今週の新興市場は大幅続落。米国株式市場では高値警戒感が根強く、加えて週末に11月雇用統計発表を控えていたため、相場がやや軟調な地合いにあった。11月半ば以降、為替は円高ドル安傾向にあるが、日本銀行植田総裁が7日参院財政金融委員会で金融政策運営について「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言し、日銀のマイナス金利解除時期が早まるという見方が強まり、円高ドル安が急速に進行した。大型の輸出株下落に引きずられる形で新興市場銘柄も値を消した。今週の騰落率は、日経平均が-3.36%だったのに対し、東証グロース市場指数は-3.56%、東証グロース市場250指数は-3.69%だった。
個別では、トコジラミ対策で注目されたWASHハウス<6537>、ハッシュタグ活用エンジンが資生堂<4911>の美容サイトに導入されたことが材料視されたサイジニア<6031>、新たにAIによる動画自動生成技術を開発したグラッドキューブ<9561>などが週間騰落率値上がり上位に入った。一方、利益確定売りに押されたアマナ<2402>やヌーラボ<5033>などが週間騰落率値下がり上位となった。週間売買代金上位には今週に引き続きジーエヌアイグループ<2160>や海帆<3133>がランクインした。
■見直し買いが徐々に広がり値固めに期待、IPOは4社
来週の新興市場は値固めか。今週は為替市場で急速な円高が進む中で、新興市場の銘柄も売られたが、来週は見直し買いが徐々に広がってくると思われる。
まず業績面では、新興市場の銘柄は情報・通信やサービス業の銘柄が多く、円高の影響は大きくない。為替市場で円の先高観が強まっている中で、新興市場の銘柄は相対的に業績懸念が小さい。またテクニカル面でも自律反発が期待される。東証グロース市場250指数の終値ベースの年初来安値は10月26日の632.29ポイントであり、また終値ベースの直近高値は11月21日の723.26ポイントである。12月8日終値は674.87ポイントとなり、この上昇の半値押しの水準となった。値ごろ感から買われやすい環境にあると思われる。なお、新興市場の株価動向に大きな影響を与える米ナスダック総合指数の12月8日の終値は2022年4月以来の高値となった。ナスダック総合指数は10月26日に直近安値を付けた後、上昇傾向が続いている。今週1週間のナスダック総合指数の上昇率は+0.69%だった。
来週の新興市場ではMBO(経営陣が参加する買収)の候補となる銘柄への物色も一手だろう。大正製薬HD<4581>やベネッセHD<9783>など知名度が高い大手企業のMBOが相次ぎ、投資家のMBO候補探しへの関心は高まっている。今週末12月8日には人材派遣大手のアウトソーシング<2427>もMBOを発表した。国内大手証券の一つは、「MBOは創業家の持ち分が多く、ステークホルダーが少ない中小型の企業のほうがやりやすい」と指摘し、新興市場からはCYBERDYNE<7779>やMTG<7806>などを候補銘柄としてあげている。なお、来週は新規株式公開(IPO)が4社予定されている。特に、新レギュレーション下で初めて仮条件上限を超えて公開価格が決定したブルーイノベーション<5597>の初値に注目したい。また、インバウンド関連が再注目となるなか、ラーメンチェーン運営の魁力屋<5891>も注目を引きそうだ。
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