29日の東京市場は昭和の日で休場だったが、米市場ではこの間、NYダウが28日に164ドル安、29日に239ドル高となった。パウエル連邦準備理事会(FRB)議長が資産購入の縮小について「議論する時期ではない」とし、金融緩和の長期化が意識されたほか、バイデン大統領の施政方針演説を受けて大型財政政策への期待も高まった。また、1-3月期の実質国内総生産(GDP、速報値)は前期比で年率6.4%増と大きく伸びた。ただ、祝日明けの東京市場では引き続き決算を受けて売りに押される銘柄が散見され、日経平均は57円安からスタート。その後下げ渋る場面もあったが、ゴールデンウィークの合間とあって積極的な売買は限られ、前引けにかけて一時28885.43円(168.54円安)まで下落した。
個別では、ソニーG<6758>が売買代金トップで6%の下落。会計基準変更で単純比較できないが、今期減益計画を受けて売りがかさんでいるようだ。村田製<6981>も今期の増益率鈍化がネガティブ視されて3%超の下落。その他、売買代金上位ではトヨタ自
<7203>などが軟調で、ファーストリテ<9983>は小安い。日本電産<6594>は4%近い下落。また、SMS<2175>などが東証1部下落率上位に顔を出している。一方、ソフトバンクG<9984>や任天堂<7974>は小じっかり。日立金<5486>は米ファンドなどによる株式公開買付け(TOB)実施の発表を受け、TOB価格に寄せする形で急伸。決算発表銘柄ではキーエンス<6861>や日立<6501>、富士通<6702>が大きく買われ、サイバー<4751>
は東証1部上昇率上位に顔を出している。
セクターでは、輸送用機器、ゴム製品、ガラス・土石製品などが下落率上位。一方、鉄鋼、海運業、陸運業などが上昇率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の37%、対して値上がり銘柄は59%となっている。
本日の日経平均は3ケタの下落で前場を折り返した。度々下げ渋る場面もあったが、ゴールデンウィークの合間とあって買いに傾きづらいところではあるだろう。東証1部売買代金を見るとここまで1兆4000億円弱と少なくはないが、主要企業の決算対応でまずまず膨らんでいることを考慮すれば、やはり積極的な売買は乏しいとみられる。
主要企業の決算反応はまちまち。日本電産、エムスリー<2413>など急落が相次いだ決算発表シーズン初期と比べると改善してきた印象を受ける。ただ、キーエンスなどを見ると決算反応への警戒感から事前に売りが出た反動との見方もできるだろう。このところ日々の新高値銘柄数は2ケタペースが続いており、本日もここまでの速報ベースでは基調に変化があったように見受けられない。結局のところ、決算を手掛かりとした見直しの動きや短期目的の取引はあっても、「高値を取りに行く」ムードではないことには変わりないのだろう。ただ、こうしたなかで富士通が1月に付けていた取引時間中の年初来高値(17250円)を更新したのには、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が息の長い投資テーマとして意識されているのを感じさせる。
新興市場でもマザーズ指数が-0.51%と続落。28日のマザーズ売買代金は1100億円台まで減少しており、薄商いのなか信用買いの手仕舞いのための売りに押されているとみられる。なお、東京証券取引所が27日発表した23日申し込み時点の信用買い残高
(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は3兆3005億円(前の週から1029億円増加)と2年10カ月ぶりの高水準、一方の売り残高は7072億円(同257億円減少)
と2年4カ月ぶりの低水準だったという。ゴールデンウィーク前にどの程度信用買い残の整理が進んだか見極めたいところだが、株式需給の面でも引き続き上値の重さが意識されるところか。
さて、東京市場の休場中に米国株は一進一退となったが、「これまでどおり相場の上昇に乗り続けよう」とする向きと「強い(業績・経済)数値が確認されたらリスク資産を減らしていこう」とする向きがせめぎ合っている印象を受ける。「GAFAM(アルファベット(グーグル)、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)」に代表される主力ハイテク企業の決算はやはり圧巻の内容だったが、決算に対する反応はまちまち。ここからの投資戦略についても考えが割れているようだ。バイデン政権やFRBは積極的な財政支出・金融緩和を継続する姿勢を示しているが、ブレークイーブン・インフレ率(期待インフレ率の指標)は2.4%台まで上昇してきた。インフレ加速に対する警戒感も根強いことが窺える。
東京市場は明日から5連休となるが、この間に米中では企業景況感などの経済指標が相次ぎ発表される。また、日本では本日もコマツ<6301>や東エレク<8035>、ANA<9202>といった主要企業の決算発表が多く予定されており、後場の取引も様子見ムードが強そうだ。
(小林大純)
<AK>
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