―コロナショックを契機にスタートした超金融相場に乗れ、次に来るのはこの株だ―
●超金融相場の号砲鳴る
2020年相場もいよいよ大詰めを迎えている。今年は新型コロナウイルスという、人類にとって“未知の敵”が現れ、しかもかなりの難敵であり、グローバル経済にかつて経験したことのないようなネガティブインパクトを与えた。株式市場でも2月下旬から3月下旬にかけて、文字通りコロナショックというべき電撃的な暴落に見舞われ、日経平均は2万3000円台半ばから1万6000円台半ばまであっという間に7000円も水準を切り下げる羽目となった。
しかし、本当に驚くべきはそこからの株価の奇跡的な切り返しであろう。3月下旬を境に米国をはじめとして世界同時進行で強烈な戻り相場が演じられた。新型コロナが猖獗(しょうけつ)を極めるなか、フリーズを余儀なくされた実体経済を横目に株式市場は誰もが予想していた2番底すら形成することもなく、ひたすら下値を切り上げ続けた。突如としてもたらされた危機が、掛け値なしの財政出動と金融緩和政策のスイッチを押したことで、結果的に過剰流動性による超金融相場の号砲を鳴らすことになった。米国株市場ではNYダウをはじめ主要株3指数が史上最高値を更新、東京市場でも日経平均はアベノミクス相場で強力な上値抵抗ゾーンとなっていた鬼門の2万4000円台を駆け抜け、一気に2万6000円台に歩を進める大立ち回りを演じた。
●ブレーキを踏まない中央銀行
問題はここからの相場展望である。今週15~16日に行われた米連邦公開市場委員会(FOMC)では量的緩和の拡充こそ見送ったものの、長期にわたり緩和政策を続ける方針を発表した。注ぎ込んでいる資金の蛇口を締めることはしないという意思表示だ。また、週末18日までの日程で行われた日銀の金融政策決定会合も想定の範囲内とはいえ、FRBの政策スタンスに“右に倣え”で大規模緩和策を維持することを決めている。出口戦略が取り沙汰される日銀のETF買いについても「年間購入額12兆円」を継続する。超金融相場の環境に現状において全く変化はない。新型コロナの収束が確認されるまでは、基本的に各国中央銀行がブレーキを踏むことは考えにくい状況だ。
これまで通り全体相場は押し目に買い向かって報われる相場といえる。師走相場ではトヨタ自動車 <7203> 、ソフトバンクグループ <9984> 、ソニー <6758> 、任天堂 <7974> 、NTT <9432> など時価総額上位の銘柄が総じて上値を追う流れとなったが、日経平均が来年に3万円大台を目指すというシナリオに準じれば、今は買わざるリスクを解消する最後のチャンスという暗黙のコンセンサスが働いていると思われる。
●有望テーマに乗る株をピンポイント選出
一方、中小型株は足もと利益確定売りで一服している銘柄も多いが、ここはおそらく仕込み好機となるだろう。流動性相場では相場全体の水かさが増すことで、タイムラグはあってもその恩恵は隅々にわたるからだ。日経平均など全体指数が足を止める場面では中小型株に出番が回りやすい。したがってアンテナを張るのは今だ。12月はマザーズ市場を中心にIPOラッシュだが、ここを通過した年明け相場もにらみ、マーケットを彩る有望テーマに乗る中小型株に照準を絞っておきたい。今回は「水素」、「5G」、「EV・電池」、「人工知能(AI)」、「半導体」の5つに絞り、それぞれのテーマで上値が期待できる株を1銘柄ずつ選出した。
【水素】長野計器は水素用センサーで活躍
長野計器 <7715> は目先調整色をみせていたが、900円近辺は絶好の買い場といえそうだ。世界屈指の圧力計・圧力センサーメーカーで、車載向けが主力だが、半導体生産ライン向け構造圧力センサーやデジタル圧力計などでも実績が高い。
燃料電池車 の普及には水素ステーション の普及が欠かせないが、同社はこの水素ステーション向けに独自の高圧技術を生かした製品を提供。「高圧水素用圧力センサー」で特許を取得しており、2017年度の関東地方発明表彰「長野県知事賞」も受賞している。菅政権では水素など脱炭素に向けた研究・開発を支援する2兆円規模の基金を創設し、最長で企業を10年間支援する計画にあるなど、水素関連の周辺技術を持つ企業にとって活躍余地が高まっている。また、トヨタの新型ミライの発売で燃料電池車に対する業界の注目度が上昇するなか、長野計器の株価にもフォローの風が吹きそうだ。
業績面では、21年3月期営業利益は従来計画を下方修正し4割強の減益見通しながら、22年3月期は半導体市場の拡大や自動車販売の回復が収益に反映され急回復に転じる公算が大きいだけに、ここは狙い目といえる。
【5G】大真空は水晶機器の次世代商品で飛躍
大真空 <6962> は今月7日に2698円の高値を形成した後、上昇一服となり売り物をこなしている。しかし、2000円台前半は強気に対処して報われそうだ。
