週明け8日の米株式市場でNYダウは続伸し、306ドル高となった。経済活動の再開が進んでいるほか、バイデン政権が提示した1.9兆ドル規模の追加経済対策を上院が可決したことを受け、景気敏感株を中心に買いが入った。NYダウは取引時間中の過去最高値を更新。ただ、長期金利が一時1.6%台まで上昇したことからハイテク株の売りが続き、ナスダック総合指数は2.4%、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は5.4%の下落となった。本日の東京市場でもこうした流れを引き継ぎ、バリュー(割安)株に買いが入る一方、値がさグロース(成長)株の売りが出て、日経平均は5円高からスタート。寄り付き後も前日終値を挟みもみ合う展開となり、9時38分にここまでの安値28609.21円
(134.04円安)、10時09分に高値28901.27円(158.02円高)を付けた。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>が2%超上昇し、日経平均を約52円押し上げている。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といった金融株、トヨタ自<7203>などの自動車株も堅調。日本製鉄<5401>は中長期経営計画を評価した買いが続いているようで大幅続伸している。業績上方修正を発表した大紀アルミ<5702>、自社株買い発表のホギメディ<3593>などは急伸。また、安永<7271>は一部報道を受けて東証1部上昇率トップとなっている。一方、任天堂<7974>、日本電産<6594>、ファーストリテ<9983>、ソニー<6758>、東エレク<8035>といった値がさ株が軟調。大型のM&A(合併・買収)
観測が報じられたパナソニック<6752>は急落し、日立造船<7004>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、不動産業、鉄鋼、電気・ガス業などが上昇率上位。半面、鉱業、電気機器、その他製品など5業種が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の71%、対して値下がり銘柄は25%となっている。
前日のNYダウが取引時間中の過去最高値を更新し、本日の東京市場でも景気敏感株を中心に買い優勢の展開となっている。前引け時点で東証株価指数(TOPIX)は0.61%の上昇、東証1部の値上がり銘柄は全体の7割以上となっている。不動産株や陸運株、自動車株などが強いところを見ると、日本でも経済活動の再開に伴って人の移動(モビリティー)が増えるとの期待がじわり広がってきた印象だ。
半面、日経平均は前引け時点で0.20%の上昇の上昇にとどまり、一時マイナスとなるなど上値が重い。米国でハイテク株の売りが続き、日本でも日経平均への影響が大きい値がさ株が軟調とあってやむを得ないだろう。コロナ禍終息後は店舗での飲食、旅行・レジャー等の「リアル志向のリベンジ消費」が強まるとの見方をこのところ多く耳にする。IT利活用の流れは長期的に変わらないとされつつも、コロナ禍終息後の世界の姿がはっきり見えるまでは「値上がりしてきたハイテク株はいったん売り」というスタンスの投資家が多いようだ。
また、キャサリン・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントに代表されるテック系ファンドからの資金流出も需給面の懸念材料だろう。筆者は投資期間・資金面の制約がない個人投資家は「成長株の長期投資」が有効と考えている(それに多くの人と同じ投資アイディアに乗っても利幅は薄いというのが定石)が、現在はやはりハイテク株の買いには慎重なスタンスだ。
さて、とはいえ日経平均ばかりでなくTOPIXもプラス圏でもみ合う展開となっており、上値追いムードは乏しい。来週にかけて日米欧の中央銀行が金融政策決定会合を開くことが注目されているが、9日に3年物、10日に10年物、11日に30年物と米国債の入札が相次ぐことにも注意が必要だろう。米長期金利は1.6%前後でひとまず伸び悩む動きも見られるが、入札で債券需給のゆるみが意識されれば再び上に走る可能性もある。半面、米国債の空売りが増えているとの見方もあり、入札や決定会合通過後の債券・金利動向は読みにくい。
香港株が足元強含みのため、後場の日経平均は上値を試す場面もありそうだが、こうしたイベントを前に徐々に様子見ムードが強まるだろう。
(小林大純)
<NH>
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