前日27日の米株式市場でのNYダウは85.79ドル安(-0.24%)と6日ぶりに反落。6月耐久財受注速報値が予想を下回ったことで景気回復への懸念につながった。また、米疾病管理予防センター(CDC)がワクチン接種完了者に対しても一部の地域で室内でのマスク着用を推奨する方針に転じると報じられ、新型コロナ・デルタ株流行への警戒感も重しとなった。加えて、連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を明日に控えた持ち高調整の売りも目立ち終日軟調推移となった。決算を控えた主要ハイテク株も売られ、ナスダックも1.21%安と6日ぶりに反落した。米株安の流れを受けて日経平均は295.23円安の27674.99円でスタート。200日移動平均線を意識した底堅さがしばらく見られたが、前場中頃からは下げ幅を300円以上に拡げ、27600円台での推移となった。
個別では、決算や業績予想の引き上げを手掛かりにシマノ<7309>、日清粉G<2002>、三菱自<7211>、メルコ<6676>などが大きく上昇。先日第1四半期業績予想の上方修正を発表していたKOA<6999>は、修正値通りの着地となった一方、上半期業績予想として新たに前年同期比7.4倍となる営業利益を示したことに加え、未定だった中間配当の実施を示したことで大幅高となった。そのほか、日本製鉄<5401>やJFE<5411>などの鉄鋼株が大きく続伸している。
一方、塩ビなど生活環境基盤材料がけん引する形で市場予想を上回る第1四半期決算となった信越化<4063>は、軟調な地合いの影響もありもみ合いの末下落。今期営業利益予想がほぼ市場予想並みにとどまったGenky DrugStores<9267>は短期的な材料出尽くしで利益確定売りに押された。上半期実績および上方修正後の通期計画値も市場予想を上回り、配当予想の増額も発表したキヤノンMJ<8060>は、先日のキヤノン<7751>の業績上方修正後に株価が上昇していたこともあり、短期的な出尽くし感から売られた。アマノ<6436>も第1四半期営業損益は黒字転換となったもののサプライズか感に乏しく、パーキングシステム事業の回復遅延を警戒視する動きから下落した。
そのほか、中国政府の規制強化の動きを受けたソフトバンクG<9984>や、SUMCO<3436>、レーザーテック<6920>、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>、ルネサス<6723>
などの半導体関連株、日本電産<6594>、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、リクルートHD<6098>など主力どころが大きく下落している。
セクター別では金属製品、サービス業、情報・通信業などが下落率上位に並んでいる一方、鉄鋼、石油・石炭製品、繊維製品などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の73%、値上がり銘柄は21%となっている。
日経平均は引き続き200日移動平均線を意識したもみ合いが継続。前日の米株市場がハイテク株を中心に大きく下落したなかでも下げ渋り、同線が支持線として引き続き意識されてきているようだ。バリュエーション面でもこの水準では割安感があるため、当面はこの水準が下値メドとなりそうだ。しかし、懸念要素には事欠かず、堅調な米株市場がもう一段崩れるようなことがあると、短期的には再び下に突っ込む可能性も捨てきれないため安心できる状況でもないだろう。
中国政府はテック企業に加えて教育費高騰を抑える目的で教育産業にまで規制強化の手を伸ばし、ここ最近、中国企業の株価下落が目立ってきている。中国企業の米国預託証券(ADR)の値動きを示す米ナスダックのゴールデン・ドラゴン・チャイナ指数は直近3営業日の下落率が約19%と過去最大を記録し、2月中旬に付けた高値から半値近くまで下げた。米国市場での中国株だけでなく、上海総合指数や深セン総合指数、香港ハンセン指数なども足元下落ぶりが目立つ。中国に依存したビジネスを展開する日本企業は多く、今回の一連の件が直接的な影響を及ぼさずとも、中国株安が日本株安を連想させる効果は十分に働きそうだ。
また、前日に国際通貨基金(IMF)は改定した世界経済見通しで2021年の成長率見通しを発表した。全体の予想値は6.0%と前回4月の予測から据え置いているが、ワクチン接種進展の格差を反映して、先進国の多くの予想が引き上げられた一方、新興国の多くは引き下げられた。
こうした中、我が国日本はどうかというと、予想が引き上げられた多くの先進国とは反対にむしろ前回より引き下げられてしまった。地域別でみると、けん引役は米国で、21年の成長率は前回予測から0.6ポイント高い7.0%、22年も1.4ポイント上方修正されて4.9%となっている。また、ユーロ圏の成長率見通しは21年が0.2ポイント高い4.6%、22年は0.5ポイント高い4.3%と揃って上方修正された。対して、日本については、相次ぐ緊急事態宣言の影響もあり、21年の成長率見通しは0.5ポイント低い2.8%
に引き下げられた。
景気敏感株の多い日本株にとって、景気見通しの引き下げは痛い。少なくとも、これでは積極的な買いは期待できないだろう。マクロ経済の見通しを基に投資戦略を立てるグローバルマクロ系のファンドなどは日本株の投資比率を引き下げる可能性があり、憂うべき事態だ。一部の外資証券では、ここ半年近い間の日本株の欧米対比での軟調ぶりを背景に、割安感が出てきたとして投資判断を「売り」から「中立」に引き上げたとも伝わっているが、指数が切り上がるほどの買いが入ってくるとは想定しにくい。
そのほか、世界での新型コロナ・デルタ株の流行も依然気懸かり。ワクチン接種が先進国の中でもいち早く進んだ英国でも、1日当たりの新型コロナ死者数が3月以来の多さになったと伝わっている。コロナ感染が米国や欧州でさらに広がるとなると、株価の大幅な調整が再び入る可能性もあろう。
また、市場予想を上回る決算を発表する企業が相次ぐ米国でも、好決算が素直に好感されているものばかりではない。四半期ベースで過去最高の売上高および最終利益を叩き出したテスラの株価は、CEOのマスク氏が世界的な供給網の混乱や半導体不足を強調したことが嫌気され、下落した。アップルも4-6月期では過去最高の売上を記録したものの、部品不足に加え、新型コロナ感染防止で部分的に残る行動制限がビジネスを年内圧迫し続けると見込まれ、株価は決算発表後に下落している。
好決算を受けて株価が素直に上昇しているものの多くは、グーグルを傘下にもつアルファベットや、ツイッター、スナップチャットなど部材不足の影響がない、広告ビジネスを展開する企業などだ。日経平均やTOPIX(東証株価指数)といった指数が上昇していくためには、比率の高い製造業の株価上昇が欠かせないが、これまでの安川電機<6506>、日本電産、信越化学などの株価反応を見ていると、今回の4-6月期決算シーズンでは、こうした展開は見込めそうにない。
全体が底上げされていくには、ワクチン接種が一段と進展することで感染拡大に歯止めがかかり、政局不透明感も払拭されていると予想される秋頃に、7-9月決算が発表され、ここで業績予想の上方修正が相次ぐことが必要と考える。そうしたシナリオを考えると、やはり日経平均の上値は当面重いと言わざるを得ないだろう。
<AK>
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