25日の米株式市場でNYダウは反落し、173ドル安となった。前日に3万ドルの大台に乗せたことに加え、翌26日に感謝祭の休場を控え、利益確定の売りが優勢となった。
週間の失業保険申請者数が予想外に増加したほか、4-5日開催の連邦公開市場委員会
(FOMC)議事録で速やかな追加緩和の可能性が示唆されなかったことなども嫌気された。ただ、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は3日続伸し、過去最高値を更新。国内では新型コロナウイルス感染拡大に伴い東京都が飲食店などに対し営業時間短縮を要請し、西村康稔経済財政・再生相も感染が深刻化すれば「緊急事態宣言が視野に入ってくる」などと述べたことから、本日の日経平均は41円安でスタート。ただ、米ハイテク株高を追い風に値がさ株を中心に買いが入り、日経平均はプラス転換した。
個別では、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、エムスリー<2413>が3%超、日本電産<6594>が4%超の上昇となっている。村田製<6981>、信越化<4063>、東エレク<8035>なども堅調。中小型株では共同実験への参画が材料視されたブイキューブ<3681>、制限値幅拡大の日本金属<5491>などが賑い、ジンズメイト<7448>が東証1部上昇率トップとなっている。一方、ソニー<6758>、ファーストリテ<9983>、トヨタ自<7203>は小安い。ソニーは12日に発売した家庭用ゲーム機「プレイステーション5」の好調が伝わっているが、これまでの株価上昇を受けて利益確定売りが出ているようだ。JAL<9201>は公募株の受渡日を迎え急落し、東証1部下落率トップとなっている。
セクターでは、その他製品、鉱業、情報・通信業などが上昇率上位。半面、空運業、保険業、ゴム製品などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は37%となっている。
日経平均は国内外の新型コロナ感染拡大と景気下押し懸念を背景に反落して始まったが、すぐさまプラスに切り返し、地合いの良さを印象付けた。米ハイテク株高の流れを引き継いで値がさグロース(成長)株を中心に買いが入っているが、景気敏感系の大型バリュー(割安)株も大きく下押ししているわけでなく、前引けでの上昇率は日経平均の0.66%に対し、東証株価指数(TOPIX)も0.45%としっかり。新型コロナワクチンの実用化期待などが株価の下支え要因として挙げられているが、足元の感染拡大とともに「巣ごもり」の代表格とされる任天堂が買われているあたりを見ると、
「株高に乗り遅れまい」というムードこそが最大の上昇要因だろう。
日本電産やエムスリーは上場来高値(株式分割考慮)を大きく更新。一定期間内で結果を出すことが求められる機関投資家はバリュー株のリバーサル(株価の反転上昇)への関心が高いが、一方で投資期間に制約のない個人投資家にとっては「着実に企業価値を向上する企業」への投資が肝要であることを改めて確認できる。
半面、日経平均は26500円を前に上値が重く、前日の高値26706.42円には遠い。前日は朝方に高値を付けたのち失速する格好となり、東証1部売買代金も3兆1507億円まで膨らんだことで、目先ピークを付けた印象はある。例年、米国では感謝祭を過ぎると休暇入りする市場関係者が多いが、今年はここまであまりリスクを取らずにきたことで、早々に休暇ムードになっているという話も伝わっている。年内は海外投資家が相場をけん引するシナリオを描きにくくなるかもしれない。
また、日経平均の株価純資産倍率(PBR)は1.2倍近くまで上昇。これは米中対立の激化懸念が一段と強まった2018年12月以前の水準であり、バリュエーション的には経済の正常化期待をある程度織り込んでいるとも言えるだろう。国内外で新型コロナ感染拡大と規制再強化の動きが広がり、足元の景気下押しリスクがくすぶるなか、バリュエーションが一段と向上するかは見通しづらい。
新興市場でもマザーズ指数の上値が重いが、12月にIPO(新規株式公開)ラッシュを控え、需給悪化の懸念がくすぶる。
これまでの株価上昇に乗り遅れた投資家の買いで日経平均は堅調に推移するだろうが、一段高に向かうには少々時間を要するとみておきたい。
(小林大純)
<NH>
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