週明け7日の米株式市場でNYダウは5日ぶりに反落し、148ドル安となった。新型コロナウイルス感染者数や入院患者数の急増を受けて外出規制の強化が広がっており、追加経済対策を巡る協議の先行き不透明感も加わって、景気敏感株を中心に売りが出た。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.4%の上昇となり、連日で過去最高値を更新。本日の日経平均はNYダウが下落した流れを引き継いで167円安からスタートすると、朝方には一時26327.08円(220.36円安)まで下落した。ただ、米ハイテク株高を受けてエムスリー<2413>などの値がさグロース(成長)株が買われ、日経平均は2
6500円台まで値を戻す場面もあった。
個別では、ANA<9202>やJAL<9201>といった空運株が軟調。ANAは公募増資に係る価格決定を受けて朝方プラス圏に浮上する場面もあったが、新型コロナ感染拡大への懸念が根強いようだ。ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、ソニー<
6758>は小安い。また、東製綱<5981>やMDV<3902>が東証1部下落率上位に顔を出している。一方、前述のエムスリーが6日ぶりに反発し、2%超の上昇。任天堂<7974>、東エレク<8035>、リクルートHD<6098>、SUMCO<3436>も堅調で、政府が水素利用量の目標設定を検討との報道を受けて岩谷産<8088>などは急伸している。また、タツタ線<5809>がストップ高を付け、デンソー<6902>が株式交換で完全子会社化すると発表したジェコー<7768>はストップ高水準での買い気配が続いている。
セクターでは、空運業、医薬品、石油・石炭製品などが下落率上位。半面、サービス業、建設業、鉄鋼などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の36%、対して値上がり銘柄は59%となっている。
前日のNYダウの反落を受け、本日の東京市場も売りが先行する展開となった。一方、新型コロナワクチンの実用化による先高期待は根強いようで、前場の日経平均は2
6500円台まで値を戻す場面がしばしばあった。前引けでは東証1部銘柄の6割近くが上昇し、東証株価指数(TOPIX)は0.04%の下落にとどまっている。なお、日経平均の押し下げ役はファナック<6954>、テルモ<4543>、第一三共<4568>などで、下支え役は東エレクやエムスリーだ。
このように下値こそ堅いものの、日経平均は前日終値に届かず、戻りの鈍い印象も拭えない。11日に先物・オプション12月物の特別清算指数算出(メジャーSQ)を控え、先物売買はロールオーバー(期先物への乗り換え)が中心。持ち高を傾ける動きは限られ、相場全体の一段の上昇は期待しにくいタイミングだろう。また、本日ここまでの東証1部売買代金は1兆円を下回っており、海外投資家による現物株の買いも一服した可能性がある。
また、12月の新規株式公開(IPO)に係るブックビルディングが進行しており、参加のための資金捻出や抽選結果待ちの間の資金拘束により、個人投資家のマネーフローも滞りやすい。なにせ12月後半は26社の新規上場が控えている。公募・売出しによる吸収金額が1000億円を超えるような大型IPOこそないものの、数百億円クラスの案件は複数あり、そもそもこれだけ件数が膨らむと個人投資家の資金に与える影響はそれなりに大きいだろう。本日のマザーズ指数は4日ぶりに反発しているが、前日4%を超える下落だったことを考慮すると、やはり戻りは鈍いと言わざるを得ない。
一方、水素燃料普及への期待から賑わっている岩谷産などを見ると、個人投資家の物色意欲が根強いことも窺える。上述した12月IPOのブックビルディングも全般に需要堅調といった印象。15日から始まる「IPOラッシュ」中は(株価指数に直接的な影響がない)新規上場銘柄に物色が向かいやすくなるだろうが、IPOラッシュ通過後、年末年始相場への期待が高まる。
さて、TOPIXの連続下落は2日目、かつ前引けでの下落率は小幅にとどまっており、日銀による上場投資信託(ETF)買い実施は期待しづらいだろう。アジア株式市場も全般さえない。後場の日経平均は軟調もみ合いが続くとみておきたい。年末年始相場に期待しつつも、目先は短期物色でしのぐ状況が続きそうだ。
(小林大純)
<AK>
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