S&P500月例レポート(22年8月配信)<後編>
新型コロナウイルスに加えて今度はサル痘も
○世界保健機関(WHO)はサル痘の感染拡大について、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言しました。米疾病対策センター(CDC)によると、米国内で4907人の感染が確認され、中でもニューヨーク市の感染者数は1247人となり、クラスターが発生したとみられます。世界全体の感染者数は2万804人となっています。ワクチンの要請が急激に増加していますが、供給量は少なく、米政府は250万回分のワクチンを発注しました。
○新型コロナウイルス関連データ:
⇒世界全体のワクチン接種回数は123億回となりました(6月末は121億回)。
米国は現時点で:
→人口の77.8%(同77.4%)が少なくとも1回はワクチンを接種したことになり、人口の66.4%(同66.3%)が2回の接種を終えました。人口の31.8%(同31.7%)がブースター接種を受けました。
→新規感染者数の7日間平均は7月末時点で12万7022人となり、6月末時点の10万8963人から増加しました。1日当たりの新規感染者数は2022年1月11日に141万7493人に達しました(2021年11月末時点は8万3120人)。また、死者数の7日間平均は439人に増加しました(6月末時点は377人)。
→米国の新型コロナウイルスによる累計死者数は102万9000人となりました(6月末時点は101万6000人)。
各国中央銀行の動き(および関連ニュース)
○6月のFOMC議事録が公表され、インフレは成長よりも重視され、インフレが抑制されるまで利上げを継続する意向であり、次回会合でさらに0.50%または0.75%の利上げが行われることが示唆されました。
○地区連銀経済報告(ベージュブック)では、労働力不足がわずかに改善し、労働需要がやや低下していることに加え、住宅需要が落ち込んでいることが示されました。
○欧州中央銀行(ECB)は、11年ぶりに政策金利を引き上げました。利上げ幅は0.25%の予想に対して0.50%となり、2014年からマイナス圏が続いていた中銀預金金利は0%となりました。同行はまた、追加利上げを行う可能性を示唆しました。年内の会合は9月8日、10月27日、12月15日に予定されています。
○FOMCは6月に続き、7月も0.75%の利上げを実施しました。これまでの利上げ幅は、5月に0.50%、3月に0.25%、その前は2018年12月の0.25%に遡ります。6月は賛成10、反対1で、カンザスシティ連銀のジョージ総裁が0.50%の利上げを支持しましたが、今回の利上げは全会一致で決まりました。今回の利上げにより、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2.25%~2.50%となりました。
⇒FOMCは、今後数ヵ月は継続的な利上げが適切であるとの考えを示しました。市場は9月も追加利上げが行われると予想していますが、利上げ幅は0.50%と0.75%で意見が分かれています。FRBは、消費と生産が鈍化し、インフレが高止まりする一方で、雇用は堅調で増加しているとの見方を明らかにしました。
企業業績
○株価変動の最大の要因となったのは、企業の決算およびガイダンスの発表でした。現時点で278銘柄が決算発表を終え、209銘柄で営業利益が予想を上回り(75.2%)、60銘柄で予想を下回りました。また、売上高では、274銘柄中186銘柄(67.9%)で予想を上回りました。
⇒2022年第2四半期は前期比7.3%の増益(第1四半期は過去最高となった2021年第4四半期から13.0%減益)、前年同期(2021年第2四半期)比1.7%の増益が見込まれます。売上高は前期比3.7%増、前年同期比11.5%増となり、過去最高を更新する見込みです。
⇒2022年通年の利益は前年比4.8%増と、過去最高を再度更新する見通しで、2022年の予想株価収益率(PER)は18.9倍となっています。
⇒2023年の利益は同11.4%増が見込まれており、予想PERは16.9倍となっています。
⇒2022年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は、2022年第1四半期の16.6%から18.9%に上昇しました(2021年第2四半期は5.4%、2020年第2四半期は17.8%、2019年第2四半期は24.2%)。
⇒2022年第2四半期には企業がコスト上昇を転嫁できたことから、営業利益率は12.35%となり、前四半期の11.93%から上昇しました(1993年以降の平均は8.24%、最高は2021年第2四半期の13.54%)。
個別銘柄
