1月31日の米株式市場でダウ平均は368.95ドル高(+1.09%)と反発。10−12月期雇用コスト指数が予想以上に鈍化したため、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ長期化懸念が後退し、買い戻しが先行。良好な企業決算や長期金利の低下に伴うハイテクの買い戻しも相場を一段と押し上げた。ナスダック総合指数は+1.67%と大幅反発。
米株高を引き継いで日経平均は156.3円高からスタート。ハイテク株を中心に買いが先行する中、寄り付き直後に27547.67円(220.56円高)まで上昇。ただ、日本時間で明朝4時頃に結果公表を控える米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に積極的に買い上がる向きは少なく、また、27500円台では戻り待ちの売りも根強く、その後は徐々に上げ幅を縮める動きが続いた。
個別では、米半導体大手AMDの1−3月期見通しが市場予想を上回ったことなどを背景に東エレク<8035>、ディスコ<6146>、ルネサス<6723>などが上昇。アドバンテスト<6857>とスクリン<7735>は前日発表の決算が想定内だったことに伴うあく抜け感も相まって大幅高。前日後場に経常利益を下方修正も増配を発表し買い優勢となった商船三井<
9104>は本日も大幅続伸。郵船<9101>、川崎汽船<9107>も大きく続伸。メルカリ<4385>、リクルートHD<6098>、マネーフォワード<3994>、Sansan<4443>などグロース株も高い。
業績及び配当予想を上方修正した丸文<7537>、ファイズHD<9325>、第1四半期高進捗となったFPG<7148>、大幅増益決算が好感されたエンプラス<6961>、Genky DrugStores<9267>、業績下方修正も追加自社株買いを発表したワコム<6727>などがそれぞれ急伸。ほか、アルプス<6770>、TDK<6762>、新光電工<6967>なども決算が買いにつながっている。
一方、受注高計画の下方修正が嫌気されたレーザーテック<6920>が急落。業績予想を下方修正したエプソン<6724>、TOTO<5332>、マキタ<6586>、営業利益を上方修正も経常利益を下方修正した新日本科学<2395>などが大きく下落。業績下方修正に加えて減配を発表した西松建設<1820>、10−12月期の2ケタ減益が失望されたSREHD<2980>は急落。旭有機材<4216>、山洋電気<6516>は堅調決算も出尽くし感が先行。ほか、決算を発表したところでは、JR東<9020>、JR西<9021>の陸運、九州電力<9508>、中国電力<9504>、関西電力<9503>、四国電力<9507>の電力大手が売られている。
セクターでは海運、サービス、鉄鋼が上昇率上位となった一方、ガラス・土石、陸運、精密機器が下落率上位となった。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の53%、対して値下がり銘柄は42%となっている。
FRBが重要視している米10−12月期雇用コスト指数は前四半期比+1.0%と7−9月期
(+1.2%)から減速し、市場予想(+1.1%)も下回った。これを受けて、FRBの利上げ長期化観測が後退する形で、前日の米国市場では金利低下と株式買いの反応が強まった。しかし、雇用コスト指数は前年同期比では+5.1%と依然として高い水準にあり、利上げ長期化への可能性はまだ十分に残されている。
日本時間で明朝4時頃に結果公表を控えるFOMCでは、予想通り0.25ポイントへの利上げ幅縮小が決定されるだろう。一方、年始からの金利低下と株高が創出する金融緩和的な状況がインフレを再燃させるリスクに対応するため、FOMC後のパウエル議長の会見は総じてタカ派な内容になると予想される。
ただ、これまでFRB高官が度々ターミナルレート(政策金利の最終到達点)の5%超えや年内利下げの可能性はないとするタカ派な発言をしても、市場が想定するターミナルレートは依然として5%未満のままであるし、年内に約2回とする利下予想にも変化がない。
つまり、明日のパウエル議長の会見が少々タカ派である程度では、市場とFRBとの間に存在する乖離が解消されることはないだろう。また、先週末から今回のパウエル議長の会見が市場の期待を諫めるようなタカ派なものになるであろうことを警告した解説記事が多く見られている。このため、議長の会見内容がタカ派になることも大方織り込み済みであろう。パウエル議長がこれまでにない程の強気なタカ派な姿勢を見せるか、もしくは、FOMCで予想外の0.5ポイントの利上げでもない限りは、明日のFOMCイベントは波乱なしが予想される。
しかし、週末に米雇用統計や米供給管理協会(ISM)の非製造業(サービス業)景気指数を控えている中、FOMC後の短期的なあく抜けを狙って、あえて本日の段階からリスクを取りにいく必要もないだろう。決算シーズンに入っていることもあり、狙っている銘柄の決算内容をしっかりと精査してからのエントリーでも十分と考え、焦らずに構えたい。
(仲村幸浩)
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