前週末15日の米株式市場でのNYダウは382.20ドル高(+1.09%)と大幅続伸。9月の小売売上高が前月比0.7%増と、予想(-0.2%)に反して2カ月連続で増加したことから景気回復期待が強まった。また、米金融大手ゴールドマン・サックスなどの好調な企業決算も投資家心理を向上させ、上げ幅を拡大。一方、米10年債利回りが再び上昇に転じたこともあり、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.49%高と上昇率が限定的となった。
週明けの日経平均は米株高を好感し25.19円高の29093.82円でスタート。ただ、商品市況の上昇や米長期金利の上昇が重しとなったほか、前週の大幅上昇の反動もあり、寄り付き直後から失速するとマイナスに転換。その後、下げ渋って上昇に転じる場面もあったが、29144.33(75.70円高)を高値に再び失速すると、前場中頃には29000円を割り込んだ。手掛かり材料難のなか方向感に欠ける動きが続き、前引けにかけては2
9000円を挟んだ一進一退となった。
個別では、業績及び配当予想の上方修正を発表したミタチ産業<3321>、業績予想を上方修正した住石HD<1514>がそれぞれ急伸し、東証1部値上がり率上位に並んだ。電力不足を背景とした非鉄金属市況の上昇を刺激材料に東邦亜鉛<5707>も急伸。そのほか、INPEX<1605>、JFE<5411>、住友鉱<5713>、三井金<5706>、大紀アルミ<5702>など資源関連株が大幅に上昇。1ドル=114円台にまで進展した円安を追い風に三菱自<7211>、SUBARU<7270>、スズキ<7269>、デンソー<6902>なども大幅高、11月生産計画の下方修正の発表があったものの、トヨタ<7203>も大幅に上昇している。
一方、米長期金利の上昇が重しとなり、レーザーテック<6920>、ソフトバンクG<9984>、キーエンス<6861>、ソニーG<6758>、エムスリー<2413>などのグロース(成長)
株が軟調。第3四半期の営業損益が赤字に転落したマネーフォワード<3994>、上半期好決算も通期計画据え置きで出尽くし感につながったベイカレント<6532>がそれぞれ急落。業績予想の下方修正で一転減益見通しとなったRPA<6572>も大きく売り込まれている。
セクターでは医薬品、水産・農林業、食料品などが下落率上位となっている一方、鉱業、石油・石炭製品、輸送用機器などが上昇率上位に並んでいる。東証1部の値下がり銘柄は全体の54%、対して値上がり銘柄は40%となっている。
米国企業の企業決算が一足先に本格化するなか、日本企業の7-9月期決算が始まるのは来週からとなる。今週は決算シーズンの端境期となり、手掛かり材料難のなか、全体的にも方向感に欠ける動きとなっている。
前週は米国での各種物価指標の発表後、過度なインフレ懸念が後退したとの見方から、米長期金利が低下し、値がさハイテク株などを中心に全体的に大きく上昇した。
岸田首相の金融所得課税引き上げについての発言を受けて、政権への過度なネガティブ視が後退するなか、衆議院解散から投開票日までの株高アノマリーを再び意識する向きもいたようで、海外勢の買い戻しも進んだ。
しかし、前週からの繰り返しにはなるが、長期金利の低下は一過性のものと思われる。前週、米長期金利が低下していた中でも、商品市況の上昇は継続しており、期待インフレ率の指標となる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)もむしろ上昇していた。長期金利の低下は、インフレ懸念の後退を映したものではなく、国債入札が好調だったことや物価指標の発表というイベント通過に伴う、債券の売り方の買い戻しが主体だったと考えられる。
実際、前週末には、米長期金利は1.51%から1.57%へと上昇に転じ、再び1.6%台を窺う水準にまできている。そして、目を引くのが米BEIの一段の上昇だ。5月10日付けた2.54%を手前に、一段の期待インフレ率の上昇は考えにくいとの見方も一部であったようだが、実際には、15日に米BEIは2.56%と、5月高値を上回り、8年9カ月ぶりの
高値を記録した。NY原油先物価格も期近物で7年ぶりとなる高値を連日のように記録。
相場のモメンタムに追随する商品投資顧問(CTA)に倣ったトレンドフォロー型の戦略を採用するファンドでは、一段の金利上昇とドル高に賭けて、米債ショート・ドルロングのポジションを積み増しているとも伝わっている。
世界的な電力不足も未だ解決の目処が立っているとはいえない。電力高騰を背景にロンドン金属取引所(LME)での亜鉛やアルミニウムの先物価格は記録的な上昇基調が続いている。液化天然ガス(LNG)の在庫不足を背景とした代替需要から、原油先物価格の上昇も継続中。ラニーニャ現象により厳冬が想定される冬季シーズンに向け、商品市況の上昇やインフレ懸念再燃による長期金利の上昇には依然として警戒が必要そうだ。今日の東京市場で上昇が目立っているものも、ほとんどが商品市況の上昇の恩恵を受ける非鉄金属など資源関連のセクターだ。市場のインフレを巡る思惑は当面続くと想定される。
さて、後場の日経平均は、中国株や香港株も軟調ななか、時間外の米株価指数先物などの動きに振らされそうで、引き続き29000円台を挟んだ動きとなりそうだ。ただ、午前中に発表された中国の経済指標では、7-9月期国内総生産(GDP)が市場予想並みとなったほか、9月の鉱工業生産が市場予想を下回った一方、小売売上高が市場予想を上回るなど、まちまちながらも波乱のない内容となったことは目先の安心材料となりそうだ。直近下げが大きかった中国売上比率の高い銘柄などには見直し機運が高まる可能性もあろう。
<AK>
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