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「すべての見えない光」

長編小説を読んで、
ラストがつまらないことほど落胆させられることはない。
自分の嗅覚が悪いといってしまえばそれまでだけれど。
だから、書評を頼りにして読んでみたのだけれど。

 

それでも、収穫がなかったわけではない。

文体は、珍しい現在形で書かれている。
次に、この作品の構成は、トマス・ピンチョンの「V.」のように、
時間がバラバラに描かれている。
それに加えて、主人公2人の物語が交互に流れていく。

 

フランス人で盲目な少女の生活振りや、
前半に登場する父親との交流は独自の工夫があってオモロイ。
その父親が働く博物館にある秘密の宝石も、存在感があった。

 

ナチスに採用されたドイツ少年の、
無線という見えない光による体験も生き生きとしてオモロイ。

 

一方で、ナチス将校が秘密の宝石を奪い去ろうと、この二人を翻弄していく。

 

せっかくここまで見事な構成だったのに、
なんでラストがあのような終わり方なのだろうか。
もっとインディジョーンズ的なオモロイ最後に出来たのではなかろうか。

 

作者は、戦争の悲惨さを語ろうとして、
あのようなラストにしたのかもしれないが。
もしそうならば、作者の意図は成功している。
終盤は、読んでいて実に不快な気分にさせられるからだ。

 

★「すべての見えない光」 ピュリツァー賞受賞作
  アンソニー・ドーア著 藤井光訳 新潮クレスト・ブックス

 

 

 

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