―金融・医療・農業・不動産・建設のレボリューションを担う有望株をロックオン!―
週末9日の東京株式市場は気迷いムードのなか日経平均は小幅反落となった。11月3日の米大統領選を前に日米ともに主力株は今一つ方向性が定まらない手探り状態の売り買いが続く。次期大統領を巡る戦いはバイデン氏が優勢を維持したまま最終盤に突入、マーケットでも“バイデン大統領”誕生を織り込みに行く動きにあるが、トランプ氏も必死に食い下がる状況にあり、混戦となった場合は法廷闘争に持ち込まれる可能性も指摘されている。
相場は「カオス」を嫌うだけに、大統領選の結果を見極めるまでは機関投資家にすれば見切り発車的に買いポジションを高めにくい状況にある。日本国内では10月最終週から、企業の4-9月期決算発表が本格化することもあって、しばらくはマーケットと対峙するにも半身の構えで臨む投資家が増えそうだ。
●ITソリューションに投資マネー集中
しかし、こうしたなかも個別株は全体指数をよそに強い動きを示す銘柄が少なくない。それはグロース株とバリュー株どちらが優位という次元ではなく、コロナ禍で一段と存在感を高めたITソリューション関連銘柄に投資マネーが集結している。スガノミクスの骨子ともなっている官民を挙げてのデジタルトランスフォーメーション、いわゆる業界横断型のDX相場が繰り広げられているのだ。
新型コロナウイルス対策として実施された現金給付10万円については、世界的に見ても日本のスピードの遅さが露呈し、「アナログ政府」の烙印を押された。かつて世界に名を馳せた電子立国日本の名誉挽回に向けてもはや待ったなし、菅首相肝入りの「デジタル庁」新設の動きは決してダテではない。これは菅政権下で初の編成となる21年度概算要求でも如実に反映された。総務省は21年度予算の概算要求で地方自治体のDXに向けて38億8000万円を計上、これは前年度当初予算比で実に5倍の水準で、鳴り物入りで打ち出されたデジタル行政加速の方針に歩調を合わせる。一方、民間におけるデジタルシフト推進に向けた布石にも余念がない。経済産業省はデジタル技術を活用する企業への支援に前年度比倍増となる389億円を計上している。
●勝ち残りをかけたDXバトルロイヤル開始
直近では今月7日、富士通 <6702> とファナック <6954> 、NTTコミュニケーションズの3社が、製造業のDXを支援する新会社「DUCNET」を設立しており、メーカーや商社、システム会社など関連企業のコミュニケーションネットワークをクラウドサービスで提供する。NTTグループはNTT <9432> によるNTTドコモ <9437> へのTOBがマーケットの話題をさらったが、5G関連分野への経営資源投下と同時に来たるべきDX時代で主導権を握ることに野心を燃やしているようにも見える。NTTデータ <9613> は米ビッグデータ分析のスノーフレイクと資本・業務提携し、人工知能(AI)を使ったビジネス支援サービスで協業することで、顧客のDX推進の担い手となるべく準備を進めている。
また、創業125年の映画業界の老舗である松竹 <9601> も動きだしている。9月にLINE <3938> との提携を発表、映画配信はもとよりLINEのデジタル技術を活用した顧客のデータ分析を基盤に販促を図り勝ち残りをかける。更にDX推進では人材の育成も重要課題となる。日立製作所 <6501> がグループ全16万人を対象としたデジタル教育を開始したと伝わったことは市場でも話題となった。もちろん、これはIT系企業に限ったことではなく、三井住友海上火災保険は約5000人の営業社員にデータ分析研修を実施し、2021年から取引先や自治体向けに自動車事故や自然災害などのデータ販売も手掛けられる体制を作る方針にあることを、大手メディアが報じている。
●DX時代にスポットライト浴びる5銘柄
DX関連という投資テーマは、デジタルサービスを単に活用するというのではなく、企業が自らのデジタル化に向け経営資源を投入していくことを意味する。AI・IoTの大きな枠組みをいかに細分化して実践的に日常のビジネスに浸透させるか、その競争が向こう5年間加速していくことになりそうだ。今回は、各業界のDX化推進の担い手として、今後の株式市場で脚光を浴びそうな有望株を5銘柄選りすぐった。
<金融DX>IXナレッジはブロックチェーンで先駆
