【QAあり】NCS&A、営業利益は過去最高を更新、3期連続で配当を増額修正 自社製品によるソリューション強化を推進
NCS&Aは
小林裕明氏:NCS&A株式会社執行役員常務経営戦略室長の小林です。2024年3月期の決算概要についてご説明します。
NCS&Aについてです。1961年に大阪市で創業しました。従業員数は単体で909名、グループ全体で1,190名です。職種の比率は、技術職、事務職、営業職が8対1対1となっています。地区別勤務者の比率は、大阪、名古屋、東京が5対1対4です。
お客さまは約1,800社、パートナー企業は約200社あります。従業員の有給休暇取得日数は年平均17.9日、残業時間は月平均12.1時間で、8年前に比べると約54パーセント削減できています。営業利益率は8.7パーセント、ROEは13.4パーセントです。
NCS&Aニュース
当社のニュースです。昨年度の営業利益は過去最高益を更新し、営業利益率は8.7パーセントでした。3期連続で配当を増額修正しています。
2023年6月からは、給与水準を約4.5パーセント引き上げています。「健康経営優良法人2024」にも認定されました。
2024年3月期 通期 経営成績
2024年3月期通期の経営成績です。売上高は189億700万円、営業利益は16億3,800万円、経常利益は17億5,900万円、親会社に帰属する当期純利益は15億3,600万円でした。当期純利益については、退職給付制度終了益の3億6,000万円を含んでいます。
売上高(売上区分別)の状況
スライドは、売上区分別の状況を示したものです。左側の円グラフが2022年3月期、右側の円グラフが2024年3月期を示しています。
売上区分を簡単にご説明します。自社製品によるソリューションは、自社の主力ソリューションによる売上になります。システムインテグレーションは、提案、設計、開発、導入、運用支援まで含んだワンストップサービスを示しています。
機器・パッケージは、そのもの単独での売上になります。受託開発は、メーカー等からの開発等の受託を示しています。
自社製品によるソリューションの強化を進めており、昨年度ベースで見ると、全体の売上に占める割合は23パーセントまで伸ばすことができています。
営業利益の変動要因(前年比)
営業利益の前年比での変動要因です。売上減による利益の減少でマイナス1億3,400万円、売上総利益率の改善によるプラス3億1,800万円、販売費及び一般管理費の増加によるマイナス8,600万円で、2024年3月期の営業利益は16億3,800万円という結果でした。
利益率の改善については、主力ソリューションへのシフトを進めたことによる利益率改善に加え、システムインテグレーションでのPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)活動の効果によるトラブル減少で利益率が改善できている状況です。
受注・売上・受注残の状況
受注・売上・受注残の状況です。スライドのグラフは、2022年3月期からの3年間の推移を示しています。青色の折れ線グラフは、期末の受注残を示しています。棒グラフは、青色が受注高、水色が売上高を示しています。
2024年3月期の受注高は199億4,800万円、期末の受注残は49億7,600万円で、昨年度より約10億円伸ばすことができています。
資産・負債・純資産の状況
資産、負債、純資産の状況です。資産合計は192億1,100万円となり、前期末から6億2,000万円増加しています。主に、現金及び預金が増加したことによるものです。
負債合計は69億5,800万円となり、前期末から9億9,800万円減少しています。退職一時金制度の廃止によるものです。
純資産合計は122億5,300万円となり、前期末から16億1,800万円増加しています。主に、利益剰余金の増加によるものです。この結果、自己資本比率は63.8パーセントとなっています。
NCS&Aニュース
辻隆博(以下、辻):NCS&A株式会社代表取締役社長の辻です。2025年3月期の重点施策についてご説明します。スライドに、今年度のニュースを4点挙げています。
1点目は、2024年度に始まる中期経営計画を発表しました。2024年度は営業利益18億円、4期連続の営業利益増を目指します。
2点目は、配当性向目標を45パーセントに引き上げました。配当予想は、昨年度から8円増配し、38円としました。
3点目は、昨年に続き給与水準を平均で5パーセント引き上げました。
4点目は、2024年4月1日に新卒採用者68名が入社し、現在は研修中です。2025年は新卒採用数80名を目標としています。