○スカンジナビア航空(SAS)は米国連邦破産法第11条の適用を申請しました。パイロットのストライキにより、SASの航空便の63%がまずキャンセルとなり、負担が増している国際線の路線網に追い打ちをかけました。
○オンライン娯楽大手ネットフリックス
○報道によると、自動車メーカーのフォード・モーター
○化学・電気素材メーカーのスリーエム
○ディスカウントストアのウォルマート
⇒ショッピング・プラットフォーム企業のショッピファイA
○自動車メーカーのゼネラル・モーターズ
注目点
○アルファベットA
○米議会の上院と下院は、米国内の半導体メーカーへの直接支援(390億ドル)や半導体製造に関する税額控除(240億ドル)などを盛り込んだ、総額2800億ドルに上るCHIPS法案(CHIPS and Science Act)を可決しました。同法案に基づき、科学技術研究プログラム(詳細は未定)に対して、今後数年間で約2000億ドルの予算が充てられる予定です。この後、大統領の署名を経て正式に成立する見通しです。
インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
S&P500指数は7月に9.11%上昇して4130.29で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス9.22%)。6月は3785.38で終え8.39%の下落(同マイナス8.25%)、5月は4132.15で終え0.01%の上昇(同プラス0.18%)でした。過去3ヵ月では0.04%下落(同プラス0.39%)、年初来では13.34%下落(同マイナス12.58%)、過去1年間では6.03%下落(同マイナス4.64%)、2022年1月3日の最高値からは13.89%下落(同マイナス13.13%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは21.98%上昇(同プラス26.78%)して月を終えました。
S&P500指数の7月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は6月の2.03%から1.69%に下落しました(5月は2.41%)。年初来では1.94%(6月は1.98%)、2021年は0.97%、2020年は1.73%、2019年は0.85%でした。2018年は1.21%、2017年は0.51%(1962年以来の最低)でした。出来高は前月比3%減少した6月から18%減少(営業日数調整後)、前年同月比では7%増加し、過去1年間では21%減少しました。
7月に前日比で1%以上変動した日数は20営業日中9日(上昇が7日、下落が2日)、2%以上変動した日数は2日(2日ともに上昇)でした。6月は1%以上変動した日数は21営業日中11日(上昇が4日、下落が7日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が2日、下落が5日)、3%以上変動した日数は3日(上昇が1日、下落が2日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は72日(上昇が35日、下落が37日)、2%以上変動した日数は28日(上昇が14日、下落が14日)となりました。2021年は、前日比で1%以上変動した日数は55日(上昇が34日、下落が21日)、2%以上変動した日数は7日(上昇が2日、下落が5日)となりました。2020年は1%以上変動した日数が109日(上昇が64日、下落が45日)、2019年は1%以上変動した日数が37日(上昇が22日、下落が15日)でした。
7月は20営業日中18日で日中の変動率が1%以上となり(6月は21営業日中19日)、3%以上の変動があった日はありませんでした(7月は2日)。年初来では1%以上の変動が129日、3%以上の変動が13日、4%以上の変動が3日でした。2021年は1%以上の変動が93日、3%以上の変動が3日でした。2020年はそれぞれ158日と34日、2019年はそれぞれ73日と1日、危機に見舞われた2008年はそれぞれ228日(253営業日中)と75日でした。
7月は、6月のトレンドが大きく反転し、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回りました。7月の値上がり銘柄数は443銘柄(平均上昇率は10.44%)で、6月の57銘柄(同2.65%)、5月の279銘柄(同6.32%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄は217銘柄(同15.61%)で、6月の1銘柄(同11.39%)、5月の53銘柄(同16.32%)から増加し、2020年11月の297銘柄以来の高水準となりました。25%以上上昇した銘柄は15銘柄(同31.61%)でした(6月はゼロ、5月は6銘柄で同28.62%)。
