3日の米株式市場でNYダウは3日ぶりに大幅反落し、807ドル安となった。下げ幅は一時1000ドルを超えた。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は5.0%の下落。これまで相場をけん引してきた主要ハイテク株を中心に、高値警戒感から売りが広がった。前日に終値ベースでコロナショック前水準(2月21日の23386.74円)を回復していた日経平均も、本日は米市場の流れを引き継いで利益確定売りが先行し335円安からスタート。朝方には23098.77(366.76円安)まで下落する場面もあったが、一段と売り込む動きは限られ、23200円を挟み軟調もみ合いが続いた。
個別では、米ハイテク株安の流れからソフトバンクG<9984>や東エレク<8035>が2%超下落し、エムスリー<2413>が4%近い下落。任天堂<7974>やソニー<6758>も軟調で、ファーストリテ<9983>は小安い。また、GMOPG<3769>は一部証券会社の投資判断引き下げを受けて売りがかさみ、enish<3667>などとともに東証1部下落率上位に顔を出している。一方、米ゼネラル・モーターズとの提携を発表したホンダ<7267>が2%超上昇しているほか、トヨタ自<7203>などの自動車株が逆行高。前日に続き菅義偉官房長官の発言を受けた地銀株物色が活発で、SBI<8473>も3%上昇している。三菱UFJ<8306>や三井住友<8316>といったメガバンク株は小じっかり。また、業績上方修正を発表したラクーンHD<3031>はストップ高を付けている。
セクターでは、精密機器、情報・通信業、サービス業が下落率上位。半面、鉄鋼、輸送用機器、空運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の65%、対して値上がり銘柄は30%となっている。
前日の米国株と同様、本日の日経平均も高値警戒感から利益確定売りが先行する格好で、ギャップダウンスタートとなった。ただ、NYダウが2.78%の下落だったのに対し、前引け時点の日経平均は0.96%、東証株価指数(TOPIX)も0.73%の下落にとどまっている。日経平均の日足チャートを見ると、前引けには23200円台半ばに位置する5日移動平均線水準まで値を戻してきた。下値切り上げのチャート形状は崩れておらず、上放れ期待を残しそうだ。
売買代金上位ではやはり値がさグロース(成長)株を中心に売りが出ているが、自動車やメガバンクといった大型バリュー(割安)株がしっかりで、全体的に前日までの動きのリバーサル(株価の反転)的な様相。地銀株の賑わいは「バイデントレード」ならぬ「菅トレード」といったところか。ほかにラクーンHDのような中小型の材料株に個人投資家の物色が集中している感はあるが、物色意欲の根強さも窺わせる。ここまでの東証1部売買代金は9000億円あまりでやや低調。
新興市場ではマザーズ指数が続落。さすがに主力IT株の売りに押され、直近IPO(新規株式公開)銘柄も急反落しているものが散見される。ただ、ビープラッツ<4381>がリリースを手掛かりに連日のストップ高を付けるなど、やはり小型材料株物色の動きは見られる。週末とあって、短期的な値幅取りを狙った物色にとどまるのはやむを得ないところだろう。
さて、このところVIX(米株の変動性指数)など市場の警戒感を示す指標がじわり上昇していた。VIXは3日、NYダウ急落を受けて33.60(+7.03)に急上昇。リスク回避目的で持ち高を落とす動きが続く可能性はある。また、2日には米ネット証券のロビンフッド・ファイナンシャルが注文処理の情報開示を巡り米証券取引委員会(SEC)の調査を受けていることが伝わった。ロビンフッドは米個人のハイテク株投資をけん引していたとみられるだけに、今後の動向を警戒する向きも多い。さらに、米期待インフレ率の急低下とともに米実質金利が上昇したこともハイテク株の売りを誘ったと考えられそうだ。
ただ、明確な売り材料があったわけでなく、3連休を前に売りが売りを呼んだものと比較的冷静に受け止められていることが、日経平均の底堅さにつながっているのだろう。そもそも米国株に比べ日本株は出遅れており、買い持ち高を減らす動きは限られる。もちろん11月の米大統領選を巡る不透明感などから積極的に上値は追いにくいところだが、緩和的な金融環境は変わらず、資産価格を押し上げるだろう。国内政局を巡っても、自民党総裁選が菅氏優勢で進んでいることを好感する向きが多いもよう。1日の当欄で述べたとおり、日経平均は目先、23000円近辺が収まりのいいところとして意識されそうだ。
今晩の米国では8月雇用統計の発表が予定されており、その内容を見極めたいところ。その後米国は3連休に入るため、模様眺めムードも広がりやすいだろう。
(小林大純)
<AK>
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