週明け21日の米株式市場でNYダウは反発し、37ドル高となった。英国で拡大している新型コロナウイルス変異種の感染性が高いことが明らかになり、400ドル超下落する場面もあった。ただ、ファイザーに続きモデルナのワクチン接種が開始されたこと、議会が追加経済対策で合意に至ったことを好感した買いに支えられ、引けにかけて上昇に転じた。一方、日本国内でも新型コロナ新規感染者数が高水準で推移しているうえ、変異種への警戒感も根強く、本日の日経平均は155円安からスタート。朝方には26454.47円(259.95円安)まで下落する場面があったが、売りが一巡するとやや下げ渋り、26600円近辺でもみ合う展開となった。
個別では、ソニー<6758>が2%超、富士フイルム<4901>が4%超の下落。富士フイルムは「アビガン」の新型コロナ治療薬としての承認が見送られ、売り材料視されているようだ。ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、トヨタ自<7203>もさえない。西松屋チェ<7545>は好決算ながら材料出尽くし感から朝高後に反落。また、三谷産業<8285>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、SUMCO<3436>が2%の上昇となっており、ファーストリテ<9983>もしっかり。中東ドバイで世界最大級のごみ焼却発電を受注したと伝わった日立造<7004>は4%超の上昇。川崎重<7012>は構造改革への期待から買われているようだ。また、サイバリンクス<3683>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、全33業種がマイナスとなり、鉱業、空運業、倉庫・運輸関連業、海運業、不動産業などが下落率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の86%、対して値上がり銘柄は11%となっている。
国内外での新型コロナ感染拡大への懸念や変異種への警戒感などから、本日の日経平均は軟調に推移している。とはいえ、朝方に一時26500円を割り込んでからはすかさず切り返してきて、基調としては26000円台でのもち合い継続といったところ。日足チャートを見ると、26500円近辺に位置する25日移動平均線が下値のサポートとして意識されているようだ。また、前日は11月18日以来およそ1カ月ぶりに日銀が通常の上場投資信託(ETF)買い入れを実施した。金額は前回と同じ701億円。本日も東証株価指数
(TOPIX)が0.88%の下落で前場を折り返しているため、連日でETF買いが実施される公算が大きい。なかなか売り持ちには傾きづらいところだろう。
新型コロナの変異種に関しては、現在のところワクチンが効かないなどといった事例が報告されていないため、海外トレーダーも下値リスクを過度に警戒しているわけではないようだ。しかし、その感染力や毒性、ワクチンの有効性などについてまだわからないことが多く、様子見ムードも窺える。また、米国では来年1月5日に行われるジョージア州の上院決選投票の行方が注目されている。民主党が2議席とも確保すれば上院でも主導権を握ることになるため、今後の政権運営に与える影響は大きいだろう。
いきおい、年末を前に取引参加者が減りやすい株式市場では、売買が一段と低調となりつつある。前日の東証1部売買代金は2兆153億円とぎりぎりの2兆円台乗せ。本日の前場は8939億円にとどまっており、1日を通じても2兆円に届かない可能性が高い。
市場のエネルギー低下で日経平均の27000円台回復が目先遠のいたと判断されたのか、本日は「環境」などの物色テーマに乗る銘柄を除くと、直近株価が上昇していた銘柄に利益確定の売りが出ている印象だ。また、年末を前に損出しの売りも出やすいと考えられる。
日銀のETF買いや根強い先高観に支えられつつも、目先の日経平均は節目の27000円を前に伸び悩む展開が続くとみておきたい。
こうした相場全体のムードも影響し、積極的な取引参加者の関心はなおIPO(新規株式公開)銘柄に向いている。本日は3社がマザーズ市場に新規上場し、資産運用支援のウェルスナビ<7342>が公開価格比+50%、ノーコード(プログラミング不要)アプリ開発ツールのヤプリ<4168>が+66%という初値を付けた。ともに公募・売出しによる吸収金額が100億円を超える大型のマザーズIPOだが、テック系ファンドや個人投資家の旺盛な需要を背景に堅調な滑り出しとなった点は17日上場のプレイド<4165>と同様だ。
明日以降は目玉案件がやや乏しくなるものの、IPOラッシュは継続。新興市場は引き続きIPO銘柄を中心に賑わうことになりそうだ。
(小林大純)
<AK>
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