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「イベント通過」効果と「政局変化」効果が継続中

昨日の米国株式相場は上昇した(DJIA +273.17 @42,387.57, NASDAQ +48.58 @18,567.19, S&P500 +15.40 @5,823.52)。ドル円為替レートは152円台後半の前日比円高ドル安水準での動きだった。本日の日本株全般は上げる銘柄が多かった。東証プライムでは、上昇銘柄数が1,275に対して、下落銘柄数は323となった。騰落レシオは91.06%。東証プライムの売買代金は3兆5920億円。

TOPIX +24 @2,682
日経平均 +298円 @38,904円

米国では、週内に10月雇用統計の発表を控えるが、中東情勢緊迫化への警戒感が和らいでおり(イスラエルはイランに報復ミサイル攻撃を行ったが、石油関連施設と核施設は攻撃対象外として自制を示した)、それを反映して原油相場が大きく下落して1バレル=70ドルを明確に割り込んで来た。景気敏感株である金融株の上昇が目立ったが、米利下げ期待が後退する中、フラッグスター・ファイナンシャル(旧NYCB)など地銀の一角は赤字決算となった。

本日10月29日の東京市場では、海外投資家は日本の政治の不安定感が高まると見て先物で売り込んでいたが、重要イベントが通過したことで買戻す動きが昨日に続いて本日も継続した。日米の長期金利が上昇していることから、利ザヤ拡大・収益拡大を期待して三菱UFJFGや三井住友FGなどメガバンク株と第一生命HDや東京海上などの保険株が目立って買われた。石破政権の防衛力強化という方針を見越して上昇していた三菱重工など重工株は防衛増税の可能性が下がったことでこのところは売り優勢だったが、本日は上昇に転じた。

政局の変化も株価の上昇を促した。与党(自民党・公明党)は衆院選で大敗して過半数割れとなったため、特別国会での首相指名選挙に勝つためにも、国民民主党のなど野党の一部との連携を模索するしか現実的な方法がない。国民民主党の玉木代表は「政策ごとに良いものには協力し、駄目なものには駄目だと言う」と述べ、案件ごとに与野党が強力する部分連合の可能性に言及した。今回の衆院選で議席数を4倍に増やした国民民主党が掲げる政策は減税や社会保険料の軽減により国民の手取り額を増やすことである。与党が国民民主党の協力を得ようとするならば、且つ、来年夏の参院選で勝利しようとするならば、彼らの政策に近づくしかないだろう。これは株高要因となる。さらに、与党が過半数を割り込んでいる今、金融所得課税強化のような株式相場を逆なでするような政策を強行することは難しくなった。これも株式相場にプラス要因として働く。

米長期金利が強含みな訳について。11月5日の米国大統領選挙では大型減税を延長することを掲げている共和党のトランプ前大統領が勝ちそうだという報道が増えて来た。それを織り込む形で長期金利が上昇している。大型減税が実際に実施されれば、インフレが再加速し、連邦政府の財政赤字が拡大することによりそれを穴埋めするために米国債が増発される。その結果、長期金利には上昇圧力がかかる。このようなロジックから米10年債利回りは一時4.30%まで上昇した。米長期金利が高止まりすれば、それは円安ドル高を促す力となる。それは銀行・保険株と自動車などの輸出関連株には追い風となるが、資本コストの上昇を通して、遠い将来に期待されるより多くのキャッシュフローが高い株価の理論的源泉となっているハイテク成長株の理論株価を押し下げることになるので、半導体関連銘柄には下げ圧力となる。

10月30~31日には日銀の金融政策決定会合が開催される。8月の実質賃金が前年同月比0.8%減となった。振り返ると、実質賃金が約25年間ほぼ上がらず、変わらない。これでは「賃金と物価の好循環」を目指す日銀としては追加利上げをしようとする環境が悪い。ここで労働生産性と賃金上昇について。経済理論では、労働生産性(雇用者一人当たりの実質付加価値、つまり、企業の実質粗利益)が高くなると労働者に支払われる賃金も高くなるとされている。しかし、すべての国に当てはまるわけではなさそうである。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏の調査によれば、1998~2023年の期間で見ると、日本の時間当たり生産性は3割強上昇したにもかかわらず、同じ期間の実質賃金は横ばいだった。ところが、同期間に米国の生産性は5割強上昇し、実質賃金は3割弱増加した。日本では、大企業(=金融を除く資本金10億円以上の企業)の労働分配率は2023年度で48.2%と54年ぶりの低さとなったが、逆に言えば賃上げの余地が高いと言える。他方、中小企業(=資本金1億円未満の企業)は労働分配率が80%前後で高止まりしており、これ以上の賃金を払うのは困難である。近年では大企業で変化しつつあるが、日本企業の賃金は長い間の年功序列の歴史により年齢相応の家庭を養うための生活給を支払うという発想が根底にあり、且つ、企業が突発的なことがあっても倒産しにくいように内部留保を高めることは良いことであるという発想も根強い。したがって、同期入社の平均社員の3倍の売り上げを達成していても、もらえる給料が3倍多くなるということはない。欧米の企業では並みの社員の3倍稼げば、並みの報酬の3倍を期待できるのとは対照的である。

日経平均の日足チャートを見ると、陽線で続伸して下向きの10日移動平均線、上向きの25日移動平均線の上に再浮上した。勢いだけ見ると今週末までは堅調そうな動きである。しかし、米大統領選挙の結果次第で、少なくとも短期的に株式市場が混乱する可能性も念頭に置いておきたい。特にハリス氏が僅差で勝利した場合は、負けを認めないトランプ前大統領が支持者をまた煽ることで混乱が拡大する可能性が高い。

33業種中30業種が上げた。上昇率トップ5は、銀行(1位)、証券(2位)、その他金融(3位)、鉱業(4位)、非鉄金属(5位)となった。

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