24日の米株式市場でNYダウは6日ぶりに反発し、92ドル高となった。ロシアによるウクライナ侵攻を受けて投資家心理が悪化し、アジア・欧州株安を引き継いで一時859ドル安まで下げ幅を広げた。しかし、対ロ制裁が厳しいものでないと受け止められたほか、連邦準備理事会(FRB)が金融引き締めを遅らせるのではといった期待がハイテク株の買い戻しや押し目買いにつながった。ナスダック総合指数は+3.34%と急反発。日経平均も前日までの5日続落で1500円近く下落しており、本日は米株の上昇を受けて242円高と反発スタートした。値がさグロース(成長)株の上昇が日経平均を押し上げ、朝方に一時26419.89円(449.07円高)まで上昇すると、その後は堅調もみ合いの展開となった。
個別では、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、東エレク<8035>といった値がさ株や、郵船<9101>、川崎船<9107>、商船三井<9104>といった海運株の堅調ぶりが目立つ。しまむら<8227>は2月既存店売上の増収を受けた買いが優勢で、期末配当が前期比増となったエムスリー<2413>、配当方針の変更と増配を発表した日本CMK<
6958>は大きく上昇。また、フロンティアM<7038>が東証1部上昇率トップとなっているほか、これまで下げのきつかった中小型グロース株が上昇率上位に多く顔を出している。一方、任天堂<7974>が軟調で、INPEX<1605>はNY原油先物相場の伸び悩みを受けて6%の下落。また、地政学リスクの高まりとともに買われていた防衛関連の石川製<6208>や豊和工<6203>が急反落し、東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、海運業、電気機器、空運業などが上昇率上位。一方、鉱業、保険業、銀行業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の55%、対して値下がり銘柄は42%となっている。
前日はロシアのウクライナ侵攻が報じられて金融市場全体にリスク回避ムードが広がり、ロシアの株価指数RTSが一時50%超下落するなどの混乱が見られた。しかし、NYダウが829ドル安からプラス圏に浮上する動きを見せたことで、本日の東京市場は一転、買い戻し優勢の展開となっている。これまで下げのきつかったグロース株の上昇が目立ち、日経平均を押し上げる格好。ただ、日経平均の値幅の割に値上がり銘柄数は多くない印象も受ける。業種別騰落率を見ると、鉱業・金融セクターの下げが大きい。前引けの日経平均が+1.47%なのに対し、東証株価指数(TOPIX)は+0.72%。ここまでの東証1部売買代金は1兆6000億円あまりとなっており、前日から上下に振らされたことで膨らんでいる。
新興市場ではマザーズ指数が+6.18%と6日ぶりに大幅反発。中小型グロース株の反発の流れに乗って、主力IT株を中心に大きく上昇している。時価総額上位ではメルカリ<4385>が+4.31%、ビジョナル<4194>が+11.97%、フリー<4478>が+8.97%となり、売買代金トップのFRONTEO<2158>も4日ぶりに大幅反発。ただ、本日マザーズ市場に新規上場したマーキュリーRI<5025>は公開価格比+6.7%という初値にとどまった。前日上場のBeeX<4270>は株式相場全体に軟調地合いのなかで約2.3倍という初値を付けたが、本日は既存マザーズ銘柄のリバウンドに乗ろうとする動きからマーキュリーRIに関心が向きにくいのかもしれない。物色トレンドは日替わりの様相だ。
さて、米金融引き締め懸念の後退がグロース株高の要因の1つに挙げられている。前日の米市場の動向を見ると、原油先物相場(ウエスト・テキサス・インターミディエート、WTI4月物)が一時1バレル=100ドル台に乗せるも、利益確定売りが出て伸び悩み。10年物国債利回りが1.96%(-0.03pt)となるなど幅広い年限で金利は低下したが、期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)は2.55%(+0.02pt)と上昇が続いた。これらの動きは金融引き締めを織り込む動きが和らいだことを示唆するとともに、グロース株の反発につながるだろう。
もっとも、ウクライナの混乱で原油が一段高となる可能性は残るといった見方は依然としてくすぶっており、インフレ圧力の高まりから米金融引き締めは回避できないとの声も根強く聞く。実際、FRBのウォラー理事はウクライナ情勢を注視しつつも、インフレ指標の高止まりが続けば3月15~16日の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5ptの利上げを議論することに前向きな姿勢を示している。3月FOMCまで米金融引き締めペースを巡り様々な見方が交錯することになりそうだ。
またウクライナ情勢についても、ロシアが首都キエフに進軍し、本日中にも陥落する可能性があるという西側情報当局者の発言が伝わっている。従来「一部侵攻にとどまるのでは」といった市場関係者の声が多かったが、もはやロシアの狙いがゼレンスキー政権の転覆にあることは明白だ。引き続き関連ニュースに金融市場が急変動する可能性もあるとみて取り組んだ方が良いだろう。
誌面の都合で後日また述べたいが、このところの株価調整は海外短期筋による株価指数先物の売りという市況解説にもやや疑問があり、実際には買い持ち削減の動きが続いていることが背景にあるという印象を受ける。そうしたトレンドが本格的に転換するとみるのは時期尚早とも付言しておきたい。
(小林大純)
<AK>
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