高速通信規格5Gの商用サービスが徐々に軌道に乗るなか、KDDI <9433> と米アマゾン傘下のAWSが5Gを使ったクラウドサービスをスタートさせている。また、米アップルは5G時代をにらみ、21年1-6月期のiPhone生産計画を前年同期比3割増とするなど積極攻勢の構えをみせている。こうした環境下、水晶デバイス専業大手で技術力の高さを売り物とする同社は、スマートフォンや基地局向けで需要を大きく取り込み活躍が期待できる。今後活発化する5Gインフラ整備では、膨大な数の基地局を設置する必要に迫られるなか、水晶発振器 のニーズも強く喚起されることになる。
同社はこれまでのTCXO(温度補償水晶発振器)よりも小型で低消費電力のOCXO(恒温槽付水晶発振器)を開発しており、同商品が5G時代に成長ドライバーを担う可能性もある。業績も21年3月期営業利益は前期比3.6倍の10億円を予想、車載向けが回復する22年3月期も2ケタの利益成長が見込めよう。
【EV・電池】邦チタは固体電解質で評価必至
東邦チタニウム <5727> はここ急速に上値を指向しているが、長期波動で見れば大底圏離脱の第一歩に過ぎない。2018年2月に1888円の高値をつけてから、長きにわたる下降トレンドを余儀なくされたが、それに終止符を打つ瞬間が迫っている。
チタン製錬を中核事業とするが、高度なチタン関連技術を礎とした電子材料分野でも高シェアを誇る。業績は航空機向けチタンが不振で、21年3月期は大幅減収減益が避けられないが、22年3月期については5G関連投資需要に絡む高純度金属チタンや超微粉ニッケルなどが大きく伸び、営業利益段階で40億円強とV字回復が視野に入る。更に直近掲げている中期経営計画では、最終年度の23年3月期に売上高580億円(今期見通し352億円)、営業利益65億円(同27億円)を見込んでおり、現在の株価は大幅な見直し余地がある。
また、技術開発分野では、全固体電池や空気2次電池に応用されるリチウムランタンチタン酸化物(LLTO)という有望素材を手掛けていることもポイントだ。電気自動車(EV)向けや電力貯蓄用蓄電池として期待される次世代リチウムイオン電池の固体電解質として注目を集めている。
【AI】アドソル日進はAI分野の隠れ実力株
アドソル日進 <3837> は11月以降、押し目をしっかりと拾われ下値切り上げ型の上昇波動を構築している。独立系ソフト開発会社で大企業向けシステム開発において競争力が高く業界でも優位性がある。
官民を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が図られるなか、同社は「セキュア・ラップトップ」など自治体向けテレワークソリューションも展開している。高水準のデジタル人材を擁し、AIを活用したICTシステムの提供などにも積極的で、日本IBMや富士通 <6702> 、日立製作所 <6501> といったそうそうたる大手IT企業と一緒に産業技術総合研究所がまとめたAIの品質ガイドライン策定に参画するなど、同分野における実力は証明されている。
業績も好調だ。前期まで10期連続の営業増益を達成し、ピーク利益更新基調が続いている。新型コロナの影響もあって21年3月期については12億2000万円予想と前期比ほぼ横ばい見通しにあるものの、22年3月期以降は再び2ケタ増益路線に復帰しそうだ。株価上昇もあって配当利回りは1%前後と高くはないが、毎期増配を繰り返すなど株主還元姿勢が高い点も評価される。
【半導体】ADプラズマはプラズマ技術に脚光
アドテック プラズマ テクノロジー <6668> [東証2]は5日・25日・75日移動平均線など長短移動平均線が収れんする時価近辺は買い場とみておきたい。
半導体向けを主力とする高周波プラズマ電源装置のメーカー最大手。足もとの業績はやや伸び悩んでいるものの、5G関連投資やデータセンター増設を背景とした半導体設備需要の高まりを背景に中期成長トレンドに陰りは見られない。20年8月期は前の期比54%営業増益という回復を示した。21年8月期も前期比9%増の9億5000万円と増益を見込むが、保守的で上振れする可能性がある。WSTS(世界半導体市場統計)によると21年の半導体市場規模は前年比8.4%増の4694億ドルと過去ピークを更新する見通しにあり、これは同社にも強力な追い風となる。プラズマ技術は微細加工に不可欠であり、同社ならではの技術を活用した新商品開発にも取り組んでいる。
国内機関投資家が純投資目的で同社株を買い増す動きをみせていることも見逃せない。テクニカル面も日足一目均衡表では動意づけば雲抜けが期待できる局面にある。中長期的には4月につけた戻り高値1714円を目指す展開が期待される。
株探ニュース
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