今年は実際には70名入る予定でしたが、2名が大学の単位が足らずに卒業できないという個人的な理由により入社延期とのことです。卒業でき次第、即入社いただく予定です。
「2025年の崖」を背景にDXが進む
2024年度に進めている事業についてです。経済産業省が警鐘を鳴らした「2025年の崖」を背景に、今、多くの企業がDXを進めています。
「2025年の崖」とは、企業がDXを推し進めようにも、レガシーシステムと呼ばれる古いコンピューターシステムが足かせになり対応できず、2025年以降には最大で年間12兆円の経済損失が発生する可能性があるという警鐘です。
企業がITに投資しないのではなく、ほとんどの資金がレガシーシステムの維持に使われていることを経済産業省は懸念しています。経済産業省は、レガシーシステムをオープンで柔軟な新しいシステムに作りかえることを提案しています。
6月現在、当社には約1,200件の案件がありますが、その大半がDX関連の技術的な案件です。
主力ソリューションの推進 <REVERSE PLANET>
DXを進めていく上で、多くの企業に評価いただいているのが「REVERSE PLANET」というソリューションです。「REVERSE PLANET」は、レガシーシステムの膨大なシステム資産を可視化するツールです。
例えば、プログラム修正をする時に技術者は、修正によってどのような影響が起こるかを調査します。当然、手作業であるため時間もかかり、調査漏れも発生します。
ドキュメントなども、おそらく実際に動いているものとまったく違うと思います。このような悩みを解決するのが、「REVERSE PLANET」という可視化ツールです。開発の上流工程において、頻繁に使われるソリューションです。
主力ソリューションの推進 〜ホテル向けOES
当社が得意とするホテル業向けに、宿泊、レストラン、宴会、婚礼などの主力業務をITでサポートしています。
2023年の訪日外国人旅行者は約2,500万人と、コロナ禍前の約8割まで回復したと言われています。日本人による国内宿泊旅行者の延べ人数は約4億7,800万人と、コロナ禍前の数字まで回復していることから、ホテル業界ではIT投資が復活している状況です。
2023年度上期に、ホテル向けのオーダーエントリーシステムをリリースしました。「人手不足になりがちな店舗運営をサポート」をテーマとして、人を介さない注文方法を提供します。
お客さまのスマートフォンから、レストラン、ルームサービス、テイクアウトの注文ができるソリューションで、すでに32件のホテルで使用されています。
社会貢献活動およびサステナビリティ
社会貢献活動およびサステナビリティについてご説明します。男性育休の取得推進について、2023年度の男性育休取得率は93.3パーセントでした。
100パーセントを達成できなかった要因は、育休ではなく有給休暇を取得された方がいたためです。育児休暇を取得すると収入が減るため、奥さまが働けるという状況もあり、有給休暇を取得したそうです。パパ・ママ育休プラスという制度もあるため、こちらの取得を奨励しています。
新卒採用は、2024年4月1日入社が68名で、2025年は80名を予定しています。2024年度は、4人のキャリア採用を行いました。
2020年下期から社内スタートアップ制度を始めており、76件の投資を承認しました。1件あたり最大約500万円の予算とし、3ヶ月以内に結果を出すという社内の挑戦で、これまでに約3億円を使ってきました。
新しいビジネスの芽を育てるというネタ作りもあるものの、商品化も行っており、今年はネタ作りだけではなくて、お客さまとの協創にも取り組んでいきたいと考えています。
コンプライアンス遵守です。目新しいところでは、「ハラスメントとコンプライアンスを学ぶ日」を設定し、全社教育の場を作っていきたいと考えています。創業記念日である10月1日に、一斉教育を行おうと考えています。
環境保全活動として、電気と紙の使用量削減に取り組んでいます。社会貢献活動へも継続して参加していきたいと考えています。
中期経営計画 ~基本方針を支える戦略投資
今年から始まった中期経営計画の概要についてご説明します。スライドの表は、中期経営計画の基本方針を表しています。これから3年間は、この先10年、20年と当社が存続していくための挑戦をする3年間にしたいと考えています。
1点目は、既存事業の強化です。既存事業を発展させ、持続的な成長を目指そうと考えています。自社ソリューションを強化し、他社との差別化、品ぞろえのバリエーションを作っていきたいと考えています。
