米株式市場ではNYダウが10日に174.31ドル高、11日に0.48ドル安となった。堅調な経済指標や企業決算を好感した買いが入り、新型肺炎の感染拡大の勢いが弱まりつつあるとの報道も安心感につながった。しかし、パウエル連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言で金融緩和を示唆する発言がないと上げ幅を縮めた。日本が祝日で休場だった間に米国等の海外株が上昇した流れを引き継ぎ、本日の日経平均は55円高からスタート。新型肺炎の影響に対する根強い懸念から伸び悩む場面もあったものの、値がさ株のソフトバンクG<9984>が急伸して日経平均を押し上げ、一時23867.99円(182.01円高)まで上昇した。ただ、東証株価指数(TOPIX)は小幅に3日続落して前場を折り返している。
個別では、前述のソフトバンクGが売買代金トップで13%を超える上昇となり、日経平均を約152円押し上げた。米連邦地裁が同社傘下の米スプリントと同業TモバイルUSの合併計画を容認したと報じられている。半導体関連株も上げが目立ち、東エレク<8035>やアドバンテス<6857>、レーザーテック<6920>が3%前後の上昇。その他では村田製<6981>が堅調で、ソニー<6758>やトヨタ自<7203>は小幅に上昇した。決算発表銘柄ではアイフル<8515>などが急伸し、大幸薬品<4574>やMDV<3902>はストップ高を付けた。一方、任天堂<7974>やファーストリテ<9983>は小安い。決算発表したサンドラッグ<9989>などは売りがかさみ、ソウルドアウト<6553>などが東証1部下落率上位に顔を出した。
セクターでは、情報・通信、証券、その他金融業などが上昇率上位。半面、ゴム製品、電気・ガス業、建設業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の37%、対して値下がり銘柄は57%となっている。
祝日明けの日経平均は反発してスタートし、上げ幅を3ケタに広げ前場を折り返した。ソフトバンクGの押し上げ分を考慮すると、実態としては祝日前の水準を挟みもみ合いといったところだろう。東証1部全体としては半数以上の銘柄が値下がりし、TOPIXは小幅安となっており、日経平均の上げ幅ほど市場のムードは明るくない。新型肺炎を巡っては世界的に感染拡大ペースが鈍化しつつあるとの見方がじわりと広がっているが、横浜港で検疫中のクルーズ船では新たな感染者が確認され、国内外の企業活動にもなお影響を及ぼしている。市場の警戒感が完全に払しょくされるまでにはまだ時間を要するだろう。
パウエル米FRB議長が議会証言で追加緩和を示唆せず、市場の失望を誘った面もあるようだが、各国中央銀行の緩和的なスタンスが新型肺炎の影響下で株式相場の安定をもたらしていることは否定できない。本日は前引け時点のTOPIX下落率が0.13%のため、日銀による上場投資信託(ETF)買い入れ実施は期待できないが、当面売りが想定されない主体による買い支え効果は大きいだろう。引き続き新型肺炎を巡る報道で上下に振らされる場面は出てくるだろうが、短期的な調整にとどまる可能性が高いとみておきたい。
また、今週は2019年10-12月期決算発表の終盤となり、決算を手掛かりとした個別物色は活発となるだろう。なお、本日はソフトバンクGやSMC<6273>、ダイキン工<6367>などが決算発表を予定している。
(小林大純)
<AK>
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