前日の米国株式相場は続伸。ダウ平均は454.84ドル高の29100.50ドル、ナスダックは116.78ポイント高の12056.44ポイントで取引を終了した。7月耐久財受注改定値や7月製造業受注が予想を上回り上昇して寄り付いた。さらに、FRBが公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)でペースは緩慢ながら全米の経済活動の拡大継続が確認されると、ウイルスパンデミックからの回復を期待し、引けにかけ上昇幅を拡大した。
米国株高を受けた今日の東京株式市場は買いが先行した。日本でも米国景気の回復が続いているとの見方が広がり買いを誘った。また、国内政局に絡み次期政権でも現行の財政・金融政策が継続されるとの見方が大勢で、買い安心感となった。さらに、外為市場で1ドル=106円20銭前後と昨日午後の円の安値から10-20銭ほど円安・ドル高に振れていることも株価下支え要因となった。なお、取引開始前に財務省が発表した対外及び対内証券売買契約などの状況(週間)によると、海外投資家は8月23-29日に国内株を2週連続で売り越した。売越額は5905億円だった。また取引時間中に発表された8月の財新中国サービス業PMIは前月比0.1ポイント低下の54.0だった。
個別では、第1四半期連結営業利益が前年同期比51.4%増となったスカパーJ<9412>
が10%を超す大幅高となったほか、「3密回避システム」の導入実績を発表したアステリア<3853>、8月の既存店とEコマース計の売上高が前年同月比29.8%増加したと発表したファーストリテ<9983>、8月の既存店売上高が3カ月連続で前年同月比プラスとなった良品計画<7453>、21年2月期の連結純利益予想を上方修正したパイプドHD<3919>、米大統領選候補のバイデン陣営がゲームソフト「あつまれどうぶつの森」を選挙活動に活用すると伝えられた任天堂<7974>が高くなった。
また、菅官房長官の地方銀行の数は多過ぎるとの発言を受け再編の動きが加速するとの思惑などから福島銀行<8562>など地銀株の一角やSBI<8473>などが物色された。
一方、8月の国内既存店売上高が前年同月比19.0%減となったと発表したキュービーネットHD<6571>、東証と日証金が信用取引に関する臨時措置を強化すると発表したGダイニング<7625>、20年3-8月期連結営業利益が前年同期比5割近く減ったようだと報じられた久光製薬<4530>が安くなった。
セクターでは、非鉄金属、証券商品先物、その他製品、金属製品、不動産業などが上昇率上位。一方、水産・農林業、石油石炭製品が下落した。東証1部の値上がり銘柄は全体の68%、対して値下がり銘柄は26%となっている。
前場の日経平均は高値保合いを上放れて始まり、その後も底堅い動きとなった。ただ、ここからさらに上値を追うには、こなさなければならない課題もありそうだ。その一つに株式の需給関係が挙げられる。この秋は株式市場の需給に影響しそうなイベントが相次ぐ。ごく簡単に見ておこう。
まず、ソフトバンクグループ<9984>によるソフトバンク<9434>株の売出し。追加売出しを含めると最大1.4兆円程度になるとされている。野村証券によると1.4兆円は民営化案件を除く売出しでは過去最大だとしていると日本経済新聞が伝えている。売り出し価格は9月14-16日の間に決定する予定だ。
また、10月にはキオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)の上場も控えている。日本経済新聞によると、上場に伴う2156万株の新株発行での資金調達は853億円程度にとどまる見通しだが、追加売出しを含め約7395万株の株式売出しを実施する予定だ。キオクシアHDが上場した際の時価総額は2兆1300億円になるとみられ、今年最大の新規株式公開(IPO)の案件になるという。
民営化案件以外では過去最大となるソフトバンクの売出し、今年最大となるキオクシアHDのIPO。株式市場活性化の起爆剤となるか、株価の重い蓋となるか、そろそろ見極めなければならないかもしれない。
さて、後場の東京市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。今週に入り昨日までの3日間で日経平均は350円を超す上げとなっており、目先の高値警戒感を指摘する向きも多い。一方、前場に見られたように株価が弱含む場面ではすかさず押し目買いが入る。こうした売買が交錯し、後場はやや方向感を欠く展開となる可能性が高い。
<AK>
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