―厚労省が運動ガイド案、国民医療費45兆円超で健康寿命の延伸が課題に―
厚生労働省の専門家検討会は11月27日、「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023(案)」を取りまとめた。これはライフステージごと(こども、成人、高齢者)に分けて推奨する具体的な内容を示したもので、循環器病やがん、認知症などの発症リスクを低下させることが狙い。同省は10月に21年度の国民医療費が初めて45兆円を超えたと発表しており、健康増進や病気予防の必要性が一段と高まるなか、関連銘柄に注目したい。
●高齢者は1日40分の歩行推奨
ガイド案では健康増進に向け、歩行と同程度以上の活動を成人は1日60分(約8000歩)以上、高齢者は1日40分(約6000歩)以上を推奨し、そのほか成人・高齢者ともに筋力トレーニングを週2~3日の頻度で行うことが望ましいとしている。座りっ放しの時間が長いと血流や代謝が悪くなり、病気の発症に影響する点にも触れており、個人差などを踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組み、少しでも多く身体を動かすことが重要だと指摘した。
こうしたなか、株式市場では投資テーマとして フィットネスクラブに関心が高まっており、コンビニジム「chocoZAP(チョコザップ)」の会員数が100万人を超えたRIZAPグループ <2928> [札証A]、会員制フィットネスクラブ大手のセントラルスポーツ <4801> [東証P]、パーソナルトレーニングジム「24/7 Workout」を運営するトゥエンティーフォーセブン <7074> [東証G]、女性向けフィットネス施設「カーブス」を展開するカーブスホールディングス <7085> [東証P]、24時間型フィットネスクラブ「エニタイムフィットネス」を手掛けるFast Fitness Japan <7092> [東証P]、郊外型総合スポーツクラブ「ホリデイスポーツクラブ」の東祥 <8920> [東証S]などが関連銘柄として挙げられる。
●JMDCは三菱UFJ信託と協働
厚労省は、国民が主体的に取り組める新たな国民健康づくり対策として「21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)」を展開しており、24年度から開始する健康日本21(第3次)では「健康寿命の延伸・健康格差の縮小」「個人の行動と健康状態の改善」「社会環境の質の向上」「ライフコースアプローチを踏まえた健康づくり」の取り組みを進めるとしている。健康に過ごす寿命をいかに延伸させるかは重要な社会課題となっており、健康産業市場は今後一段と拡大することが見込まれ、関連企業にとって追い風となりそうだ。
JMDC <4483> [東証P]は11月、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]傘下の三菱UFJ信託銀行と協働し、身体の健康状態を分かりやすく理解するための指標「健康年齢」を活用した従業員向け健康増進支援サービスの実証実験を開始すると発表した。JMDCは、国内最大級の医療ビッグデータである「JMDC Claims Database」を構築しており、このデータベースに基づいて開発された「健康年齢」や、利用者の健康診断結果に応じて最適な内容を提示する健康記事コンテンツは、健康増進に関わるさまざまな取り組みに活用されている。
バリューHR <6078> [東証P]は11月、自社が提供する「健康管理サービス」について、みずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]傘下のみずほリサーチ&テクノロジーズと販売店契約を締結したと発表。同社は「健康情報のデジタル化と健康管理のインフラ企業」を事業ビジョンに掲げ、国民一人ひとりの健康寿命の延伸や、従業員の健康増進に寄与するサービスを提供しており、今回の契約で企業の健康経営の推進、従業員のウェルビーイング(心身の健康や幸福)、働き方改革の実現を加速させるという。
エムティーアイ <9438> [東証P]は10月から、日本医療研究開発機構(AMED)が実施する研究「働く女性の健康に関する非薬物的介入のシステマティックレビューと職域における女性の健康保持増進に向けたガイドライン作成」の外部組織委員会に参画している。これは職場における就労女性の健康増進を目的としたチェックリストを開発するもので、同社は20年以上にわたり女性の健康を支援するサービス提供で培った知見を生かす考えだ。
島津製作所 <7701> [東証P]は10月、24年春以降に健康増進プラットフォーム「SUPOFULL(サポフル)」製品化を含む新事業を開始することを明らかにした。「サポフル」は日常の健康データ計測ツール、健康データの統合管理ソフトウェア、医療機関における検査、健康アドバイスなどで構成されており、「自治体や介護施設による住民や利用者などの健康増進策の立案・進捗管理」「企業での従業員の健康管理」「個人による健康増進」などの用途を想定しているという。
シミックホールディングス <2309> [東証P]のグループ会社であるシミックソリューションズは10月、健康通帳アプリ「my melmo(マイメルモ)」を活用したビジネス基盤の更なる強化を図るため、健康寿命の延伸とそれに伴う資産寿命の延伸を実現するためのサービスを提供しているオケイオス(福岡市中央区)を子会社化している。
●WelbyなどPHR関連株にも注目
これ以外では、生涯にわたる個人の保健医療情報(健診・検診情報、予防接種歴、薬剤情報、検査結果など診療関連情報、個人が自ら日々測定するバイタルなど)であるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)関連銘柄にも目を配っておきたい。
11月にはTIS <3626> [東証P]がPHR基盤サービス「ヘルスケアパスポート」とマイナポータルとの連携開始を発表したほか、メディカル・データ・ビジョン <3902> [東証P]はPHRシステム「カルテコ」をリニューアル。Welby <4438> [東証G]はスズケン <9987> [東証P]と資本・業務提携の更新に伴って、PHRと流通プラットフォームを連携・利活用するサービス開発を推進することを明らかにした。
また、今年7月に設立されたPHRサービス事業協会の会員には、アルフレッサ ホールディングス <2784> [東証P]、ソフトウェア・サービス <3733> [東証S]、エクサウィザーズ <4259> [東証G]、サイバーエージェント <4751> [東証P]、サワイグループホールディングス <4887> [東証P]傘下の沢井製薬、シグマクシス・ホールディングス <6088> [東証P]傘下のシグマクシスなどが名を連ねている。
株探ニュース
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