アイエックス・ナレッジ <9753> [JQ]は直近4ケタ大台復帰を果たし、上値追いが佳境に入りつつある。コンサルティングからシステム開発及びシステム運用に至るまでワンストップで対応するシステムインテグレーターで、情報セキュリティーやRPAソリューションなども展開。金融系に強みを持ち、メガバンク向け大型案件で優位性を発揮し、IBMと連携したブロックチェーン 分野においても独自技術で業界を先駆する。これは金融に的を絞ったものではないが、将来的には金融も含めた幅広い分野での展開を会社側では想定しているもよう。また、オープン系基盤を採用した証券基幹システムの構築で高実績を有しており、同業態では株価を急騰させたインタートレード <3747> [東証2]やソルクシーズ <4284> などの存在も同社株を強く刺激する。業績も堅調、21年3月期は営業利益段階で小幅増益見通しにとどまるが、PERなどファンダメンタルズ面では依然として出遅れ感が強い。
<医療DX>FRONTEOはコロナでも新境地開拓
FRONTEO <2158> [東証M]の800円台近辺は強気に買いで対処して報われる公算が大きい。6月2日に年初来高値1056円をつけた後調整を入れたが25日・75日移動平均線が収れんする700円台半ばを踊り場に再浮上の機をうかがっている。同社はAIを駆使してリーガルテック事業を展開するが、近年はその高度な技術力をライフサイエンス分野に拡張して新境地を開拓している。創薬支援AIシステムを活用した新型コロナウイルス感染症の研究成果を発表するなどでも話題となった。AIソリューション事業ではライフサイエンス分野での大型案件のマイルストーンフィーを獲得、これが20年4-6月期の業績に反映されたほか、今後も同分野の需要獲得に期待がかかる状況にある。共和薬品工業(大阪市北区)とは認知症診断支援AIシステムの開発・販売に関する事業提携契約を締結しており、将来的な業容拡大効果が見込まれる。
<農業DX>農業総研はIT導入で流通革命もたらす
農業総合研究所 <3541> [東証M]は直近884円まで駆け上がった後調整を入れているが、5日移動平均線にサヤ寄せする場面は拾い場とみられる。同社は産地直送野菜・果物の委託販売事業を手掛けている。登録生産者から農産物を集め、スーパーや小売店舗の直売コーナーで販売するビジネスモデルだが、農家自らが生産・出荷・販売を一括管理できるデータ管理システムなどITを活用することにより、集荷から店頭に並ぶまでの時間を画期的に短縮する流通革命をもたらしている。足もと業績面でも風向きは悪くない。新型コロナウイルスへの警戒感が巣ごもり消費を喚起するなか、内食需要の高まりを背景として青果販売が好調に推移している。20年8月期営業損益は従来予想の4000万円の赤字から3600万円の黒字に上方修正した。住友商事 <8053> 及び住商アグリビジネスとは農産物販売におけるトータルサービスで提携しており、今後の業容拡大への布石となる。
<不動産DX>いい生活は統合型支援システムで活躍
いい生活 <3796> [東証2]はここ急速に上値追い基調を強め一気に新高値圏に歩を進めたが、焦らず押し目買いで対処したい。仕込みのタイミングとしては5日移動平均線との上方カイ離解消場面が有効となる。同社は不動産業界に特化したクラウドソリューションを展開、不動産市場をテクノロジーと融合させて業務効率化や高付加価値化を図る。賃貸物件情報、顧客情報、契約情報などを一元的に管理し、生産性を高める統合型業務支援システムをSaaSで提供する。同業界のDXを主導する企業として株式市場でも注目度が高まっている。サービスインフラ基盤は全面的にAWSへの移行を開始しており一段のコスト最適化を推進。20年3月期は営業利益段階で前の期比9.5倍の1億2300万円と急増した。21年3月期業績予想について会社側では開示していないものの増益基調を維持する可能性が高い。22年3月期も増収増益が有望視される。
<建設DX>CTSはITシステムと測量で全国展開
シーティーエス <4345> の900円台前半は押し目買い好機、13週移動平均線を踊り場とした上昇第2波が見込まれる。仮に18年6月につけた実質上場来高値1260円を上抜けば戻り売り圧力の生じない青空圏が待つ。同社は建設ICTの専門企業であり、災害復旧・防災など国土強靱化のテーマでも重要なポジションを占める。クラウドを中心としたIoTサービスで生産性を向上させるITシステムや、導入から活用支援までトータルサポートする測量計測事業などを全国展開している。本社敷地を活用してネットワークカメラなどの映像機器やネットワーク環境を現場に似た屋外環境で検証可能とするDEフィールドラボを開設、これは国内でも初の取り組みとして注目され、今後の受注促進につなげていく構えだ。20年4-6月期営業利益は前年同期比19%増と好調な伸びを確保、21年3月期は前期比4%増の19億2000万円を見込むが一段の上振れも視野に入る。
株探ニュース
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