―いずれ来る収束後の社会、オンライン化進展で成長が期待できる業種に注目―
中国・武漢で最初に確認された 新型コロナウイルスは瞬く間に広がり、今もなお全世界が翻弄されている。感染拡大防止の移動制限措置などで物流が滞り、自動車メーカーをはじめ製造業のサプライチェーン(供給網)の寸断といった事態が発生。濃厚接触を避けるため飲食店や百貨店などは営業時間短縮や営業自粛を求められ、経済への打撃は日々深刻化している。
ただ、既に各国がワクチンや治療薬の開発に着手しているほか、政策を総動員して封じ込めに取り組んでおり、いつまでも厳しい状況が続くものではない。投資家にとっては新型コロナウイルスが収束する日が訪れることを見据え、難局を乗り越えたあとにやってくる「アフターコロナ」に備えておくことが重要となる。未曾有(みぞう)の非常事態を経験したことでアフターコロナは、ビフォーコロナと比べて価値観やライフスタイルが変化することが予想されるが、そうしたなかでも活躍が期待できそうな有望テーマを取り上げてみた。
Part1【テレワーク】
●中小企業を中心に導入余地
新型コロナウイルスの感染拡大を機に起こった社会変化としては、ICT(情報通信技術)を活用して自宅などで仕事を行う「テレワーク」の導入が進んでいることが挙げられる。NTTデータ <9613> 子会社のNTTデータ経営研究所が4月20日に発表した「緊急調査:パンデミック(新型コロナウイルス対策)と働き方」(調査期間4月7~10日、有効回答者1158人)によると、テレワーク及びリモートワークに取り組んでいる企業の割合は39.1%となり、1月時点の18.4%から2倍以上に増えた。規模別では、従業員が1000人以上の企業のうち61.7%がテレワーク/リモートワークを開始している一方、100人以上1000人未満では35.1%、100人未満では22.2%にとどまっており、中小企業を中心に今後導入する企業が一段と増える余地がある。
●社会変化でビジネス機会拡大へ
総務省の定義では、テレワークとはICTを利用して時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、ワークライフバランスの実現や人口減少時代における労働人口の確保、地域の活性化などに寄与するとして以前から注目されていた。IT関連業種など「働き方改革」を進めていた企業ではテレワークの導入・準備が進んでいたが、ここにきて新型コロナウイルスの影響から業種を問わず加速度的に進めざるを得ない状況となっている。現時点で収束が見通せず、今後もコロナ禍もしくは別のパンデミックに見舞われる可能性を考えれば、これまでの社会から“非常事態を前提とした社会”になるとの見方があり、テレワーク関連企業のビジネス機会の更なる拡大が見込まれる。
関連銘柄としては、テレワーク環境の整備に不可欠な各種ソリューションを提供するソリトンシステムズ <3040> 、ハイパー <3054> 、アセンテック <3565> 、システム情報 <3677> 、ブイキューブ <3681> 、テラスカイ <3915> 、チェンジ <3962> 、セグエグループ <3968> 、エイトレッド <3969> 、サイボウズ <4776> などが挙げられる。
●サイバーセキュリティー需要も
また、テレワークの導入が進むにつれ、 サイバーセキュリティーの需要がより一層高まることが予想される。総務省が2018年に公表した「テレワークセキュリティガイドライン(第4版)」では、テレワークはインターネットを経由した攻撃を防御する対策がなされたオフィスとは異なり、マルウェア(悪意のあるプログラムやソフトウェアの総称)などの感染、端末や記録媒体の紛失・盗難、通信内容の盗聴などの脅威にさらされやすいと指摘している。
こうしたことからセキュアヴェイル <3042> [JQG]、FFRI <3692> [東証M]、ディー・ディー・エス <3782> [東証M]、フーバーブレイン <3927> [東証M]、SBテクノロジー <4726> 、ジャパンシステム <9758> [JQ]などに商機がありそうだ。
Part2【5G】
●コロナ禍で強く認識された重要性
第5世代移動通信システム(5G)もコロナ禍を機に、その重要性が強く認識されたもののひとつだ。日本をはじめ新型コロナウイルスの影響を受けている各国では、テレワークや遠隔医療、リモート学習、警備へのドローン活用、無人配送ロボットの導入などが推奨されているが、それらをスムーズに行うためには「高速・大容量」「低遅延」「多数端末との接続」といった特徴を持つ5Gが欠かせない。また、今回のコロナショックをきっかけとした巣ごもり消費でスポットが当たった動画配信やオンラインゲームでは、ハイスペックな5Gが新たな刺激を消費者に与え、潜在的な需要を掘り起こすことも考えられる。アフターコロナを見据えると、5Gの普及が国家や産業の競争力を大きく左右するとみられ、政策面での後押しにつながる可能性がある。
●25年には契約数が26億件に
KDDI <9433> 、ソフトバンク <9434> 、NTTドコモ <9437> の大手通信キャリア3社は3月下旬から一斉に商用サービスをスタートし、米国や韓国、中国などに続いて日本でも「5G時代」が幕を開けた。現時点では5G通信が可能なエリアは一部の地域に限られ、スマートフォンでいつでもどこでも利用できるようになるのはまだ先になりそうだが、5Gへの期待が高まる産業界では医療・介護や観光、モビリティなどさまざまな分野で実証実験が進んでいる。スウェーデンの通信機器大手エリクソンは5Gの契約数が25年末までに世界で26億件に達するとの見通しを示しており、株式市場では関連銘柄への関心が依然として高い。
通信事業者向けソリューションを手掛けるネクストジェン <3842> [JQG]、通信ソフトウェア開発のサイバーコム <3852> 、通信計測器を提供するアンリツ <6754> 、光通信用部品メーカーのsantec <6777> [JQ]、5G基地局向けテスト装置を扱うアルチザネットワークス <6778> [東証2]、情報通信機器事業を展開する大井電気 <6822> [JQ]、5G対応アナログ光伝送装置などを手掛ける多摩川ホールディングス <6838> [JQ]、5Gソリューション構築を支援するPALTEK <7587> [東証2]などに熱い視線が向けられている。
●成長期待のローカル5G
5Gでは通信事業者が全国で展開する均一なサービスとは違って、地域の企業や自治体が主体となって自らの建物や敷地内といった特定のエリアでネットワークを構築する「ローカル5G」にも注目したい。ローカル5Gでは、ケーブルレス化によって製造ラインの変更が容易にできることに加え、プライベートネットワークのため他の場所で起こった通信障害や災害などの影響を受けにくいといったメリットがあり、政府が創設した5G投資促進税制の追い風もあって関連市場が活発化すると思われる。
主な動きとしては、インターネットイニシアティブ <3774> が住友商事 <8053> などとローカル5G活用を目的とした新会社を立ち上げているほか、NEC <6701> とコニカミノルタ <4902> は5G活用によるデジタルトランスフォーメーション(DX)推進パートナーとして連携を強化。ローカル5G向けソリューションなどを手掛けるJTOWER <4485> [東証M]、国内で初めてローカル5G免許を取得した富士通 <6702> 、ローカル5G向けSIMカードを提供している大日本印刷 <7912> などの活躍が期待される。
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