今年の東京株式市場は日経平均株価が昨年末比2697円(-9.4%)安の2万6094円と4年ぶりに下落して取引を終えた。2022年は世界的なインフレや利上げ、それに伴う景気後退懸念に翻弄された波乱の1年となった。
日経平均は年初こそ500円超の上昇をみせたものの、インフレ高進に伴う米国の長期金利上昇やロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けて、3月9日に昨年末比14.3%安の2万4681円まで急落。その後はインフレ関連指標の動きと金融政策に一喜一憂する米国株市場を横目に、日経平均は2万5500円から2万9200円のレンジで大きく揺れ動いた。そして、終盤は12月20日の日銀による金融緩和修正サプライズによって再び波乱安に見舞われた。
ここでは、全体相場が下落する中で逆行高を演じた銘柄に注目し、今年の株価上昇率ベスト50を取り上げ、その上昇の主因を記した。半世紀ぶりとされる世界的なインフレ、米国をはじめとする各国の大幅な利上げ、急激な円安進行などで大荒れの展開となる中、2022年の値上がり率ランキングは、業績が好調に推移している銘柄の強さが目立つ結果となった。
●上昇率トップはキャンバス、パチンコ関連の健闘光る
値上がり率トップに輝いたのは、抗がん剤に特化した創薬ベンチャーのキャンバス <4575> [東証G]。米国で実施している膵臓がん3次治療を対象とした抗がん剤候補化合物・免疫着火剤「CBP501」の開発が順調に進んでおり、新薬発売への期待が高まっている。6月に臨床第2相試験ステージ1の3剤併用投与群で部分奏効(がんの縮小)や複数の長期無増悪生存が確認され、連日ストップ高に買われるなど急騰劇を演じた。また、11月末には第2相試験の早期終了を決定し、最終段階となる第3相試験の準備を始めたと発表。これを受けて、12月19日に昨年末比8.9倍の1599円まで上値を伸ばしている。
2位はパワー半導体関連の有望株として注目を集めるタカトリ <6338> [東証S]。パワー半導体向けSiC(炭化ケイ素)材料切断加工装置の大口受注獲得が相次ぐ中、10月28日に22年9月期の経常利益を実に18年ぶりとなる最高益予想に大幅上方修正し、11月11日には今23年9月期も前期比6割近い増益となる計画を示した。さらに、電気自動車(EV)シフトなどで世界的な需要拡大が見込まれるパワー半導体が物色テーマとして人気化したことも追い風となり、11月28日に上場来高値9760円をつけている。
3位の円谷フィールズホールディングス <2767> [東証P]は好調な業績に加えて、年前半はメタバース関連、年後半はスマートパチスロの導入で話題になった パチンコ・パチスロ関連と、そのテーマ性でも脚光を浴びた。業績面ではパチンコ・パチスロ機の販売が回復基調にあるほか、「ウルトラマン」のトレーディングカードが中国などで大人気となり、10月28日に23年3月期通期予想の大幅上方修正に踏み切った。株価は右肩上がりの上昇が続き、約16年ぶりの高値圏を快走している。
円谷フィHDと同じパチンコ・パチスロ関連では、パチンコ周辺機器が主力のマミヤ・オーピー <7991> [東証S]が16位、パチンコやパチスロの画像を開発するユークス <4334> [東証S]が20位、パチンコホール向けプリペイドカードシステムを手掛けるゲームカード・ジョイコホールディングス <6249> [東証S]が28位にそれぞれ入った。いずれも株価は年末の全体悪地合いをものともせず、逆行高で上値を追う展開となっている。
旬のテーマに乗る銘柄では、中古品の買取販売を展開する買取王国 <3181> [東証S]、トレジャー・ファクトリー <3093> [東証P]、テイツー <7610> [東証S]の3社がランクイン。SDGs推進の動きや物価高を背景にリユースへの関心が高まる中、上方修正が相次ぐなど好調な業績が評価された。また、水際対策の緩和でインバウンド関連として注目度が高まったHANATOUR JAPAN <6561> [東証G]は24位にリスト入りを果たしている。
