週明け16日の米株式市場でNYダウは110ドル高と5日続伸し、連日で過去最高値を更新した。米中経済指標の予想下振れやアフガニスタン情勢を巡る地政学リスクの高まりで280ドル超下落する場面もあったが、ヘルスケア関連などのディフェンシブ株や決算発表を控えた小売株に買いが入った。ただ、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数は0.2%の下落となり、10年物国債利回りは安全志向から低下が続いた(債券価格は上昇)。前日に453円安と大幅下落していた日経平均はNYダウ上昇を好感して143円高からスタートすると、朝方には一時27750.39円(227.20円高)まで上昇。しかし、積極的に戻りを試す動きとはならず、買いが一巡すると伸び悩む展開になった。
個別では、売買代金トップの郵船<9101>と商船三井<9104>が2%超の上昇、それに川崎船<9107>が4%超の上昇となっている。第一三共<4568>も上げが目立つ。東エレク<8035>は市場予想を上回る決算が好感されたがやや伸び悩み、レーザーテック<6920>も小じっかりといったところ。また、中小型の海運株物色が活発で、共栄タンカー<9130>や明治海<9115>が東証1部上昇率上位に並んでいる。一方、トヨタ自<7203>、ソフトバンクG<9984>、任天堂<7974>が小安く、JFE<5411>は2%の下落。資生堂<4911>などはやや軟調ぶりが目立ち、コロナ禍による経済再開の遅れが懸念されている印象もある。エンJPN<4849>は好決算ながら材料出尽くし感から急落。また、前日ストップ安のエフオン<9514>などが東証1部下落率上位に顔を出している。
セクターでは、海運業、医薬品、倉庫・運輸関連業などが上昇率上位。一方、鉄鋼、石油・石炭製品、空運業などが下落率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の45%、対して値下がり銘柄は49%となっている。
本日の日経平均は朝方200円超上昇する場面もあったが、結局伸び悩んで前場を折り返した。前日の下げ幅の大きさを考えると戻りの鈍い印象は拭えない。業種別騰落率を見ると海運業の上昇が目立つが、米港湾の混乱が続いているとの報道が買い手掛かりとなっているのだろう。以前当欄で示唆したが、企業の生産活動等を阻害しない範囲において、コロナ禍による財からサービスへの需要シフトの遅れ、感染対策に伴う処理能力の低下などは海上物流のひっ迫を助長するだろう。単純な景気敏感株としてでなく、「現環境下で好パフォーマーになる素地があった」と捉えるべきだ。実際、景気敏感色の強いその他市況関連株は本日軟調で明暗が分かれている。好決算の東エレクは寄り付き直後が本日の高値で、上値の重い展開だ。ここまでの東証1部売買代金は1兆円ほどにとどまっている。
前日はクレディ・スイス証券やJPモルガン証券といった外資系証券が日経平均先物、東証株価指数(TOPIX)先物とも売り越していた。また、先物全体の売買高は低調とまでは言えないものの大きく膨らんだわけでもなく、海外勢の売りの影響が強く出やすかったのだと考えられる。
NYダウの連日の高値更新を受け、本日は海外勢の先物買い戻しに期待する向きもあったが、ここまでの値動きを見る限り限定的だと考えざるを得ない。そもそもNYダウの押し上げ役となったのはヘルスケア、小売といった内需・ディフェンシブ色の強い銘柄だった。10年物国債利回りの低下や原油先物相場の大幅下落から景気減速への懸念が後退したとは考えにくいし、フィラデルフィア半導体株指数(SOX)が反落したこともあって、日本株への追い風は期待しづらいだろう。
7月雇用統計を受けて一時1.3%台まで上昇した米10年物国債利回りだが、ミシガン大学の8月消費者態度指数の大幅低下などにより伸び悩んでしまった。今晩の米国では7月小売売上高の発表が予定されているが、足元では消費者のセンチメント悪化により市場予想コンセンサスを大幅に下回るといった見方も浮上しているようだ。「市中心理の読み違いがリスク」という当欄での度々の指摘どおりとも言える。結局、金融市場のトレンド転換なるかどうかの判断は26日から開催される米経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」まで持ち越しとなった感がある。
また、このところ新興市場の動向も注目されているので取り上げておきたい。前引けのマザーズ指数は-1.02%と4日続落し、連日で取引時間中の年初来安値を更新。時価総額としては市場全体への影響が大きいわけでないが、従前非常に賑わっていたグローバルW<3936>が2日連続のストップ安比例配分から本日大幅続落している。7月の連休前に直近IPO(新規株式公開)銘柄が急落したのに始まり、その後決算発表もあって、1~数日の短期間で追い証(追加担保の差し入れ義務)発生レベルの大幅安となる新興株がこれまで多過ぎた。決算発表一巡でこうした急落懸念が和らぐのを期待したいが、個人投資家のセンチメントや資金回転が好転してくるには少々時間を要するかもしれない。
アジア市場では香港ハンセン指数が本稿執筆時点で小幅ながら4日続落しているが、やはりと言うべきか、中国メディアの相次ぐ産業批判報道により足元で規制強化への懸念が再燃しているという。国内外でのコロナ禍への懸念も根強く、積極的に戻りを試すための糸口はつかみにくい。後場の日経平均も上値の重い展開になるとみておきたい。
(小林大純)
<AK>
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