21日の米株式市場でダウ平均は697.10ドル安(-2.06%)と大幅反落。主要小売企業の決算で需要鈍化見通しが嫌気され、下落スタート。米2月製造業・サービス業の購買担当者景気指数(PMI)が予想以上の結果となったことで米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化観測が強まり、年初来の水準まで上昇した長期金利がさらなる売り圧力となった。ナスダック総合指数は-2.50%と大幅に3日続落。米株安を引き継いで日経平均は207.11円安からスタート。心理的な節目の27500円や75日移動平均線を下放れたことで売りが加速する中、前場後半には一時27046.08円(427.02円安)まで下げ幅を拡大した。一方、27000円が近づいたところからは買い戻しや押し目買いが入り、前引けにかけては下げ渋った。
個別では、東エレク<8035>、ソフトバンクG<9984>、ソニーG<6758>、キーエンス<
6861>、村田製<6981>、TDK<6762>などのハイテク株が大きく下落。メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、マネーフォワード<3994>、ラクス<3923>、Sansan<4443>などグロース株も全般下落。為替の円安基調は保たれているが、トヨタ自<7203>、日産自<7201>、マツダ<7261>、SUBARU<7270>なども安い。住友鉱<5713>、三菱マテリアル<5711>、JFE<5411>、神戸製鋼所<5406>、山陽特殊製鋼<5481>、INPEX<1605>、石油資源開発
<1662>、三菱商事<8058>、丸紅<8002>など、直近堅調だったバリュー(割安)・高配当利回り株も売り優勢。日本郵政<6178>による株式売却が報じられたゆうちょ銀行<7182>や、レーティング格下げが観測されたT&DHD<8795>、小野薬<4528>、業績予想を下方修正したコナカ<7494>なども下落。
一方、郵船<9101>、商船三井<9104>の海運が堅調。ディスコ<6146>がハイテク株安のなか逆行高。アサヒ<2502>、キリンHD<2503>、第一三共<4568>なども上昇。ほか、自社株買いを発表したノジマ<7419>が買われ、東証スタンダード市場では、公募増資による投資拡大や増配が評価されたフルハシEPO<9221>がストップ高となっている。
セクターでは保険、サービス、繊維製品を筆頭にほぼ全面安となった。一方、海運のみが上昇となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体の80%、対して値上がり銘柄は16%となっている。
前日の米国市場では金利上昇を警戒し、リスク資産に売りが広がった。米10年債利回りは3.95%(前営業日比+0.13pt)と大きく上昇。昨年末12月28日に付けた3.89%
を明確に上回り、上向きに転じた25日移動平均線は75日線を下から上抜けるタイミングを窺う展開となっている。米長期金利は再び上昇トレンド入りした可能性が高く、4%超えは時間の問題か。昨年10月下旬をピークに低下基調が続いていた米国債の先行き変動リスクを示す指数、MOVE指数も25日線に続き、75日線をも上回った。今後も金利動向を注視する必要があろう。
株式市場もさすがにリスク回避のムードが強まっている。ダウ平均は前日の大幅下落により、25日線に続いて75日線を大きく下回った。同線を下回ったのは昨年10月下旬以来だ。75日線も下向きへの転換が近づいており、25日線とのデッドクロス形成が視野に入っている。ナスダック総合指数も25日線を下回った。まだ75日線、200日線よりは上方を維持しているが、200日線割れが迫っており、同線を下回ると投資家心理は明確に弱気へと転換しそうだ。
27500円水準で膠着感を強めていた日経平均も本日は大きく下落し、一気に27000円を視野に入れる展開となっている。これまでサポートラインとして働いてきた75日線、200日線も下回ってきていて、需給悪化が警戒される。
日本取引所グループが公表する投資部門別売買動向によると、これまで、年金基金の動きを反映する信託銀行と個人投資家が売り越しを見せる一方、海外投資家の先物を中心とした買い越しが日本株の下値を支えてきた。しかし、日経平均の27500円割れ、75日線及び200日線割れにより、商品投資顧問(CTA)などのトレンドフォロー型ファンドが売りに転じてくる可能性が高く、今後の展開には注意が必要だろう。
前日の米国市場で長期金利の大幅上昇を引き起こした原因は、S&Pグローバルが発表した米2月サービス業購買担当者景気指数(PMI)が50.5と市場予想(47.3)を大幅に上回り、再び景況感の拡大を示唆する50を超えたことだ。米国では強い雇用統計や物価指標に続き、景気指標でも強い結果が目立ちはじめており、米連邦準備制度理事会
(FRB)の利上げが想定以上に長期化する可能性が懸念されている。フェデラルファンド(FF)金利先物市場の予想をみると、一時は早ければ3月で打ち止め、遅くとも5月が最後と思われていたFRBの利上げは、いまや6月、7月にも利上げが続く可能性を織り込みはじめている。
ただ、金融引き締めの効果は一般に1年以上のタイムラグをもって顕在化することを踏まえれば、足元の強い経済指標が突如悪化する可能性はある。また、強い指標が続いているとはいえ、すでに政策金利が4.50-4.75%にあることや一度縮小した利上げ幅を再び引き上げる程の材料が揃っているとは思えないため、さすがに今後も利上げ幅は0.25ptで据え置かれると考えている。
とはいえ、一時は大よその終着点が見えていたターミナルレート(政策金利の最終到達点)の議論に再び不透明感が台頭してきた今、株式に強気になるには難しいだろう。今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)を通じて利上げスケジュールが改めて明確化されるまでは相場の神経質な展開が続きそうだ。
こうした中、今晩はFOMC議事録(1月31日-2月1日開催分)が公表される。前回のFOMC後の会見では、パウエル議長が「ディスインフレ」発言を繰り返すなど、FRBの早期利上げ停止期待を高めた経緯があり、議事録の内容はタカ派である可能性は低いか。
一方、その後の強い米経済指標を受けて、この議事録はすでに過去のものとしてほとんど重要視されないため、むしろ、想定よりもタカ派である場合のリスクに注意したい。
また、今晩は米半導体のエヌビディアの決算が予定されている。半導体銘柄の中でも特に成長性が高く影響力の大きいエヌビディアの決算であく抜け感が強まれば、指数寄与度の大きい関連銘柄の上昇につながりそうで、相場の下支え役として期待したい。ただ、東京エレクトロン<8035>の株価は52週線に頭を抑えられて失速した後、再び200日線も割り込んできている。エヌビディアの決算と株価反応が期待と反対にネガティブなものとなれば、足元でテクニカルが悪化してきている日米の株式市場が本格的な調整局面入りとなる恐れがあり、注意したい。
(仲村幸浩)
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