今週の新興市場は5週ぶり反落。米1月の雇用統計とISM非製造業景気指数が市場予想を大きく上回ったことへの警戒感から週初は売りが先行。政府が日本銀行の新総裁について、黒田東彦総裁と共に金融政策の運営を担ってきた雨宮正佳氏に打診したとの報道で為替の円安が進む中、大型輸出関連株は下支えられたが、新興株の支えにはならなかった。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)高官から連日でタカ派発言が相次ぐ中ではあったが、週前半のパウエルFRB議長のインタビューでの発言内容に大きな変化がなかったことが安心感を誘い、新興株は週半ばは持ち直した。しかし、週末は、翌週に控える米1月消費者物価指数(CPI)を前にした警戒感から売りが優勢となり、それまでの上昇分を吐き出す形となった。なお、週間騰落率は日経平均が+0.59%だったのに対して、マザーズ指数は-0.38%、東証グロース市場指数は-0.26%だった。
時価総額上位銘柄ではサンウェルズ<9229>が週間で+15.8%と上昇、第3四半期の好決算が評価された。直近の新規株式公開(IPO)銘柄ではサンクゼール<2937>も決算が好感されて+13.7%となった。一方、業績予想を下方修正したJTOWER<4485>は-9.4%と下落。スカイマーク<9204>は好決算も上方修正がなかったことが失望され-11.8%。週間騰落率ランキングではnote<5243>が+39.7%と急伸。米マイクロソフトの投資先として注目度が高まっているOpenAI社の「ChatGPT」にも搭載されているGPT-3を採用した創作支援ツールの先行ユーザー募集開始を発表し人気化した。
■米インフレ指標に注意、国内金利にも上昇圧力か
来週の新興市場は弱含みか。マザーズ指数は今週末にかけて上下にヒゲの短い大きめの陰線を形成したことで上昇に一服感が出てきている。共に上向きの25日、75日移動平均線によるゴールデンクロスが示現したばかりではあるが、25日線近くまでの調整は避けられそうにないとみておきたい。
また、日銀新総裁に、経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏が就任する見通しとのサプライズ報道があった。同氏の過去の発言をみる限り、拙速な金融緩和の修正には慎重な発言が見られる一方、長期金利のコントロールは政策微調整には向かないなどとも発言しており、中立的な印象。報道後も同氏は一部メディアにて「金融緩和の継続が必要」との考えを示しており、一時急伸した円も落ち着きを取り戻している。ただ、雨宮氏との相対感ではタカ派寄りと捉えている向きが多いようで、海外投資家の間では特にそうした見方が多い様子。今後の国内金利の上昇圧力が強まったともいえ、この点は新興株の重しとして働きそうだ。
一方、日経レバレッジETF<1570>の純資産総額の減少が続いているほか、最近、海運株に代わって高配当利回り株として人気化していた鉄鋼株の代表格である日本製鉄<5401>が、好決算と年間配当の増額を機に急伸するなどしており、個人は足元の利益確定により損益状況は悪くないと推察される。
来週は14日に米1月CPI、16日に米1月卸売物価指数(PPI)と物価指標の発表が相次ぐこともあり、波乱含みの展開が警戒されるものの、大きく下落したところでは、個人の積極的な押し目買いが入ることに期待したい。
なお、13日にプラスアルファコンサルティング<4071>、BuySell Technologies<7685>、14日にフリー<4478>、そーせいG<4565>などの決算が予定されている。
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