週明け16日の米株式市場でNYダウは470ドル高と続伸し、2月以来となる過去最高値を付けた。バイオ製薬のモデルナが開発している新型コロナウイルスワクチンが良好な試験データを示したことなどから、実用化への期待が一段と高まった。大統領選での勝利が確実視されるバイデン前副大統領が「議会は速やかに経済対策を成立させる必要がある」などと主張したことも株高を後押しした。本日の日経平均はこうした流れを引き継いで136円高からスタート。取引時間中としてはおよそ29年ぶりに26000円台を回復し、朝方には一時26057.30円(150.37円高)まで上昇した。ただ、その後は利益確定売りも出て伸び悩み、前場中ごろを過ぎるとマイナスへ転じる場面があった。
個別では、東エレク<8035>、三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といったメガバンク株が堅調。ファーストリテ<9983>は取引時間中の上場来高値を更新したが、前引けにかけてマイナス転換する場面もあった。新型コロナワクチンへの期待が高まったことでJAL<9201>やJR東<9020>は大きく上昇。中小型株では再生可能エネルギー発電のレノバ<9519>が賑わっている。10月度売上高が好感されたイオンファン<4343>は急伸し、自社株買い実施を発表したエンプラス<6961>が東証1部上昇率トップ。一方、リクルートHD<6098>は今期減益見通しを発表し、売りに押されている。ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>、ソニー<6758>、トヨタ自<7203>もさえない。中小型株ではチェンジ<3962>が急反落し、スカラ<4845>はストップ安水準で前場を折り返した。
セクターでは、空運業、保険業、鉱業などが上昇率上位。半面、精密機器、情報・通信業、サービス業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の27%、対して値下がり銘柄は70%となっている。
前日の米株式市場ではNYダウやS&P500指数が過去最高値を更新し、本日の日経平均も寄り付きでおよそ29年ぶりに26000円台を回復した。ただ、その後は伸び悩み、前場中ごろを過ぎると前日終値近辺でもみ合う展開となっている。
節目の26000円を回復して短期的な達成感が意識されやすいことに加え、11月に入ってから前日までに値幅にして3000円近い大幅上昇を見せていたため(10月30日終値22977.13円、11月16日終値25906.93円)、スピード調整はやむを得ないところだろう。東証1部全体としてはおよそ7割の銘柄が値下がりし、東証株価指数(TOPIX)は0.26%の下落で前場の取引を終えた。ファーストリテや東エレク、ファナック<6954>といった一部の値がさ株が日経平均の押し上げに寄与していることが窺える。そのファーストリテも連日の上場来高値更新で買い疲れ感が見えてきた。
最近の売買動向を見ると、東京証券取引所が発表した11月第1週(2~6日)の投資部門別売買状況で外国人投資家は現物株を3493億円、TOPIX先物を2700億円、日経平均先物を3200億円それぞれ買い越していた。その後の期間の先物手口を見ても、BofA証券など主だった外資系証券のTOPIX先物の買い越しが継続。海外実需筋による株価指数先物の買い戻しはある程度進んだ可能性があるだろう。
また、個人投資家はと言えば日経レバETF<1570>の買いに弾みが付いていないうえ、日経ダブルイン<1357>の純資産総額も売り一巡後は3000億円をやや下回る水準で推移している。高値警戒感がくすぶり、一段の上値追い機運が高まっていないことが窺える。
先週13日の当欄で目先の日経平均の推移について「25000~26000円レンジでのもち合い」を予想した。ひとまず26000円を上限としたのは、もちろん節目意識が働くだろうということもあるが、株価純資産倍率(PBR)が1.2倍に迫ってきたというのがもう1つの理由に挙げられる。2019年末とおおむね同水準だ。ワクチンの実用化で新型コロナを克服する可能性が高まってきたと言っても、バリュエーションを見ると現在の日経平均の水準は景気回復期待をある程度織り込んでいるとも考えられる。
とはいえ、本日の日経平均の値動きは大台回復後も底堅いと言っていい。日銀による上場投資信託(ETF)買い入れに加え、米株の変動性指数(VIX)が節目の20近くまで低下してきたことによるリスク資産の買い需要、さらにNTT<9432>によるNTTドコモ<9437>株の公開買付け(TOB)で発生する買い需要と、需給面での株価押し上げ要因が多数挙げられており、「年末ラリー」への期待は根強くある。上げ一服と言えど、調整らしい調整に至るとまでは考えづらい。
これらを踏まえ、日経平均は目先、前述したような高値もち合いで推移するとの見方を維持したい。
(小林大純)
<AK>
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