「材料出尽くし、軸は下向きへ」
日経平均の日足チャートでは、陰の大引け坊主が出現。結果的に安値引けとなり、先安観の強さを示唆している。下値メドとして意識されていたFの壁③をブレイクしたことで、軸は下向きに転換したと判断。目先は下方の複数の窓を連鎖的に埋めることになりそうだ。短期的には4段目の窓下限(8448.54円―8488.14円)までの下落余地がある。
だが、ひとつ注意しなければならないのが、日銀金融緩和のマーケットの織り込み具合である。発表タイミングが大引け間際ということもあり、多くの投資家、特に市場が閉鎖されている米系投資家は具体的な投資行動には出られなかったことだろう。
お昼頃に先物に断続的な売り注文が出ていたものの、ポジションを全面的に解消するには至っていないはず。もし、日銀金融緩和の結果が「期待はずれ」であれば、改めて明日以降、売りが出てくるはずだ。まずはそれを見極める必要がある。
そしてもうひとつは、日銀が発表した無制限の貸し出しである。銀行による民間企業への融資を目的としており、金利は0.1%、期間は最長で4年としている。つまり、この新政策の影響を考慮する必要があるのだ。本日のマーケットではまず「11兆円」という金額の少なさにネガティブな反応を示しただけであり、この無制限貸し出しに関しては織り込んでいない。時間切れであった公算が大きいのだ。
だから、軸を判断する際も、この“紛れ”を考慮する必要がある。「本当に軸は下向きに傾いたのか?」と自問自答し、再確認が必要というわけだ。もちろん本当に軸が下向きに傾いているのであれば、有無を言わさず下方の窓を埋めにいくはず。その強弱感をしっかりと捉えることにしたい。
そして、もちろんこんな小手先の金融緩和を行っても、実体経済に好影響なんて与えないのは分かっていることだろう。それは歴史が証明しており、日銀の金融緩和の限界ははっきりとしているのだ。
以前にも説明したかもしれないが、日銀の金融緩和はテコの原理で言えば力点である。そして実体経済のマネーの動きは作用点となる。しかし、肝心の支点がぶっ壊れているのだから、テコの原理が使えるわけがない。マニュアル車で言えば、クラッチの壊れた車である。その時点で機能不全に陥っているのだ。だから、ちゃんと修理が終わってからでないと、使っても意味がないのである。機能を回復するためには、銀行の財務体質が健全でなければならない。隠れ不良債権の表面化である「膿出し」が必要であり、そうでないと「信用創造」が機能しないのである。まだまだ時間のかかる話というわけだ。
一方、気になるのはやはり、NY市場の動向だ。ハリケーン(今は温帯低気圧)の影響で今晩も休場となっており、投資家の売買できないリスクが一層高まっている。NY証券取引所自体には被害がないものの、周辺の地下鉄に水が流れ込んだという情報もある。交通機関、通信など社会インフラのマヒが続けば、経済的ダメージは避けられない。取引再開後には下方修正リスクが意識され、株価の下落要因になるかもしれない。ダウ、ナスダックのチャートが崩れかけている今、それはかなりのリスクファクターだ。「予行練習」の可能性も含めて、米国株の動きは注視する必要がある。