―人手不足顕著な介護現場、先端テクノロジーを駆使してサービスの生産性向上へ―
11日の東京株式市場で、日経平均株価は反落した。10日に米国でトランプ政権が大型減税を議会に提案し、日本では中小企業の資金繰り支援などを含む第2弾の緊急対応策が発表されたが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による景気の落ち込み懸念が依然としてくすぶるなか相場を押し上げるには至らなかった。ただ、こうしたなかでも今後の成長が期待できる業界への関心は薄れることはなく、先端テクノロジーによって変革期を迎えつつある介護関連に改めて注目してみたい。
●政府、テクノロジー活用を推進
政府は2月19日、首相官邸で全世代型社会保障検討会議を開き、介護サービスの生産性向上について議論した。このなかで安倍首相は「介護職員の負担軽減のためセンサーなどのテクノロジーを活用し、介護サービスの質を維持しながら需要の伸びに対応する」と明言。あわせて「介護サービスの効果を正確に測定することを目的にビッグデータの整備を進める」ことなども述べ、夏の最終報告に向けて検討を指示した。
こうした背景には介護現場での人手不足が挙げられ、同会議の資料によると2018年度の要介護・要支援の認定数は658万人と、介護保険制度が発足した2000年度から2.6倍に拡大。これに対し介護職員数は増えているとはいえ、18年度の有効求人倍率は3.95倍と高水準で、需給ギャップは20年度に約26万人、25年度に約55万人になると予測されている。
●ケアプラン作成にAI導入へ
また、介護費用(介護保険給付費と自己負担の合計)は2000年度の3.6兆円から18年度は10.4兆円に膨らんでおり、このままの状況が続けば現役世代や次世代の負担が更に増し、社会保障制度の存続すら危ぶまれる。こうした状況を変えるためにはIT(情報技術)を活用して効率化を進めることが必要不可欠で、足もとではAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を活用する取り組みが出始めている。
例えば、介護の設計図であるケアプランの作成では、ケアマネジャーが複雑な計算や大量の事務処理に追われているが、この作業にAIを導入しようとする機運が高まりつつある。最近ではNTTデータ <9613> 子会社のNTTデータ東北が昨年12月、要介護認定事務のAI導入に向けた実証実験で福島県郡山市と協定を締結。アカツキ <3932> やコニカミノルタ <4902> などが出資しているウェルモ(東京都千代田区)は同月、ケアプラン作成支援AI「ケアプランアシスタント(ベータ版)」の実証実験会を行った。
セントケア・ホールディング <2374> やツクイ <2398> などが出資しているシーディーアイ(東京都中央区)は、自立支援を目指すケアデザインAI「CDI Platform MAIA」を展開している。これはインターネットに接続可能なパソコンやタブレットがあればすぐに利用できるため、導入先が今後一段と広まりそうだ。
●アイスタディは東大と共同研究
介護ロボットの分野では、富士ソフト <9749> のコミュニケーションロボット「PALRO(パルロ)」が高齢者福祉施設などで活躍している。このロボットはAIを搭載しており、会話のなかでライフログ(人の行動や趣向などを記録として残したデジタルデータ)を蓄積。歌や体操など日々のレクリエーションなどで活用されている。
丸文 <7537> が取り扱っている米アイオロス・ロボティクスのAI搭載介護支援ロボット「アイオロス・ロボット」にも注目。人物や物体の識別ができるほか、荷物を持ち自分でエレベーターのボタンを押して乗降することが可能で、ヘルパー不足に悩む介護施設の関心は高い。
これ以外にも、アイスタディ <2345> [東証2]は昨年11月から東京大学などと介護施設向けAI検知システム構築に関する共同研究を開始。施設入居者の行動をAIで認識・分析し、転倒事故防止などに寄与できるシステムの開発を目指している。
●uprは見守りシステムを提供
介護現場での負担軽減につながる技術として、IoTを「見守り業務」などで活用する動きも進んでいる。ユーピーアール <7065> [東証2]が手掛けるシステムは、GPS端末を自社サービスで所有しているため屋内から屋外までシームレスに見守ることが可能。また、さまざまなパートナーとの連携事例があり、広い分野で協業ができる点も強みとなっている。
このほか、オプティム <3694> はテレビとバイタルセンサーなどのIoT機器を使って体調管理などを行うことができる在宅医療支援サービス「Smart Home Medical Care」を提供している。
株探ニュース
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