5日の米国市場でダウ平均は546.64ドル高の33674.38ドル、ナスダックは269.02ポイント高の12235.41で取引を終了。健全性が警戒され前日に大きく売られた地銀の株価が大幅反発したことで警戒感が緩和、さらに携帯端末アップルの好決算も好感された。また、4月雇用統計が総じて予想を上回ると経済のソフトランディング期待から買戻しが強まり、相場全体を一段と押し上げた。セントルイス連銀のブラード総裁が銀行のストレスを巡り「制御可能」との見解を示し、金融不安がさらに緩和したことも買い材料となり、終盤にかけて上げ幅を拡大。堅調な展開となった米株市場を横目に、8日の日経平均は前営業日比62.49円安の29095.46円と反落でスタート。その後も軟調な展開となっている。
個別では、東エレク<8035>やレーザーテック<6920>などの半導体関連株の一角、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>など金融株が軟調に推移。ソニーG<6758>、ファーストリテ<9983>、ソフトバンクグループ<9984>、資生堂<4911>なども下落した。そのほか、第1四半期決算をネガティブ視されたアドウェイズ<2489>、資源・エネルギー価格高騰や円安で中計ROE目標を引き下げたアルインコ<5933>が大幅に下落、ジャムコ<7408>、コーセー<4922>、日本エム・ディ・エム<7600>などが東証プライム市場の値下がり率上位に顔を出した。
一方、JR東<9020>やJR西<9021>などの鉄道株、ANA<9202>やJAL<9201>などの空運株が堅調に推移。郵船<9101>や川崎汽船<9107>などの海運株のほか、任天堂<7974>やキーエンス<6861>、メルカリ<4385>、ダイキン<6367>、ソシオネクスト<6526>なども上昇。そのほか、第1四半期業績が想定以上の好スタートとなったJT<2914>が上昇、新中計などを評価して国内証券が格上げを発表したJVCケンウッド<6632>が急騰、ひらまつ
<2764>、Ubicomホールディングス<3937>などが東証プライム市場の値上がり率上位に顔を出した。
セクターでは鉱業、銀行業、保険業が下落率上位となった一方、空運業、パルプ・紙、海運業が上昇率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の60%、対して値下がり銘柄は36%となっている。
本日の日経平均は売りが先行、その後はやや下げ幅を広げている。相場に対する過度な警戒感は後退している反面、今週は決算発表がピークを迎えることもあって手掛けにくさが意識されているようだ。
一方、新興市場は堅調な展開が続いている。マザーズ指数やグロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、上げ幅をじりじりと広げる展開となった。国内決算発表の本格化に備えて、本日は値動きの軽い新興株に幕間つなぎの物色が向かっている可能性がある。前引け時点での東証マザーズ指数は1.27%高、東証グロース市場Core指数は1.54%高で時価総額上位銘柄が上昇をけん引した。
さて、国内連休中の米国市場は荒い値動きとなった。2-3日で開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、連邦準備制度理事会(FRB)が市場の予想通り0.25ポイントの利上げを決定した。声明では前会合まで記載していた追加利上げの可能性を示唆する文言を削除したため利上げ停止の観測が強まった。ただ、パウエル議長が会見で、FRBの見通しに基づくと利下げは想定されないとすると利下げ期待が後退。また、インフレが高止まりすれば利下げはしないと言明しており、10日に発表される4月米消費者物価指数などのインフレ指標に注目が集まる形となった。
4日には、地銀ウェスタン・アライアンス・バンコープが身売りを含む複数の選択肢を検討しているとの報道を材料に地銀、金融株の下げが全体の下落をけん引した。連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げを受けて地銀の経営安定性に対してさらに警戒感が強まっている。同行がこの報道を「完全な誤り」だと否定したため警戒感は緩和したが、ヘッジファンド運営会社パーシング・スクエアの創業者でアクティビストのビル・アックマン氏は、「銀行システムのストレスはまだ当分終わらない」と警告している。米地銀や金融機関の動向には引き続き注視する必要があろう。
他方、5日に発表された4月米雇用統計では、雇用者数と賃金の伸びがいずれも加速した。非農業部門雇用者数は前月比25万3000人増(市場予想:18万人)で、平均時給は前年同月比4.4%増(市場予想:同4.2%増)となった。失業率は3.4%(市場予想:3.6%)で半世紀ぶりの低水準だった1月と並ぶ水準となった。今回の雇用統計の結果は、労働需要の底堅さを浮き彫りにしており、KPMGのチーフエコノミストであるダイアン・スウォンク氏は「今回の統計は利上げ休止に関して我々が望むほどの安心感をもたらすものではない」と話したようだ。
やはり、今後のインフレ指標の結果には注目が集まるだろう。食品とエネルギーを除いたコアCPIは前年同月比で5.5%上昇と予想されており、3月は5.6%上昇だった。
物価上昇圧力のペース鈍化が小幅にとどまっており、インフレが根強いことを示唆する。11日には4月の米生産者物価指数(PPI)も公表される予定で、前月比では物価圧力の強まりが予想されている。これらの指標の結果次第では相場が大きく動く可能性があるため、今週は様子見姿勢を強める判断も妥当といえそうだ。
過去の月曜日当欄では、長期的には欧州不動産市場の動向や金融不安などの再燃などの多くのネガティブ材料浮上によって株価が下落するシナリオを想定してきた。今後の米国の物価上昇率の動向、FRB高官の発言には引き続き最大限注目しておきたい。
後場の日経平均は、軟調な展開が続くか。決算発表を終えた銘柄や新興株への物色が継続するか注目しておきたい。
(山本泰三)
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