15日の米株式市場でNYダウは小幅に3日続伸し、2ドル高となった。中国の8月小売売上高が予想以上に回復したほか、9月ニューヨーク連銀製造業景況指数も大幅に上昇し、世界経済の順調な回復を好感した買いが先行。しかし、翌日に連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表を控え、引けにかけて買い持ち高をいったん手仕舞う動きが広がった。ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は1.2%の上昇。ドル・円相場はFOMC結果を織り込むドル売りで1ドル=105円台前半まで下落した。本日の日経平均は米株式市場の流れを引き継いで29円安からスタートすると、朝方は前日終値を挟みもみ合う展開となった。ただ、前場中ごろを過ぎるとNYダウ先物が時間外取引で持ち直すとともに日経平均もやや強含んだ。
個別では、売買代金トップのソフトバンクG<9984>と同2位のソフトバンク<9434>が4%前後の上昇。レーザーテック<6920>やエムスリー<2413>といった値がさグロース
(成長)株も上昇が目立つ。その他ではソニー<6758>やキーエンス<6861>が堅調で、任天堂<7974>は小幅に上昇。KDDI<9433>やNTT<9432>といった通信株は反発している。業績上方修正のケーヨー<8168>やライフコーポ<8194>は急伸し、シラスウナギの人工生産に成功した新日科学<2395>などが東証1部上昇率上位に顔を出している。
一方、三菱UFJ<8306>などのメガバンク株やトヨタ自<7203>が小安い。ホンダ<7267>は2%超の下落。パーク24<4666>は決算が嫌気されて売られ、レノバ<9519>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、情報・通信業、食料品、医薬品などが上昇率上位。半面、海運業、ゴム製品、鉱業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の64%、対して値下がり銘柄は31%となっている。
本日の日経平均は米国株や米株価指数先物の動向睨みで一進一退の展開となっている。ここまでの値幅は前日終値から上下50円あまり。日足チャートを見ると、5日移動平均線に下値を支えられる形で高値圏をキープしている。ただ、前日の当欄でも述べたとおり、本日から日銀金融政策決定会合が開催されるほか、米国ではFOMCの結果発表が控えており、積極的な売買は手掛けづらいだろう。
金融市場は米連邦準備理事会(FRB)による金融緩和の長期化をかなり織り込んでいるとみられ、改めて方針が打ち出されたとしても短期的な市場反応は読みづらい。一方、前日の米株式市場では、新製品発表会を開催したアップルが材料出尽くし感から売られつつも底堅さを見せ、電気自動車(EV)のテスラは大幅高。主要ハイテク株の下げ止まりムードが続いたことには一定の安心感がある。
本日の東京株式市場もこうした米市場の流れを引き継ぎ、直近調整していた値がさグロース株が堅調な一方で、出遅れ修正の動きを見せていたバリュー(割安)株などがさえない。前日と同様、おおむね前週のリバーサル(株価の反転)的な動きだ。ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりで前日並み。新興市場ではマザーズ指数が2%
を超える上昇となり、2日に付けた取引時間中の年初来高値(1183.12pt)に迫る動きを見せている。
これまでもFOMCなどの重要な金融イベントの前後で投資資金の流れが変わる場面が度々あったが、いずれも短期的なリバーサルにとどまった印象。新型コロナウイルスを巡っては、ワクチン開発の進展が期待されるものの、欧米製薬各社が暗に示したように各国政府が早期の政治的成果を求めがちな点には注意する必要があるだろう。また、移動量の増加とともに感染者が増える傾向も変わらず、人々は感染予防に目配りした生活を続けている。一方、金融面ではFRBのバランスシート拡大一服に注目する向きもあるが、FRBを含む主要中銀は打ち手が限られつつもコロナ禍での緩和姿勢を崩していない。つまるところ社会、経済、金融とも基調に大きな変化はないと考えられる。
先週の市場動向からバリュー株の本格回復とグロース株の退潮を予想する市場関係者が増えたが、筆者は時期尚早であると考えている。米ハイテク株や国内グロース株のリバウンド、マザーズ指数の強い動きがこうした見方を後押しするだろう。
なお、国内では本日、菅新政権が発足する。閣僚候補の顔ぶれも出揃い、安倍路線を継承しつつも各所に菅氏の独自色を窺わせるような布陣となった。早速、新型コロナの感染拡大を抑制しつつ経済を持ち直せるか手腕が試されることになるが、官房長官時代に見せた実行力に期待したい。
(小林大純)
<AK>
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