11日の米株式市場でNYダウは小幅ながら7日ぶりに反落し、14ドル安となった。中国がインフラ投資を目的とした地方政府による債券発行を促す投資奨励策を発表し、アジア・欧州株高につれて買いが先行。しかし、ここまでの株高から利益確定の売りが出て伸び悩んだ。トランプ大統領が6月下旬に開催される20カ国・地域(G20)首脳会議の際に米中首脳会談がなければ中国からの輸入品に追加関税を課すと発言しており、米中対立への懸念も相場の重しとなった。本日の東京市場もこうした流れを引き継ぎ、利益確定売りが先行して日経平均は73円安からスタート。朝方発表された4月機械受注の改善を受けプラスに転じ、21259.70円(55.42円高)まで上昇する場面もあったが、買いは続かなかった。東証1部の値上がり銘柄は全体の4割強、対して値下がり銘柄は5割強となっている。
個別では、ファーストリテ<9983>が2%超高となり、1銘柄で日経平均を約53円押し上げた。その他売買代金上位ではトヨタ自<7203>、ZOZO<3092>、村田製<6981>などがしっかり。機械受注の改善でファナック<6954>なども買われた。一部証券会社のレーティング引き上げが観測されたNTTデータ<9613>は4%高。また、決算発表のシーイーシー<9692>
や丹青社<9743>が急伸し、東証1部上昇率上位に顔を出した。一方、売買代金トップの任天堂<7974>は3%近い下落。ゲーム見本市「E3」が開幕したが、目立った材料に乏しいとの見方から同社を含めゲーム関連株が売られている。ソフトバンクG<9984>は2%安。米主要州が同社傘下のスプリントと同業TモバイルUSの合併阻止へ裁判所に提訴したと伝わっている。前日買われた東エレク<8035>は反落し2%超安。ソニー<6758>は小安い。セクターでは、パルプ・紙、精密機器、小売業などが上昇率上位。反面、その他製品、証券、銀行業などが下落率上位だった。
週末に先物・オプション特別清算指数(SQ)算出を控えた水曜日とあって荒い値動きを警戒する向きもあったが、ここまでの日経平均の推移を見ると朝安後に急ピッチで下げ幅を縮めた以外、特段大きな動きは見られない。4月機械受注の改善が好感される場面もあったが、5月から本格化した米中摩擦の激化を織り込んでおらず、先行きを見極めたいところだろう。前述のとおり、トランプ氏はG20首脳会議の際に米中首脳会談がなければ中国からの輸入品に追加関税を課すと発言しているが、これまでのところ両国から会談実施について言及はなく、先行き不透明感が強い。日経平均は連日の陽線で底堅さを見せているが、売りにも買いにも傾きづらい状況がこの底堅さにつながっているとみられる。
しかし、11日に示された経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の素案で10月の消費増税が明記され、増税実施の公算が大きくなったことを海外メディアも報じ始めている。やはり経済への打撃を危ぶむ声が多く、長期スタンスの海外投資家が日本株の買いを一段と手控える可能性がある。日経平均の今後の戻り余地は慎重に見極める必要があるだろう。
(小林大純)
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