2点目は、新規事業の創出です。将来に向けた長期的な成長基盤を生み出すため、2025年の崖の先のビジネスを模索します。また、自主ビジネス創出、もしくは信頼できる相手とのお互いにリスクを取った協業ビジネスを作っていきたいと考えています。
3点目は、人への投資です。新卒80名を含め、優秀な人材を集めたいと思っています。社内教育にも注力します。また、女性管理職の育成を図っていきたいと考えています。
従来は、開発できる人間を育てるか、採用してきました。これからは、会社の成長とともに、マーケター、マーケティングエンジニア、データサイエンティストなど、幅広い人材を集めたいと考えています。
社員の働く環境改善にも努め、処遇も改善していきます。2024年6月から、給与水準を平均5パーセント引き上げることを発表しました。2023年度の当社社員の平均年収は723万円であり、さらに処遇を改善したいと考えています。
4点目は、これまでNCS&Aを応援していただいた株主さまへの還元です。会社を経営していくにあたり、社会に貢献し、株主還元を行っていきたいと考えています。これまで、NCS&Aは数多くのお客さま、株主の方々に支えていただきました。
調子の悪い時も、良い時もありましたが、ご支援していただいた株主の方々にお返ししたいと考えています。連結配当性向45パーセント以上を目標に、2024年度の配当予想は38円としています。
以上4点を基本方針として、中期経営計画を展開していきたいと考えています。
中期経営計画(2024-2026)の要綱
中期経営計画の要綱についてご説明します。中期経営計画の位置づけです。収益基盤の安定を維持し、開発事業一辺倒からサービス事業への転換を図っていきます。当社は、技術の会社であると自負しているため、開発を通じた技術力向上と主力ソリューション強化を両立させます。
非財務目標です。女性管理職比率は5.4パーセントから20パーセントに、男女賃金格差は75.5パーセントから80パーセントを目指します。男性の育休取得率に関しては、93.3パーセントから100パーセントにしたいと考えています。
有給休暇取得は平均18日を目指しており、今は17.9日と達成までもう少しというところです。時間外勤務時間は平均10時間を目標としており、今は12.1時間と、こちらももう少しです。
新しいオンライン専門職の導入、地方サテライトオフィスの設置を行いたいと考えています。
事業ポートフォリオの転換
事業ポートフォリオの転換についてご説明します。自主ビジネスの強化を継続して、主力ソリューションの継続投資と拡販を進めます。スライド右端の円グラフのとおり、NEC社やNTT社の下請けなどの受託開発の比率を減らし、自社製品によるソリューションの比率を増やします。利益率の高い自主ビジネスの強化による収益向上を目指しています。自主ビジネスは、経験値やノウハウがたまるため、増やしていきたいと考えています。
機器・パッケージについては、当社はお客さまにワンストップサービスを提供しているため、機器販売は継続します。
人材への積極投資
人材への積極投資についてご説明します。スライド左側に、社員のための環境改善として展開してきた、これまでの取り組みを記載しています。
働き方改革として、7時15分から11時までの間で出社時間を選択できる、出社時間選択制を導入しました。ベテラン社員の多くは7時半出社を選択しており、16時に帰れるという仕組みです。生産性は落ちておらず、逆にアップする要因となっています。
東京3ヶ所、大阪4ヶ所に、オフィスを分散させました。いずれもトイレがきれいで、社員からも「アクセスしやすい」と評判です。また、地方サテライトオフィスも設置したいと考えています。
勤務形態は、テレワークと出社のハイブリッド勤務を継続しています。有給休暇取得促進日を設定しており、今年は9日間設けました。年間9日は有給休暇を取得しようという運動です。
全社員に「iPhone」を支給しており、2023年に勤怠管理システムを自社開発しました。「iPhone」から勤怠管理ができるようになり、1時間単位で有給休暇が取得できるような仕組みとなっています。
例えば、育児があるお父さんやお母さんが、有給休暇を半日取得するのはもったいないという場合に、1時間単位で取得できるような仕組みです。また、介護を抱えている社員も同じく、ヘルパーさんが来ない時間だけに有給休暇の時間を使えるような仕組みです。
スライド右側には、これからの取り組みを記載しています。特に、オンライン専門職の導入を考えています。実は2023年に、3名の社員が「実家に帰りたい」「実家の親を介護したい」という理由で退職したため、非常にもったいないと思いました。
