想並みとなったが、10−12月期見通しは市場の期待値を大きく下回った。株価も時間外取引で急落している。収益化見通しの立っていない分野に膨大な投資をかけているメタ・プラットフォームズとは異なるが、5四半期連続で営業経費の伸びが増収率を上回るなどコストの増加傾向が投資家の不安を誘っている。
10−12月期はホリデーシーズンだが、記録的なインフレ環境下で、今年は例年よりもセールが前倒しされている。また、昨年のような世界的な供給網混乱を警戒して調達を進めた結果、ウォルマートやターゲットのように過剰な在庫を抱えている小売企業が多く、競争も激しくなっている。このため、次回の10−12月期決算も冴えないものに終わる可能性がありそうだ。
一方、アップルは7−9月期の売上高が市場予想を上回った一方、スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の売上高やサービス事業の売上高が市場予想に届かなかった。時間外取引の株価は一時乱高下したが、ほぼ立ち会い市場での終値と同水準に落ち着いている。
改めて振り返ってみると、GAFAM決算はほぼ全敗に終わった。アップルこそ株価は急落しなかったものの、これは事前に新型スマホの販売動向の不振が複数の報道を通して織り込まれていたからに過ぎない。そのため、実質的には全敗だろう。今回のGAFAM決算の結果が意味することは大きい。高いブランド力と包括的なサービス提供力から、GAFAMのような大型企業であれば景気減速の影響を免れることが可能との期待もあった中、今回の結果はそうした結果を一蹴したといえる。特に、アルファベットの決算で、時勢に乗るYouTube広告の四半期売上高が前年同期比で減収となったことなどは、個人的にはかなりのインパクトがあった。
他方、クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレスやビザなどの決算は総じて良好だった。また、前日に発表された米7−9月期国内総生産(GDP)の結果などからも、米国での個人消費は力強い基調が確認された。しかし、マクロの景況感については、GAFAMのような大型企業でも苦戦するほどに確実に悪化方向にあることを軽視してはならないだろう。
こうした中、一段と重要性を帯びてきたのが来週に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。先週末のウォールストリート・ジャーナル紙の報道に加えて、サンフランシスコ連銀のデーリー総裁やセントルイス連銀のブラード総裁らの発言の変化を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策スタンスの転換が期待されている。11月会合での0.75ptの利上げはほぼ確実だが、12月会合の利上げ幅縮小に向けてどのようなメッセージが出されるか非常に注目される。景気後退懸念が強まる中では本来、マクロ経済政策の下支えが期待されるが、インフレ抑制が最優先とされている今は逆に引き締めが行われている。緩和とまではいかずとも、利上げ減速に向けた地ならしをどのようなメッセージと共に進めるのか、相場にとってビッグイベントとなろう。
午後の日経平均は神経質な展開が予想される。本稿執筆時点では日銀金融政策決定会合の結果がまだ発表されていないが、恐らく現状維持だろう。注目は黒田総裁の会見であり、足元の国内の物価動向やイールドカーブ・コントロールなどの現状の政策枠組みについて、どのような見解を示すかで為替が乱高下しそうだ。日経平均は為替要因で攪乱されやすく注意したい。
(仲村幸浩)
<AK>
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