一方、7月の値下がり銘柄数は60銘柄(平均下落率は4.19%)で、6月の446銘柄(同11.03%)、5月の225銘柄(同6.03%)から減少しました。7月の10%以上下落した銘柄数は4銘柄(同15.93%)と、6月の225銘柄(同16.15%)、5月の38銘柄(同16.74%)から減少しました。25%以上下落した銘柄数はゼロで、6月の17銘柄(同29.95%)、5月の6銘柄(同28.39%)から減少しました。
過去3ヵ月間では値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は縮小しましたが、引き続き値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を上回りました。値上がり銘柄数は240銘柄(平均上昇率は7.90%)と、6月末の48銘柄(同5.68%)から増加し、値下がり銘柄数は263銘柄(平均下落率は9.01%)と、6月末の455銘柄(同16.71%)から減少しました。10%以上値上がりした銘柄数は68銘柄(平均上昇率は16.84%)で、6月末の7銘柄(同13.13%)を上回りました。10%以上値下がりしたのは87銘柄(平均下落率は18.10%)、6月末は323銘柄(同21.35%)でした。過去3ヵ月間で25%以上上昇した銘柄数は6銘柄(6月末時点はゼロ)、13銘柄(同84銘柄)が25%以上下落しました。
年初来でも、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の差は改善しましたが、引き続き値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を大幅に上回りました。値上がり銘柄数は129銘柄(平均上昇率は15.19%)と、6月末の102銘柄(同13.22%)から増加した一方、値下がり銘柄数は373銘柄(平均下落率は19.00%)と、6月末の400銘柄(同24.41%)から減少しました。10%以上上昇した銘柄数は66銘柄(平均上昇率は25.87%)と、6月末の52銘柄(同21.81%)を上回りました。10%以上下落した銘柄数は280銘柄(平均下落率は23.68%)で、6月末は344銘柄(同27.46%)でした。年初来で24銘柄(6月末は12銘柄)が25%以上上昇し、109銘柄(同189銘柄)が25%以上下落しました。
2021年通年では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を大幅に上回り、値上がり銘柄数は434銘柄(平均上昇率は34.30%)、値下がり銘柄数は70銘柄(平均下落率は12.01%)でした。10%以上上昇した銘柄数は367銘柄(平均上昇率は39.77%)、10%以上値下がりした銘柄数は36銘柄(平均下落率は19.27%)でした。259銘柄が25%以上上昇し、7銘柄が25%以上下落しました。
◇世界の株式市場:S&Pグローバル総合指数
世界の株式市場は7月に反発しました。S&Pグローバル総合指数は6月の8.74%の大幅下落(米国の8.54%下落を除くと、9.02%下落)の後に、7月は6.89%上昇し、米国の9.28%上昇を除くと、3.59%上昇しました(5月は0.20%の下落で、米国の0.36%下落を除くと0.04%の上昇、4月は8.11%の下落で、米国の9.09%下落を除くと6.70%の下落、3月は1.70%の上昇で、米国の3.11%上昇を除くと0.25%下落)。
過去3ヵ月間では、世界の株式市場は2.64%下落し(6月末時点は16.30%下落)、米国の0.41%下落(同17.15%下落)を除くと5.73%の下落(同15.08%下落)、年初来では15.90%の下落で(同21.33%下落)、米国の14.62%下落(同21.87%下落)を除くと17.72%の下落(同20.55%下落)、過去1年間では12.93%の下落で(同18.29%下落)、米国の8.94%の下落(同15.28%下落)を除くと18.20%下落しました(同22.18%下落)。
より長期では、米国のパフォーマンスが突出していました。過去2年間では、グローバル市場は12.53%上昇しましたが、米国の24.81%上昇を除くと4.06%の上昇でした。過去3年間でもグローバル市場は20.19%上昇しましたが、米国の35.67%上昇を除くと2.69%の上昇でした。2020年11月3日の米大統領選挙以降では、グローバル市場は11.75%上昇しましたが、米国の20.16%上昇を除くと1.23%の上昇でした。
