1. 会社概要
サイオス<3744>はLinuxに代表されるOSSを活用したITシステム開発領域での事業展開を目的に1997年に設立された。2017年10月に持株会社体制に移行し、サイオス株式会社に商号変更。事業承継した子会社のサイオステクノロジー(株)で、OSS関連製品やサポートサービスのほか、アプリケーション、クラウドコンピューティング、ビッグデータに関わるソフトウェア製品及びサービスの提供を行っている。機械学習機能を用いたIT運用分析ソフトウェア「SIOS iQ」を2015年に開発するなど、先進的な技術を積極的に取り入れた開発にも注力している。
また、M&Aにも積極的で2015年4月にKPS、10月にPCIとそれぞれ金融業界に顧客基盤を持つシステム開発会社を相次いで子会社化した。従来、同社の金融業界向けの売上構成比は数%程度にとどまっていたが、これら2社を子会社化したことで構成比が約2割に上昇し、成長が見込まれる国内Fintech領域への事業基盤を構築したと言える。なお、2017年12月末時点の連結子会社数は7社(うち海外2社)、持分法適用関連会社は2社となっている。
2. 事業内容
事業セグメントは、オープンシステム基盤事業とアプリケーション事業に区分されている。各事業の概要については以下のとおり。
(1) オープンシステム基盤事業
オープンシステム基盤事業は、ITシステムの障害時のシステムダウンを回避するソフトウェア「LifeKeeper」や、Linux OSで世界標準となっている「Red Hat Enterprise Linux」(Red Hat, Inc.の主力製品である企業向けサーバーOS)を始めとしたRed Hat, Inc.関連商品、OSS技術に関するサポートサービス「サイオスOSSよろず相談室」やOSS関連商品のほか、IT運用分析ソフトウェア「SIOS iQ」や各種情報システム向けのコンサルティングサービス等が含まれる。このうち、「LifeKeeper」「SIOS iQ」は米子会社が開発した製品で、国内だけでなく海外でも販売されている。
(2) アプリケーション事業
アプリケーション事業は、MFP向け管理ソフト※1や、Google Apps及びMicrosoft Office 365に連携した業務用クラウドサービス「Gluegentシリーズ」※2のほか、2015年に子会社化したKPS、PCIの事業が含まれる。KPSは主に証券会社を顧客とし、業務用アプリケーションの開発販売を行っている。また、PCIは主に地方銀行やネットバンクを顧客としており、主にALMシステム※3の開発、導入・運用支援サービスを行っている。地方銀行向けのALMシステムでは同社のほか、3社(新日鉄住金ソリューションズ<2327>、データ・フォアビジョン(株)、日本ユニシス<8056>)で寡占状態となっている。
※1 複合機にオプションで付く文書管理ソフトや操作性の向上に寄与るソフトを開発、提供している。
※2 社内のワークフローをクラウド化する「Gluegent Flow」を始め、アドレス帳機能を強力に拡張する「Gluegent Appsグループスケジューラー」等、企業における業務効率化を支援するクラウドサービス。
※3 ALM(Asset Liability Management)銀行の資産・負債を総合的に管理するソフトウェア製品。
3. 同社の特徴
同社の特徴は、国内で先駆してOSSをベースとした事業展開をしてきたことで、OSSに関する技術や運用ノウハウなどの知見が深いことが挙げられる。OSSに携わる技術者のレベル、あるいは運用サポート体制の充実といった点は顧客企業からも高く評価されており、競合他社の追随を許さない。同社の主要顧客としてNTT<9432>グループやトヨタ自動車<7203>など日本を代表する大企業が名を連ねていることからも、その評価の高さがうかがえる。競合はNEC<6701>や富士通<6702>など大手IT企業となるが、これらの企業は自社開発製品が主力となるため、OSS関連にはあまり注力していない。また、OSS分野を専門にサポートしている競合は見当たらない。
Linuxディストリビューション企業(商用Linuxの配布・サポートを行うことに特化した企業)として世界最大のRed Hat,Incとは創業時より緊密な連携関係にあり、「Red Hat Enterprise Linux」を始めとする関連商品の販売・サポートで同社は国内最大規模の代理店となっている。
Javaを使ったシステム開発も設立当初より手掛けており、その技術基盤をベースとして、リコー<7752>のMFP向け管理ソフトウェアを開発した。同事業は2009年に販売を開始して以降、MFPへの搭載率の上昇によって順調に成長を続けている。
なお、同社の商流はOSSのシステム開発やサポートサービス、子会社のKPSやPCIを除けば、間接販売が大半を占めており、主に大塚商会<4768>などのSI事業者を経由して最終顧客に販売されている。2017年12月期実績で見ると、大塚商会向けの売上構成比率が全体の24.9%を占めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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