7日の米株式市場でNYダウは3日続伸し、211ドル高となった。ナスダック総合指数も2.56%高となり、主要株価指数は揃って過去最高値を更新した。議会がバイデン氏の大統領選での勝利を正式に認定し、政局不安が後退したとの見方に加え、12月のサプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況指数が予想外に改善したことも相場を押し上げた。特に前日に長期金利上昇とともに売られたハイテク株の上昇が目立った。本日の日経平均もこうした流れを引き継いで230円高からスタートすると、前引けにかけて一時27981.51円(491.38円高)まで上昇し、取引時間中のバブル崩壊後高値を連日で更新した。
個別では、ファーストリテ<9983>、エムスリー<2413>、東エレク<8035>といった値がさ株の上昇が目立ち、レーザーテック<6920>や富士フイルム<4901>は4%超の上昇。
富士フイルムは前日発表したバイオCDMO(開発製造受託)事業の大型投資が評価されているようだ。再生可能エネルギー発電のレノバ<9519>は連日で賑わっている。電力卸市場の価格上昇が買い材料視されているJパワー<9513>、決算とともに自社株買い実施を発表したキユーピー<2809>も大幅高。また、GMB<7214>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。一方、HOYA<7741>や日産自<7201>は軟調ぶりが目立つ。12月既存店売上高の減少が嫌気されたラウンドワン<4680>も売られ、決算発表のSHIFT<3697>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、ゴム製品、パルプ・紙、非鉄金属などが上昇率上位。半面、空運業、不動産業、精密機器などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の69%、対して値下がり銘柄は27%となっている。
米国でジョージア州の上院決選投票を通過し、さらにバイデン氏が正式に次期大統領に選出されたことで、東京株式市場でも米政局の不透明感後退を好感した買いが続いている。トランプ米大統領が7日投稿したビデオメッセージについて「敗北宣言した」と報じているメディアがあり、円滑な政権移行への期待が一段と高まっている面もあるかもしれない(もっとも熱烈なトランプ氏支持者がそれを受け入れるかは見通しづらい)。
株式市場では「株高に乗り遅れるな」というムードが支配的だ。前日の東証1部売買代金は2兆9990億円まで膨らみ、東証株価指数(TOPIX)先物には短期筋、実需筋など幅広い海外投資家から買いが入ったとみられる。本日ここまでの東証1部売買代金も1兆4000億円超となっており、前日並みの賑わいを見せている。3連休前、しかも今晩の米国では12月雇用統計の発表も控えているが、「持たざるリスク」が意識されればそんなことはお構いなしだろう。
市場では「買うべき銘柄」について様々な声があふれている。「米民主党政権下で追い風が期待できる環境関連株は早い者勝ち」「米長期金利の上昇でバリュー(割安)株のリバーサルに期待」「いや金利上昇は限定的で、ハイテク株は成長期待の方が勝る」などなど。さすがに東京都などでの新型コロナウイルス新規感染者数の急増、1都3県での「緊急事態宣言」再発出を受けて空運株、不動産株など影響の大きい業種は物色圏外に置かれているようだが、これらを除けば主力大型株は全面高の様相を呈している。出遅れている景気敏感株が買われる一方で、エムスリーや東エレクといった値がさグロース株も取引時間中の上場来高値を大幅に更新だ(株式分割考慮)。
20日のバイデン氏の就任式、それにその前後から始まる日米企業決算の発表までこうしたムードが続く可能性はある。ただ、上述したコメントを見て感じ取った読者も少なくないだろうが、「いいとこ取り」の物色動向という印象はある。例えば米上院で民主党は50議席を獲得し、上院議長を兼ねる副大統領を含めて過半数を確保した格好だ。共和党による「フィリバスター(議事妨害)」を打ち切る60議席には遠く、それが増税やハイテク企業規制を抑止すると期待されているが、では速やかな政策実現は可能なのだろうか。「ご祝儀相場」が一巡した後は、現実を見据えて銘柄選別する必要はあるだろう。
(小林大純)
<AK>
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