S&Pグローバル総合指数の時価総額は7月に4兆4160億ドル増加しました(6月は6兆3710億ドル減)。米国以外の市場の時価総額は9590億ドル増加し(同2兆6780億ドル減)、米国市場の時価総額は3兆4560億ドル増加しました(同3兆6930億ドル減)。
7月は11セクター全てが上昇し、セクター間のリターンのばらつきは縮小しました(6月は上昇したセクターはゼロ、5月は4セクターが上昇)。7月のパフォーマンスが最高のセクター(情報技術、11.72%上昇)と最低のセクター(コミュニケーションサービス、1.93%上昇)の騰落率の差は9.79%となり、6月の11.89%、5月の14.92%から縮小しました。年初来のパフォーマンスの最高セクター(エネルギー、20.55%上昇)と最低のセクター(コミュニケーションサービス、26.41%下落)の差は46.96%と6月末時点の43.33%から拡大しました。
新興国市場は1月の0.98%下落(2021年12月は1.41%上昇)、2月の3.49%下落、3月の2.55%下落、4月の5.63%下落、5月の0.31%下落、6月の5.80%下落の後に、7月も1.05%下落し、7ヵ月連続での下落となりました。年初来では18.35%下落しています。過去1年間では20.11%の下落となり、過去2年間では5.06%下落、過去3年間では3.01%下落しています。
7月は24市場のうち17市場が上昇しました(6月は5.58%上昇した中国の1市場のみ)。チリのパフォーマンスが最高で7月に12.24%上昇し、年初来では16.67%上昇、過去1年間では2.86%上昇しています。2番目はインドで7月は8.91%上昇し、年初来では8.98%下落、過去1年間では0.54%上昇しました。3番目はブラジルで7月は5.77%上昇し、年初来では1.63%下落、過去1年間では27.27%の下落でした。
パキスタンのパフォーマンスが最低となり、7月は16.72%下落し、年初来では35.31%下落、過去1年間では45.26%下落しました。これに続いたのが中国で7月は9.39%下落し、年初来では20.95%下落、過去1年間では28.79%下落しました。3番目はコロンビアで7月は4.98%下落し、年初来では8.57%下落、過去1年間では0.77%上昇しました。
先進国市場のパフォーマンスは新興国市場をはるかに上回り、3月の2.21%上昇、4月の8.39%下落、5月の0.18%下落、6月の9.09%の下落の後に(2月は2.25%下落、1月は5.82%下落、2021年12月は4.08%上昇)、7月は全体で7.88%上昇しました。先進国市場は米国を除くと、3月の0.54%上昇、4月の7.06%下落、5月の0.16%上昇、6月の10.11%下落の後に(2月は1.51%下落、1月は5.38%下落、2021年12月は4.73%上昇)、7月は5.23%上昇しました。先進国市場は、年初来では15.61%下落、米国を除くと17.50%下落、過去1年間では12.03%下落、米国を除くと17.54%の下落となりました。過去2年間では18.37%上昇、米国を除くと7.42%上昇、過去3年間では23.38%上昇、米国を除くと4.67%の上昇となりました。
7月は25市場中23市場が上昇しました(6月は1市場(香港、1.11%上昇)のみが上昇、5月は14市場が上昇)。パフォーマンスが最も良かったのはスウェーデンで7月は12.31%の上昇で、年初来では30.26%下落、過去1年間では31.53%の下落でした。2番目はオランダで、7月は9.60%上昇、年初来では25.89%下落、過去1年間では24.01%下落しました。3番目は米国で7月は9.28%上昇し、年初来では14.62%下落、過去1年間では8.94%下落しました。
パフォーマンスが最低だったのは香港で7月は3.54%下落し、年初来では9.87%下落、過去1年間では19.95%下落しました。これに続いたのがスペインで7月は2.58%下落し、年初来では15.84%下落、過去1年間では18.79%下落しました。3番目はベルギーで7月は0.80%上昇し、年初来では21.24%下落、過去1年間では23.03%下落しました。
注目すべき点として、日本は7月に5.51%上昇し、年初来では16.33%下落、過去1年間では16.68%下落しました。カナダは7月に5.21%上昇、年初来では8.78%の下落、過去1年間では5.96%の下落となりました。英国は7月に4.30%上昇、年初来では11.11%の下落、過去1年間では9.83%の下落となりました。ドイツは7月に2.69%上昇し、年初来では29.05%下落、過去1年間では31.94%下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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