日本ヒューム<5262>の2023年3月期の連結業績見通しは、売上高32,000百万円(前期比8.5%増)、営業利益1600百万円(同10.3%増)、経常利益2,500百万円(同1.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,800万円(同15.7%減)である。2021年3月期から続いた減収・営業減益トレンドが、増収・営業増益に転換する計画である。鋼材価格がもう一段値上がる可能性はあるものの、都市防災や脱炭素ソリューション製品に関する引き合いは強く、基礎事業では公共構造物や物流倉庫関連、下水道関連事業では引き続き防災・減災関連の高付加価値製品で業績拡大を見込んでいる。
近年の地球温暖化により、日本では線状降水帯やゲリラ豪雨が発生し、設計水量以上の降雨による内水氾濫の頻発により多数の被害が発生している。これらの災害に対して、国を挙げて災害に屈しない強靭な国土づくりのための防災・減災、国土強靭化計画が進められている。同社は、浸水対策で多数実績のある「推進工法用合成鋼管」の機能を拡充し、大深度の地下空間に対して業界トップクラスの外圧強度を持つ製品を2022年2月に開発した。弊社では、今後各自治体で同製品の採用が進むことを期待している。
また、建設現場のICT(情報通信技術)化にも取り組んでいる。同社は杭施工管理のDXに取り組み、次世代型DX施工管理システム「Pile-ViMSys(R)」を開発した。同システムは、杭施工管理装置で取得したすべての計測データをクラウドにオンタイムで自動アップロードする機能を搭載しており、インターネット環境があれば、杭工事管理者、設計者・工事監理者・監理技術者、工事発注者などすべての工事関係者が、パソコンやタブレット等で現場から離れた場所にいても杭の施工状況が確認できる。これにより現場作業の軽減による安全性の向上や原価低減等が期待できる。2023年3月期においては、同社の全国の支社へ展開が進むと見られる。弊社では、Society 5.0※で実現するスマート社会に向け、同システムは取得データの利活用によるDX支援機能等が強化されるものと見ている。
※サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)を指す。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画(内閣府:2016年1月)において日本が目指すべき未来社会の姿として提唱された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 藤田 要)
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