このほか、リオープン(経済再開)に絡む銘柄を見ると、大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]と東邦チタニウム <5727> [東証P]のチタン大手がそれぞれ4位、12位に入った。コロナ禍で落ち込んだ航空機向けの需要が回復したほか、円安進行も追い風となり、業績がV字回復を遂げたことで株価が大きく上昇した。また、33位の日本駐車場 <2353> [東証P]は行動制限の緩和による観光需要の回復によって、テーマパークやスキー場の収益が拡大し最高益路線への復帰を果たした。足もとの業績も好調で、株価は約18年2ヵ月ぶりの高値圏に浮上している。
今年の株価上昇ランキングは、好決算を打ち出した内需関連の中小型株が目立つ一方、製造業が少ないことが特徴として挙げられる。半導体不足や中国ロックダウンによる自動車の減産、半導体需要の減速、そして世界的な金融引き締めによる景気悪化懸念などが製造業の上値を押さえた格好となった。
●今年の株価上昇率ランキング【ベスト50】
※12月30日終値の昨年12月30日終値に対する上昇率
(株式分割などを考慮した修正株価で算出)
―― 対象銘柄数:4,114銘柄 ――
(今年の新規上場銘柄、地方銘柄は除く)
銘柄名 市場 上昇率(%) 株価 個別ニュース/決算速報/テーマ
1. <4575> CANBAS 東証G 549 1168 「CBP501」第2相試験の早期終了決定 (11/29)
2. <6338> タカトリ 東証S 483 8080 前9月期営業益大幅増額で3.5倍化し一気にピーク利益更新 (10/31)
3. <2767> 円谷フィHD 東証P 434 2727 スマスロ関連で株高フィーバーの様相に (11/22)
4. <5726> 大阪チタ 東証P 391 3880 今期経常を63%上方修正、配当も5円増額 (11/02)
5. <8139> ナガホリ 東証S 310 976
6. <4393> バンクオブイ 東証G 266 6260 新作大型RPG「メメントモリ」を配信開始 (10/19)
7. <2872> セイヒョー 東証S 251 11270 Wealth Brothersに対する第三者割当増資を実施へ (04/11)
8. <9827> リリカラ 東証S 250 620 今期経常を24%上方修正・34期ぶり最高益更新へ (11/02)
9. <7859> アルメディオ 東証S 231 517 今期経常を一転黒字に上方修正 (11/02)
10. <3187> サンワカンパ 東証G 228 1385 今期経常は15%増で2期連続最高益更新へ (11/14)
11. <7692> Eインフィニ 東証S 202 1743 今期経常を2.5倍上方修正、配当も5円増額 (12/09)
12. <5727> 邦チタ 東証P 195 2790 成長シナリオ不変と評価で国内証券が目標株価引き上げ (12/13)
13. <7901> マツモト 東証S 187 5320
14. <1514> 住石HD 東証S 181 393 著名投資家の井村氏による7%超の保有判明を材料視 (12/02)
15. <3181> 買取王国 東証S 180 1573 11月既存店売上高18.7%増と増収基調を維持 (12/08)
16. <7991> マミヤOP 東証S 166 1614 スマートパチンコ・パチスロ関連株に年初来高値相次ぐ (12/12)
17. <7868> 広済堂HD 東証P 165 2120 上期経常が79%増益で着地・7-9月期も2.1倍増益 (11/09)
18. <3093> トレファク 東証P 157 2442 23年2月期業績及び配当予想を上方修正 (10/13)
19. <3306> 日本麻 東証S 154 916 上期経常が3.1倍増益で着地・7-9月期も4.3倍増益 (11/11)
20. <4334> ユークス 東証S 152 1342 23年1月期第3四半期営業利益倍増で通期計画超過 (12/12)
21. <7080> スポーツF 東証G 151 1825 1-9月期(3Q累計)経常は22倍増益・通期計画を超過 (11/14)
22. <9274> KPPGHD 東証P 142 791 今期経常を97%上方修正・最高益予想を上乗せ、配当も3円増額 (11/14)
23. <4395> アクリート 東証G 140 3350 今期経常を33%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/11)
24. <6561> ハナツアーJ 東証G 140 1637 旅行関連が軒並み高、水際対策緩和と円安の恩恵 (10/11)