そのため、オンライン専門職を導入し、場合によっては退職するまで会社に来なくてもよいような制度を作ろうと思っています。実家でも仕事ができ、ハワイでもゆっくりできるような制度を作りたいと思っています。
中期経営計画の変遷と目標
中期経営計画の変遷と目標についてご説明します。2026年度には、売上高は230億円、営業利益は28億円、営業利益率は12パーセントを目指します。
スライドには、中期経営計画の変遷を記載しています。おかげさまで、2018年度からの6年間で、過去最高益を更新してきました。期中の配当予想も増額修正することができました。
2017年度の業績を非常事態と捉え、無駄なものを削って収益性改善と主力ソリューションの強化に尽力してきました。あわせて、社員が活き活きと長く働ける会社になれるように、多様な生活を社員に提供して、社員はそこから選択する会社を作ってきました。そのような甲斐があって、6年間業績を伸ばしてきたということです。
2025年3月期 通期 業績予想
2025年3月期の業績予想です。売上高は190億円、営業利益は18億円、経常利益は19億1,000万円、親会社に帰属する当期純利益は13億2,000万円を見込んでいます。
2025年3月期 配当予想
配当予想は、8円増配の38円です。
引き続き、NCS&Aをよろしくお願いします。
質疑応答:2024年3月期が予想以上に好調になった背景について
質問者:2022年度は「REVERSE PLANET」の強い需要があったことから、2024年3月期の営業利益は落ち込むかと想定していたのですが、自社製品によるソリューションの売上比率は維持され、結果、増益となりました。予想以上に順調だったポイントがあったのでしょうか?
辻:2024年3月期は、受託開発から自社開発にシフトしたことが奏功したと思います。当初は受託開発事業からのシフトにあたって、空き工数が発生することを覚悟していたのですが、おかげさまで、主力ソリューションの引き合いが多く、スムーズに転換できました。
質疑応答:自社製品の中で成長を期待している分野について
質問者:新中期経営計画について、野心的な内容でありがたいのですが、今回は自社製品がもう少し伸びてほしいと思っています。自社製品の中で、成長を期待している分野について教えてください。「REVERSE PLANET」やホテル向けOESは伸びる余地があるなど、イメージはあるのでしょうか?
辻:今後は、DX関連ということでマイグレーション案件が増えると思っています。もしお客様が現状と同じようなシステムを新しく構築する場合、期間も費用もかかります。よって莫大なシステム資産を抱えるお客さまほどマイグレーションを選択するメリットが増します。
一方で、中堅中小マーケットに関しては、1,000万円から5,000万円くらいの案件が相当数あるため、こちらにも注力していきたいと考えています。
実はこちらのほうが当社の得意分野であり技術的にも強みがあり、製品強化による差別化も図れてきています。
質疑応答:資本効率についての戦略について
質問者:株主還元の強化がありましたが、資本効率の考え方について教えてください。ROE目標の導入や適正水準などはお考えでしょうか?
辻:当社はこれまで、赤字と黒字を過去繰り返してきたため、2018年度に社長に就任して以降、まず営業利益の確保に注力してきました。
例えば、当社はいろいろな商品を販売してきましたが、それによって営業もSEもリソースが分散していましたので、思い切って得意とするソリューションに絞りました。
加えて、ROEは10パーセントを維持しようと考えています。
また、先行きが不透明な時代であるため、手元の流動資産を残しながら柔軟に対応しようと考えています。
質疑応答:新規事業創出におけるポイントについて
質問者:中期経営計画の基本方針について、事業の観点において新ビジネスの創出と記載されています。お客さま向けの開発ニーズや経営課題に対するソリューションを考える中での新事業かと思いますが、技術開発の観点から、特にテーマとして設定されている企業課題などのポイントについて教えてください。
辻:生成AIがポイントです。2025年の崖の先は、生成AIもしくはAIが主軸になってくるかと思います。
当社は、以前よりIBM Watsonを中心としたAIチームを抱えています。生成AIについてもまずは社内で利用し、次にお客様のシステムにどう組み込むかを研究していきたいと考えています。
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