で前場の取引を終えている。
5日の米株式市場でNYダウは280.70ドル安と3日ぶりに反落。欧米諸国が6日に対ロ制裁の強化を発表する計画が明らかになり、景気への影響懸念が重しとなった。また、連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事が5月連邦公開市場委員会(FOMC)での量的引き締め(QT)開始の可能性を示唆したことで、金利が急伸し、ハイテク株を中心に大きく売られた。主要株価指数は終日軟調に推移し、引けにかけて下げ幅を拡大。ナスダック総合指数は-2.25%と3日ぶりの大幅反落。米株安を引き継いで日経平均は254.10円安でスタート。時間外取引のナスダック100先物が軟調ななか、断続的な売りが入り、日経平均は前場終盤ころには一時27214.61円(573.37円安)まで下落した。
個別では、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)の大幅下落もあり、東エレク<8035>、アドバンテスト<6857>などの半導体関連や、イビデン<4062>、太陽誘電<6976>などの電子部品関連が大幅下落。東証プライム値下がり率上位にはSansan<4443>、ラクスル<4384>、ギフティ<4449>などの高バリュエーション株が並んだ。ほか、日本郵船<
9101>などの海運株も大幅安。ダイセキS<1712>、スギHD<7649>は決算が売りに繋がった。一方、米金利高を追い風に三菱UFJ<8306>、第一生命HD<8750>が上昇。旧村上ファンド系投資会社シティインデックスイレブンスの株式保有が明らかになったコスモエネHD<5021>は急騰し、富士石油<5017>も急伸。業績予想を上方修正したマニー<7730>、VTHD<7593>、山田コンサル<4792>なども大幅高。ほか、任天堂<7974>やシスメックス<6869>などディフェンシブ系が堅調。
セクターでは海運業、金属製品、機械などを筆頭にほぼ全面安。石油・石炭製品、銀行業の2業種のみが上昇となった。東証プライムの値下がり銘柄は全体の85%、対して値上がり銘柄は12%となっている。
前日の米株市場ではナスダック総合指数が久々に2%を超える大幅下落となった。FBRの中でもハト派とされるブレイナード氏からのタカ派発言とあって、影響が大きくなった面もあろうが、市場は敏感に大きく反応した。米10年債利回りは5日、2.55%(+0.15pt)へと急伸し、3年ぶりの高値を記録(なお、米10年債利回りは時間外取引において、本稿執筆時点で2.60%まで上昇してきている)。一方、期待インフレ率の指標とされる米10年ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)はほぼ横ばいで2.80%。名目金利から期待インフレ率を差し引いた実質金利は−0.25%までマイナス幅を縮小した。
3月上旬には実質金利のマイナス幅は1%を超えていたため、縮小ペースは急速だ。2020年の新型コロナウイルス・パンデミック以降、長らく資産価格の上昇を後押ししてきた実質金利のマイナスが解消されようとしていることを背景に、デュレーション
(投資回収期間)の長いグロース(成長)株が大きく売られたことは道理だろう。
しかし、ブレイナード氏の発言内容には既知の内容が多く、目新しい内容は少なかった。それにも関わらず、これだけ過剰な反応が見られたのは、相場が下げたがっているような印象を与える。相場のリバウンドが一服し、手掛かり材料難だったなか、これまで買い手の中心だった短期筋が、目の前に現れた格好の売り材料に対して素直に売りで反応したということだろう。改めて、足元の相場の脆さが立証されたといえる。
ブレイナード氏は前日の講演で、インフレ圧力を低下させる取り組みが「最優先」だと強調。また、「インフレは高過ぎる状況で、上振れリスクにさらされている」と指摘し、更なるインフレ高進が確認されれば「一段と強力な行動をとる用意がある」とも言及した。そのほか、ブレイナード氏は、QTは過去の回復局面よりも「かなり急速なペースで」行うこと、2017-19年と比較して縮小額の上限は「かなり大きくなる」ことなども示した。
一方、そうしたなか、中国では新型コロナ新規感染者数に歯止めがかかっておらず、現在上海市などで実施中のロックダウン(都市封鎖)の延長が決定された。ロシアへの制裁に加えて、中国でのロックダウンも相まって、インフレ要因の一つである物流網の混乱がさらに長期化するリスクが高まっている。パウエル議長は3月の議会証言にて、QTについて「3年程度かけて行う」などと発言していたが、インフレ高進の長期化リスクを背景に、縮小ペースを加速化する可能性もあろう。上述のブレイナード氏の発言を踏まえると、市場はFRBの一段のタカ派化リスクを織り込んでいく必要性に迫られることを覚悟しておいた方がよいだろう。
後場の日経平均は引き続き軟調な展開となろう。今晩の米国市場で発表されるFOMC議事録(3月15-16日開催分)の内容に対しての警戒感は一段と高まったといえ、内容を見極めたいとの思惑から押し目買いは入りにくい。日経平均はこれまで下値支持線になってきた75日移動平均線をも割り込んできているため、売り方優勢の地合いが継続しやすい。安易な押し目買いは避ける場面だろう。
(仲村幸浩)
<AK>
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