「円安で買い先行、9300円までの上昇余地」
一方、外国為替市場では円相場が軟調推移。1ドル=79円台後半、1ユーロ=104円半ばでの推移となっており、円安基調が鮮明になっている。欧州発の金融危機の懸念が後退するなか、日銀が月末にも追加の金融緩和策を発表――そういった思惑から、円が一方的に売られやすくなっているのだ。国内輸出企業には追い風となり、全体相場を押し上げる要因となりそうだ。
そのようななか、日経平均の日足チャートでは、昨日、下方の窓と上方の窓を同日に埋める窓理論の法則4の売りのパターンが出現した。
本来ならば、上方の窓を“後”に埋めたので、売りサインとなるのだが、下方の窓埋めを拒否して大陽線が出現するような強い相場であり、典型的な「軸上向き」のチャート形状と言えそうだ。株価は上方向に動きやすく、この売りサインはダマシとなる公算が大きい。現時点では特に外部環境に変化はみられず、自然体で株価が上昇することになるだろう。短期的には価格帯別出来高の盆地である9300円付近までの上値余地があり、売り方は引き続き踏み上げに注意しなければならない。
そして足下では「日銀は事実上の無制限緩和に踏み切る」と報じられている。「物価の上昇率1%を展望できるまで」としており、この報道も相場の下支え要因となりそうだ。日銀がFRBと同様“無制限”に緩和すれば、円安が予想され、物価や株価に好影響を与えると考えられるからだ。
だが、もちろんこんなことは“異常”であり、我々庶民は許してはならない。なぜならば、日銀の資産が膨れあがるということは、事実上のマネタイゼーション(中央銀行の国債引き受け)であるからだ。国が「国債」という紙切れを刷り、そして中央銀行が「円」というこれまた紙を刷る。実際にはこれがコンピュータの電子上で行われるわけだが、こうやって円の価値が希薄化していくのである。
円の一次取得者である金融機関はメリットを享受するが、二次、三次取得者である庶民はデメリットを受けることになる。つまり、「薄まった円」を使うことになり、「見えない税金」を搾取されているのと同じことになるのだ。世の中では「金融緩和・円安・為替介入待望論」が渦巻いているが、これは問題の本質を理解していない人たちの妄言である。自分たちの国の通貨を貶める政策を歓迎しているのだから、本末転倒なのだ。「円安になれば輸出が促進され、景気回復する」――そう主張する人もいるだろう。しかし、その対価として受け取ったのが米ドルであり、その運用先として米国債を選択しているのでは、目も当てられないのだ。結局、返ってくるアテのないところに投資していることになり、何のための金融緩和、円安なのか分からなくなってしまう。「日本人の労働力の対価が米国債いう紙っぴらだった」ということになりかねないのだ。我々はそろそろ「経済成長至上主義」から脱却しなければならないだろう。