15日の米株式市場でダウ平均は173.27ドル安(-0.55%)と反落。小売売上高が予想を上回ったほか、先週分の新規失業保険申請件数の減少で大幅利上げが警戒された。
一時、押し目買いが見られたものの、長期金利の上昇でハイテク株が売られたほか、過剰な利上げによる景気後退懸念を受けた売りも強まり、主要株価指数は一段安となった。ナスダック総合指数は-1.42%と大幅反落。米株安を受けて日経平均は244.52円安からスタート。時間外取引の米株価指数先物が下落するなか売りが膨らみ、午前中ごろには27525.68円(350.23円安)まで下落した。心理的な節目を手前に下げ渋ったものの、アジア市況も軟調に推移するなか、国内3連休を控えた手仕舞い売りも優勢で、安値圏でのもみ合いが続いた。
なお、午前に中国で発表された8月小売売上高は前年比+5.4%と予想(+3.3%)を大きく上回り、8月鉱工業生産も同+4.2%と予想(+3.9%)を上回った。しかし、市場の反応は限られた。
個別では、東エレク<8035>、レーザーテック<6920>、スクリン<7735>の半導体関連株が大きく下落。任天堂<7974>、ファーストリテ<9983>、キーエンス<6861>、SMC<6273>の値がさ株の下落も大きい。INPEX<1605>、石油資源開発<1662>、郵船<9101>、商船三井<9104>、大阪チタ<5726>など市況関連株も全般軟調。三井ハイテック<6966>は連日で急落しており、TDK<6762>、ローム<6963>など電子部品株も総じて安い。メルカリ
<4385>、リクルートHD<6098>などグロース株も大幅に下げており、ブイキューブ<3681>、MSOL<7033>、エニグモ<3665>、ギフティ<4449>など中小型グロース株の下落がきつめ。アスクル<2678>は決算が嫌気されて急落。ダブル・スコープ<6619>は韓国子会社の上場に関してブックビルディングが不調との一部報道が売り材料視されているもよう。
一方、米長期金利の上昇を追い風に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、みずほ<8411>
のメガバンクが揃って上昇。F&LC<3563>、資生堂<4911>、エイチ・アイ・エス<9603>、積水ハウス<1928>、三井不動産<8801>などインバウンド関連や内需系の銘柄が堅調。業績予想を上方修正したM&Aキャピ<6080>は急伸して東証プライム市場の上昇率トップに踊り出た。国内証券によるカバレッジ開始を受けたファイバーゲート<9450>、月次動向で見直し買いが入ったスノーピーク<7816>も大きく上昇している。
セクターでは海運、鉱業、その他製品が下落率上位に並んだ一方、銀行、電気・ガス、パルプ・紙が上昇率上位となった。東証プライム市場の値下がり銘柄は全体66%、対して値上がり銘柄は30%となっている。
本日の日経平均は前日の米株式市場の下落が嫌気されているほか、3連休前の手仕舞い売りなども膨らんでいるようで、値幅を伴った下落となっている。株価は75日、200日移動平均線を手前に踏みとどまっている一方、週足では52週、13週線を割り込んできており、テクニカル面ではトレンドの悪化が想起される。直近、相対的に底堅さが目立っていたマザーズ指数も本日は一変して最も大きく下落しており、短期目線の多い個人投資家が中心の相場の変わり身のはやさが窺える。
今晩の米国市場はトリプルウィッチング(株式先物取引・オプション取引、個別株オプション取引の3つの取引期限満了日が重なる日のこと)だ。需給面で荒い動きが想定されるなか、嫌なニュースが飛び込んできた。米大手物流サービス企業のフェデックスが発表した6-8月期の暫定決算は、調整後1株当たり利益が3.44ドルと、市場予想の5.10ドル程度を大幅に下回った。米国内外で景況感が大幅に悪化しており、世界的に取扱量が減少したという。また、9-11月期は更に悪化する見通しとのこと。同社株価は時間外取引で16%超と急落した。
各国中央銀行による過剰な金融引き締めが景気後退を招くのではとのオーバーキルへの懸念が強まっていた矢先、物流大手企業の業績悪化が伝わり、世界経済悪化への警戒感が一段と強まる形となった。これが時間外取引の米株価指数先物の下落の背景と思われ、東京市場の売りにも拍車をかけているようだ。
前日は米国で重要な経済指標が多く発表された。結果はまちまちながらも、やはり景況感の悪化を印象付けるような内容だった。9月ニューヨーク連銀製造業景況指数は-1.5とマイナス圏が続いたものの、予想(-12.9)を上回り、8月(-31.3)からは大きく改善した。一方、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は-9.9と予想(+2.8)に反してマイナス値となり、8月(+6.2)から再びマイナス圏に転換。マイナスとなったのは直近4カ月のうち3カ月となる。
また、米8月小売売上高速報は前月比+0.3%と予想(-0.1%)に反して増加したものの、7月分は+0.0%から-0.4%へと大幅に下方修正された。8月分も自動車を除いたベースでみると同-0.3%と予想(+0.0%)を大きく下振れてマイナスとなっており、強い結果とは言い切れない。
来週は20日から米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されるほか、英国金融政策委員会や日銀金融政策決定会合も開催されるため、目先は金融政策イベントが注目点にはなるだろう。ただ、これらを過ぎた後は、確実に近づきつつある景気後退がマーケットの焦点となってきそうだ。例年、9月は株式市場が下落しやすい一方、10月は対照的に上昇しやすい季節性があり、FOMC通過後はあく抜け感に加えて、こうしたアノマリーも意識され、いったんマーケットは上に行く可能性もある。しかし、経済指標の下振れが続くなか、徐々に7-9月決算への警戒感は高まっており、業績悪化による1株当たり利益(EPS)の低下を通じた株価下落の警戒感が重石になってこよう。
並行して株価バリュエーションであるPER(株価収益率)の低下に繋がる実質金利の上昇が続いていることも頭の片隅に置いておきたい。15日、米10年債利回りは3.45%
(+0.04pt)と6月半ばに付けた高値更新を窺う水準にまで上昇してきた。一方で、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下しており、名目金利から期待インフレ率を差し引いた米10年物実質金利は前日1.02%
(+0.07pt)に上昇、2019年以降の最高値を更新している。
いまは株価を決めるPERとEPSに共に低下圧力がかかっている段階で、まだこれらの調整は十分でないと考えられる。この状況に変化がない限り、株価指数の上値の重い展開は続きやすいだろう。
(仲村幸浩)
<AK>
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