―全固体電池、急速充電器などEV周辺に投資のチャンス、注がれるマーケットの視線―
新型コロナウイルス感染拡大の影響で景気の先行き不透明感が強まり、東京市場は株価の大幅な調整が続いていたが、ここにきて大きく切り返しに転じている。ここは成長シナリオをしっかり描ける銘柄で乗り切りたい。
そのなか、電気自動車(EV)は地球環境保護の観点から、普遍的なテーマ性でマーケットの注目度が高い。厳しい環境規制をクリアするために、世界的にEVへのシフトが進むなか、国内では、86の自治体が二酸化炭素の排出量を2050年時点で実質ゼロとする方針を表明している。環境規制もさることながら、地球温暖化による気候変動への危機感が、各自治体の行動を後押しした。
排気ガスを一切出さないEVは環境対策だけでなく、昨秋に日本列島を襲った豪雨や水害時に、EVに搭載された蓄電池がエネルギー源として活躍したことから災害時の生活防衛対策としても脚光を浴びた。既に、EVを避難所や病院で活用する試みが全国の自治体で始まっており、EV販売促進の背景となっている。全体相場が波乱局面にあるからこそ、ここは中長期的視野に立って、高い成長が見込まれるEVを投資テーマとして再認識する必要がある。
●EVで成長ロード走る中国市場
世界的にEVへのシフトが強まっているが、なかでも中国は車の電動化に最も積極的な国として注目を集めている。産業振興の目的で国家戦略としてこれまで手厚い補助金が支給されるなど、世界最大のEV市場として成長している。新型コロナウイルスによる肺炎との闘いが続く中国だが、ようやく日常生活も正常モードに戻りつつある。とはいえ、依然として感染への警戒が継続するなか、公共交通機関を避けマイカーによる通勤、通学へのニーズもあり、これもEVなどの購入意欲を後押ししそうだ。
03年に流行したSARS(サーズ)をきっかけに、中国で宅配サービスが急成長を遂げたが、今回の感染症ではEVへのシフトが再加速し、更に自動運転モビリティーサービスの実現が早まるとの見方がある。国家発展改革委員会など中国の11の政府機関が2月24日に共同で発表した「スマートカーイノベーション発展戦略」には、25年までにEVを中心としたスマートカーが中国の新車販売に占める目標25%のもと、条件付き自動運転車の量産化を国家レベルで戦略的に全面支援するなどの内容が盛り込まれた。これを受け、中国株式市場で関連株が相次ぎストップ高に買われるなど活況を呈した経緯がある。
●普及のカギ握る「基幹部品」の燃料電池が物色される
EVが普及する際には、充電時間や航続距離以外にガソリン車などと比較した価格競争力も求められる。そこで販売コストの半分以上を占める基幹パーツ、蓄電池の低価格化が重要となる。
これまでスマホやハイブリッド車(HV)では、リチウムイオン電池の正極材にはコバルト・ニッケル・リチウムといったレアメタルを使うため、長期的に見ればレアメタル需給の逼迫が顕在化するリスクがあった。これに代替する次世代電池として注目されているのが「全固体電池 」や「全樹脂電池」だ。
全固体電池 はリチウム電池の電解液の部分を固体材料に変え、すべての部材を固体で構成した2次電池のこと。小型化しやすいことに加えて電気の貯蔵能力も高く、EVの航続距離延長や長寿命化及び充電時間の短縮など「EVを一変させる」ものとして期待されている。トヨタ自動車 <7203> が明言した20年代の早い時期での実用化実現という時間軸のなか、各社が開発にしのぎを削っている。全固体電池の本命銘柄としてTDK <6762> が挙げられるほか、三櫻工業 <6584> なども存在感を示している。同社は東京工業大学と共同開発中の新型発電素子や出資先の米ソリッドパワーと共同で全固体電池の研究開発を進めており、20年3月期営業利益は前期比2.6倍の53億円を見込むなど業績も好調だ。また、全固体リチウムポリマー電池用電解質膜の高性能化に成功した日本触媒 <4114> などにもマーケットの関心が高い。
全樹脂電池の分野では、三洋化成工業 <4471> がマークを怠れない銘柄だ。同電池の開発を行う同社子会社のAPBが4日、JFEケミカル(東京都台東区)や大林組 <1802> など計7社を引受先とする第三者割当増資で、総額約80億円の資金調達を実施すると発表。全樹脂電池の量産工場を設立し、量産技術の確立や製造販売の開始に向けて投資を行う。量産や市場展開が必要となる各分野で、豊富な経験を持つ新たなパートナーの支援を得ることで成長を加速させるという。全樹脂電池は構造上、工程が簡素で、無駄な部材が不要なために低コスト化しやすく、同社は次世代電池の開発競争で先行する全固体電池を追い、10年後には数千億円規模の事業に育てる構えだ。
●超小型EVが先行
ファミリーカーとしてのEVはまだ課題が多いが、米テスラのように富裕層をターゲットに高性能の高級EVを提供することで市場を牽引し、いち早く投資資金の回収に成功した企業もある。同社は更に、主力の「モデル3」を量産化し価格を500万円程度に抑えたことで、同等のガソリン車に対して価格競争力をつけた。日本勢ではトヨタは今年、中国で高級車ブランド「レクサス」を含めた量産化EVを本格導入する一方、日本国内においては超小型EVと呼ばれる低価格で軽自動車よりも小さいEVを年内にも発売し、それを活用した新たなビジネスモデルを構築する。1回の充電で約100キロメートル走行し、最高速度は時速60キロメートルという。乗車定員は2人で、運転初心者及び高齢ドライバーの近距離移動に加え社用車のニーズまで取り込むという。ほかには3輪EVの「i-ROAD」や車椅子連結タイプ、立ち乗りタイプの小型モビリティーの開発も進めている。
●充電システムで飛躍
EVの普及に伴い、当然ながら充電器の需要も拡大することになる。既に東京都は急速充電器の設備購入費や設置工事費を補助するなど、政策的にもフォローする動きが強い。安川電機 <6506> 、HIOKI <6866> 、モリテック スチール <5986> 、双信電機 <6938> 、ジーエス・ユアサ コーポレーション <6674> 、岡谷電機産業 <6926> 、シンフォニア テクノロジー <6507> などの関連銘柄は要チェックとなる。また、EVの非接触充電を可能とするワイヤレス充電システムを開発し新市場を開拓したダイヘン <6622> も見直し買いの対象となろう。
更に、EVはモーターをエンジンの代わりに駆動させるため、そのサプライヤーとしての明電舎 <6508> や、ホンダ <7267> 向けモーターコア回転子を独占する黒田精工 <7726> [東証2]なども今後関連有力株として浮上しそうだ。
株探ニュース
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