22日の米株式市場でダウ平均は140.05ドル安(-0.41%)と続落。上昇スタートも、バイデン大統領とマッカーシー下院議長の債務上限交渉を控えた様子見ムードが漂うなか、連銀総裁が利上げ継続の必要性を主張するとダウ平均は下落に転換した。
一方、ハイテク株は終日堅調に推移し、ナスダック総合指数は+0.49%と反発。他方、会談後にマッカーシー下院議長が「話し合いは建設的だった」と発言したことや為替の円安が追い風となり、日経平均は158.9円高とバブル崩壊後の高値を更新してはじまった。時間外取引のナスダック100先物も強含むなか、序盤は買い優勢で一時31352.53円(265.71円高)まで上げ幅を拡大した。一方、連騰劇の反動安への警戒も根強く、その後はもみ合いが続いた。
個別では、三菱商事<8058>、三井物産<8031>の大手商社が買われ、年初来高値を更新。川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、石油資源開発<1662>、三菱マテリアル<
5711>の資源関連、三菱重<7011>、川崎重<7012>の防衛関連のほか、ルネサス<6723>、三井ハイテック<6966>、ローム<6963>のハイテクの一角、ファーストリテ<9983>、信越化<4063>の値がさ株も高い。為替の円安を受けてトヨタ自<7203>、日産自<7201>、SUBARU<7270>も上昇。
証券会社のレーティング格上げや目標株価引き上げが確認されたリクルートHD<6098>が大きく上昇し、レーティング格上げの日本製紙<3863>、目標株価引き上げのデジタルアーツ<2326>も大幅高。新たな資本政策を発表した日新<9066>、2ケタ増益見通しや前期期末配当の増額が好感されたレオン自動機<6272>なども急伸した。東証スタンダード市場では中期経営計画を発表した芝浦電子<6957>や株主優待制度を再開したフジ日本精糖<2114>が大幅高。
一方、東エレク<8035>、ディスコ<6146>、ソニーG<6758>、ソシオネクスト<6526>、ダイキン<6367>、ファナック<6954>など半導体を中心としたハイテクが冴えない。
公募増資などを発表したスミダ<6817>は急落し、値下がり率トップ。ほか、IIJ<3774>、エムアップ<3661>、Hamee<3134>、東邦チタニウム<5727>などが下落率上位に顔を出している。
セクターではパルプ・紙、証券・商品先物取引、サービスが上昇率上位に並んだ一方、陸運、空運、その他製品が下落率上位に並んだ。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の49%、対して値下がり銘柄は47%となっている。
日経平均は9日続伸と驚異的な躍進劇が続いている。この間の上昇幅は優に2000円を超えている。先週末に日経平均がバブル崩壊後の高値を更新したことでさすがに一服感が出てくると思われたが、この予想は今のところ外れている。
先週末は米連邦政府の債務上限問題の交渉が「一時停止」と伝わり、一時広がっていた楽観論が萎んだ。為替も前日の東京時間には先週後半に付けた高値からは1円程も円高・ドル安になっていたため目先の一服感をより正当化する材料になると考えていた。
しかし、前日の東京市場は朝方にやや売りが先行した後はすぐに下げ渋り、午後は大きく切り返してプラス転換、日経平均は31000円を超えた。さらに、主要株価指数がまちまちだった米株式市場を横目に23日の夜間取引の日経225先物はさらに上値を伸ばし、本日の日経平均も250円超と上昇。強すぎて驚きを隠せない。
主な背景として挙げられているのは海外投資家の日本株買いだ。今週に入ってからは、商品投資顧問(CTA)などトレンドフォロー型ファンドの短期筋だけでなく、ロングオンリー(買い持ちのみ)と呼ばれる長期目線の投資家による現物買いも入っているとの指摘が聞かれる。決算シーズンを通過した後も東証プライム市場の売買代金で3兆円超えが続いているあたり、こうした指摘も間違いではないだろう。
ただ、前日の東証プライム市場の売買代金は3兆円をかろうじて上回った水準で、徐々に減少してきている。また、前日の先物手口をみると、日経225先物の買い方筆頭はJPモルガンだったが、上位には引き続きCTAとの連動性が高いドイツ証券が入ったほか、日本株調査部門をもたずシステマティックな売買のみとみられるバークレイズ証券がこれに続いた。TOPIX先物でも買い方筆頭はバークレイズであり、差し引き1000枚を超す買い越しも見られなかった。国内証券にいたっては、これまでの上昇相場において買い方上位に入った日はほとんどなく、むしろ売り方上位に入ることが多い。国内の機関投資家はQUICKの月次調査からも窺えるように、海外勢の旺盛な買い越しに対して利益確定売りで対応しているようだ。ここから先週後半と同様、筆者には前日も短期筋主体の上昇相場だったようにみえる。
実体経済に目を向ければ、年初に期待されていた中国経済の回復スピードは早くも失速し、期待はずれに終わっている。加えて、米国では銀行をはじめとした企業の経営破綻など急速な利上げ影響が表れはじめている。その米国ではインフレがピークアウトしたとはいえ、早期の利下げ転換によってインフレをぶり返してしまった1970年代の過ちを指摘し、利上げ継続を主張するFRB高官がまだいる。
さらに、米国ではコロナ後の高止まりするオフィス空室率と超低金利時代のローン借り換えが懸念される商業用不動産業の行方、そして急速な銀行の貸し出し態度悪化を通じた信用収縮の影響が今後表れることも予想されている。こうしたマクロ環境の悪化が予想されるなかで、果たして長期目線の実需筋がどれだけ買いを入れてくるのだろうか。
3月末、東証はPBRが低迷する企業に対して改善策を開示・実行するよう要請した。
そして、先週までの1-3月期決算において新たな資本政策の発表などで応える企業が増えたことも事実。こうした変化の兆しを捉えて、長期目線の投資家が打診買いを入れるのは理解できる。ただ、マクロ環境の追い風がなく、むしろ今後さらなる逆風が予想されるなか、日本固有の要因だけで現物買いがいつまでも続くとは想定しづらい。
日本だけに歴史的な上昇相場が訪れていることは確かだが、乗り遅れを恐れて今の波に急いで乗じるような行為だけはすべきでないだろう。日経平均など指数の上昇が一服すれば、東証プライム銘柄の大型株の上昇も小休止すると予想される。こうした中、好業績にもかかわらず地合いの関係でこれまで蚊帳の外とされてきた中小型株などに目線を向けるべきと考える。
(仲村幸浩)
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