4. 海外事業の今後
現在、中国には丸運国際貨運代理(上海)、丸運安科迅物流(常州)、丸運物流(天津)の3現地法人、5拠点がある。中国国内における本社機能を実質的に上海事務所に持たせることで、湾岸部を基点に「点から線」へ、「線から面」へとネットワークを広げてきた効果が出始めている。中国ーマレーシア間の貿易など、三国間輸送についても実績を積み上げているようだ。
他方、2017年8月に現地法人化したベトナムでは、同国を拠点にメコンデルタ地域を攻めていく方針であり、2019年6月にはホーチミン支店を開設した。日本企業のベトナム進出が活発化していることから、これら日系企業の輸送面をサポートする考えだ。
同社では、海外事業の展開を「点から線」へ、「線から面」へというモデルで取り組んでいる。それによれば、中国は「面」のレベルに到達しつつあり、これから内陸部にビジネスを広げて「面」を大きくする。ベトナムについては、拠点を設けた後の「線」に向かう段階にあり、その意味では成長の余地が広いと言えるだろう。当面は中国でのビジネスを軌道に乗せるとともに、東南アジアを含めたアジア圏におけるビジネス展開を目指す。
5. ドライバー不足
ドライバー不足については、ヤマトホールディングスなどのBtoC中心の業者以上に、同社のようなBtoB業者はより深刻な問題となっている。なぜなら、宅配便の配達は普通免許で対応可能だが、同社が得意とする重量物運送や石油輸送には大型免許が必須となることから、対象ドライバーの数が限定されるからだ。
大型免許は取得に時間を要するため、ドライバーが一朝一夕に増えず、さらに石油ローリー等のトレーラーの運転に必要なけん引免許は実運転経験が必要なため取得がさらに難しい。これに“働き方改革”により1人当たりの時間を縮小せざるを得ない労働時間の問題も加わる。同時に法整備が進められている外国人労働者については、右ハンドル、左ハンドルなど道路交通の制度上の問題もあるほか、石油関連輸送に関しては取扱資格などもネックになるようで、短期的に即戦力となるプロのドライバーを養成することは容易ではない。そのため、外国人労働者の雇用が進むようになった場合はフォークリフトの運転などを任せ、それに従事していた日本人社員をドライバーにシフトさせるといった対応を取ることも検討したいとしている。
さらに同社は、ビジネスのあり方を変えることを顧客に要請するという。一例を挙げると、従来だと集荷時の待ち時間などは業務外と位置付けられていたが、それらも業務に含めることで効率化を図る。いずれにしても、ドライバー不足の解消は成長を目指すうえで対処が必要だ。
従前からの勤労人口の減少に加えて、“働き方改革”による影響もあり、同社はもちろん、業界全体で今後もドライバー不足問題は課題となり続ける可能性が高い。
6. 新型コロナウイルス感染症拡大(コロナ禍)への対応
コロナ禍については、利益面で約460百万円の影響を及ぼすと同社では見ている。同社では、社長を本部長とする非常対策本部を設置し、テレワークの推進を図るとともに、毎日の検温などドライバーの健康管理を徹底している。
7. M&Aに関しての考え方
M&Aについては、長期的な成長戦略に不可欠であると同社では考えている。国内に関しては、一般貨物について良いパートナーがあればタイミングを計ってM&Aを実行する方針である。とりわけトラックやドライバーを増強するために、これまで傭車(ようしゃ)先であった協力会社の買収を進めたいと言う。これは、収益力アップの要因となる自車化の推進にもつながる。なお、海外に関しては、ローカルニーズを取り込むことを目的に現地の輸送関係事業に狙いを定める考えだ。
8. 新規事業・案件
新規事業・案件については、同社が持っているノウハウを活用して開拓する。例えば、一般的に既存の冷蔵倉庫は老朽化しており、きめ細かな対応ができない。これに対し、同社の冷蔵倉庫は5温度帯物流で対応しており、これらを活用すれば後発でも十分ビジネスチャンスがあると目論む。
また、CSRの観点からも、ビジネスにつながるものに積極的に取り組んでいる。その1つがスポーツ物流である。例えば、運動部の遠征などを効率的に行うことで、部のコスト削減になるような運送を提案し、アマチュアスポーツをサポートしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野文也)
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