25. <4417> Gセキュリ 東証G 138 3995 今期経常は69%増で5期連続最高益更新へ (05/13)
26. <7352> Bエンジニア 東証G 136 973 今期経常は23%増で2期連続最高益更新へ (10/14)
27. <4777> ガーラ 東証S 133 515 東南アジアで「フリフユニバース」のサービス提供開始 (05/20)
28. <6249> GCジョイコ 東証S 131 2352 パチンコ関連株が一斉高、来年3月にらみ物色人気加速 (12/27)
29. <4442> バルテス 東証G 128 3105 今期経常を20%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/14)
30. <2585> Lドリンク 東証S 127 2623 上期経常は31%増益で着地 (11/08)
31. <2813> 和弘食品 東証S 127 6170 今期最終を87%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/11)
32. <6069> トレンダ 東証G 125 1835 上期経常が2.2倍増益で着地・7-9月期も2.3倍増益 (11/14)
33. <2353> 日本駐車場 東証P 125 310 駐車場事業やテーマパーク好調で8~10月期大幅増収増益 (12/09)
34. <3856> Aバランス 東証S 114 2450 今期経常を35%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/14)
35. <6547> グリーンズ 東証S 112 1077 7-9月期(1Q)経常は黒字浮上で着地 (11/14)
36. <6070> キャリアL 東証P 111 2852 今期経常を38%上方修正・最高益予想を上乗せ (11/09)
37. <7610> テイツー 東証S 110 162 上期経常が38%増益で着地・6-8月期も72%増益 (10/14)
38. <3760> ケイブ 東証S 110 1681 スマホゲーム会社でらゲーの全株式取得で3月末以来の新高値圏突入 (06/06)
39. <6632> JVCケンウ 東証P 110 369 今期最終を一転2.6倍増益に上方修正 (10/31)
40. <3479> TKP 東証G 109 2875 レンタルオフィス『リージャス』事業の売却を評価 (12/07)
41. <2195> アミタHD 東証G 107 1172 芙蓉リースとサーキュラーエコノミーを推進する事業創出で基本合意 (11/22)
42. <4174> アピリッツ 東証S 105 1212 上期経常が黒字浮上で着地・5-7月期も黒字浮上 (09/13)
43. <7298> 八千代工 東証S 105 1399 今期最終を96%上方修正、配当も16円増額 (11/01)
44. <9888> UEX 東証S 105 986 上期経常が3.5倍増益で着地・7-9月期も2.6倍増益 (11/08)
45. <3652> DMP 東証G 103 3175 ザイリンクスアダプティブコンピューティングデバイス向けステレオビジョンIPを販売開始 (11/28)
46. <3660> アイスタイル 東証P 101 542 アマゾン・三井物産との資本業務提携がサプライズに (08/16)
47. <7063> バードマン 東証G 98.9 1880 12月末株主に対する1対2株の株式分割を好感 (12/01)
48. <7184> 富山第一銀 東証P 98.3 585 著名投資家の井村俊哉氏が大株主入りで関心が向かう (11/25)
49. <8029> ルックHD 東証S 97.5 2407 今期経常を14%上方修正、配当も10円増額 (11/10)
50. <8614> 東洋証券 東証P 97.3 292
★元日~4日に、2023年「新春特集」を一挙、“28本“配信します。ご期待ください。
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株探ニュース
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