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相場は相場に聞け(その3)

皆さんこんにちは
1週間を1日に凝縮した5月6日が終わり、いよいよ平常ベースの相場が始まります。6日までの相場環境は、アメリカ株の大幅下落、原油高、悪い円安、膠着状況のウクライナ情勢、とどれ一ついいニュースがなかったのですが。日本の相場は寄り付きこそ安く始まったものの、前引けではTOPIXの大幅高、後場には185円高で終了しています。全世界の主要市場が全面安の中何が起こったのでしょうか?

考えられる唯一の変化は、岸田首相が5月5日ロンドンのギルドホールで講演した「資産所得倍増プラン」にあったといわざるをえません。ファンド勢は、貯蓄から投資へ誘導する「INVEST IN KISIDA」に反応したのです。

この講演の評価についてはあとで触れるとして、岸田首相が何を語ったかマスコミ報道を要約すると次のようになります。
(1)岸田文雄首相は5日、ロンドンの金融街シティーで講演し、自身が掲げる経済政策「新しい資本主義」の具体策として、日本の個人金融資産約2000兆円を貯蓄から投資へと誘導する「資産所得倍増プラン」を始めると表明した。人材投資や先端技術開発にも積極的に取り組むとし、「安心して日本に投資してほしい」インベスト・イン・キシダと呼びかけた。

(2)首相は、行政が民間の呼び水となって、格差拡大や地球温暖化問題といった社会課題の解決を図るのが「新しい資本主義」だと説明し、急成長を続ける権威主義的国家に対抗するためにも官民連携で新たな資本主義をつくっていくとした。その具体策の一つとして資産所得倍増プランに取り組むとし、市場を活性化すると述べた。

(3)首相は、日本の個人金融資産の半分以上が現預金で保有され、「その結果、この10年間で米国では家計金融資産が3倍、英国は2.3倍になったのに、我が国では1.4倍にしかなっていない」と説明。「投資による資産所得倍増を実現する」とした。

この考え方に対して市場は反応しましたが、マスコミや経済界はほとんど反応しませんでした。アベノミクス初期に安倍さんが、ロンドンで日本向けの投資を呼び掛けた二番煎じとして、冷ややかに受けとめたものと思われます。

今回の岸田首相の呼びかけを安倍さんとの比較で纏めると、
(1)安倍さんの呼びかけは日本経済の再生が主眼で、「金融緩和」財政出動」「規制緩和」の三本
の柱が用意されていた。
(2)株禍の位置が1万円そこそこで底値期にあったが、現在は天井期にある。
(3)為替は100円前後で当時は悪い円高といわれていた。
(4)原油も5~60ドル台で安定していた。
(5)地政学リスクも今より少なく、投資環境は安定的。
などがあげられます。 

岸田さんは富裕層への増税や自社株買い反対などの発言から、海外投資家(ファンド勢)には当初から人気がなく、SNSでも首相交代を願う声も多く聞かれていました。それが今回の発言のどこにファンドを引き付けたのでしょうか。

アメリカ株の暴落と無縁であるとは考えられません。アメリカのナスダック市場が、インフレによる長期金利の上昇と引き締めの金融政策の結果、バリュエーションを意識するようになったのです。そうなるとナスダックに集まっていたファンド勢の投機資金が、バリュエーションの低い日本市場に流れ込んできたのです。岸田さんの講演はその呼び水だったものと推定されますが、決して無視できません。
 
明日はこの流れの変化で、どのような業種が次のエースになるかを考えてみたいと思います。

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