「9075円の壁は存在、軸下方転換を待つタイミング」
東京株式市場は日経報道などですでに「10兆円規模の金融緩和」を織り込んでおり、それ以上の資産買い入れ基金の残高積み増しがないと、上方向では反応しにくい。日経平均は直近の2週間で約600円も上昇しており、波乱の可能性がある決定会合前に外資系証券が利益確定を急いだ格好となっている。
日経平均の日足チャートでは、前日の陽線を包む“大陰線”が出現。9075円付近に“壁”が存在していることを示しており、やはりここに“テクニカルの壁”が存在しているのであろう。短期的には「上方に壁・下方に窓」という位置関係にあり、下方の窓(8837.19円―8867.79円)を埋めやすい。軸が多少上向きであっても埋める可能性が高く、あと100円程度の下落余地がありそうだ。
だが、問題なのは軸上向きの状態がいつまで続くのかということ。軸上向きの要因となっていたのは「日銀金融緩和」であり、これがそろそろ息切れとなりそうなのだ。窓チャートで言えば、Fの壁③が消滅する可能性が高いということであり、軸下向きに再び転換すると思われるのだ。
だから、「窓・壁信者」は8850円の窓埋めの有無、経緯を見て、その軸の傾きを判断しなければならない。もちろん「窓埋めした方が弱い」ということであり、特に窓を突き抜けて下落した場合には、大暴落の危険性があることを認識しておかなければならない。なぜならばそれは「窓理論に反した動き」であり、軸の傾きが大きく下向きにシフトした可能性が高いからである。相場で儲けるためには、中長期の視点が大切。短期でロスが積み上がっても、中長期の視点さえ間違っていなければ、大怪我はしないはずなのだ。株価の動きを「窓・壁・軸理論」のフィルターを通して見て、軸を推定するのが、この理論の真髄である。現状ではまだ「軸上向き」であるが、そろそろ「軸下向き」と推定できる変化が訪れると予感している。売り方はポジションを軽めにして、次なるアクションを待つしかない。
一方、週末26日(金)には、第9回日経・CSIS共催のシンポジウムが東京で開催された。米国サイドからはカート・キャンベル氏やマイケル・グリーン氏、そしてジョセフ・ナイ氏といったいわゆる「ジャパン・ハンドラー」の重鎮が参加し、日本からは実行部隊である前原氏など政治家の先生たち顔を並べた。
そのシンポジウムのなかでの彼らの提言を一言で表現すればこうだ。「日本はアメリカの言うことをもっと聞け!」である。経済面では米国を支援するためにTPPに参加し、軍事面では尖閣問題などを見据えて日米同盟を強化する。これは「いざとなれば尖閣でドンパチやろう」ということであり、「日本は戦争に飢えている米軍需産業に少しは貢献せよ」ということにもなる。そのためには今の民主党政権では少し無理があるということだ。そろそろ政界を再編し、より日米同盟を強化できる政権を樹立すべきであると言っているのだ。だから、米国サイドは最初「自民・公明・維新」の連立政権を模索していたが、橋下人気が予想外に下火になってきたので、カンフル剤として石原新党を投入した。「自民・公明・維新・石原+みんな?)」の連立を狙っているということである。国民からみればダメな民主党政権が終わり、新たな日本の政治がスタートするようにも見える。それが“ダマシ”なのであり、実質的には米国支配が強まるだけなのだ。
そもそもこれら一連の流れは、米ドル破滅を回避するために作られた巧妙な作戦。「米国が破綻しそうなのだから、属国日本を踏み台にして何が悪い」――そういった宗主国サイドの基本的な理念に基づいている。彼らからしてみれば日本は便利なお財布なのである。もちろん郵政民営化というのも同一線上に位置している。日本人が知らないところで、国民の資産を奪うための数々の仕掛けが放たれているのだ。特例国債法案の未成立を材料に、米系格付け会社が日本国債を格下げ。米ヘッジファンドが債券先物市場の高速売買を使って、日本国債を売り崩し、ひと儲けする――なんていうシナリオも十分に考えられるのだ。全体相場の動きは総じて鈍いが、投資家は常にアンテナを張っていなければならない。(黒岩の眼より)