前週末1月29日の米国株式相場は大幅反落。ダウ平均は620.74ドル安の29982.62ドル、ナスダックは266.46ポイント安の13070.70ポイントで取引を終了した。中国株式相場の下落や一部投機過熱を受けた金融システム安定リスクの上昇が警戒され、寄り付き後大きく下落し、神経質な展開が続き、引けにかけては下げ幅を拡大した。
米国株安を受けた今日の東京株式市場は、寄り付きこそやや売りが先行し、日経平均は小幅安で始まったが、その後はプラス圏で堅調に推移した。米国での投機的な取引による混乱は、米証券取引委員会(SEC)が動き始めていることなどから近いうちに収束するとの見方もあり、また、日経平均が先週末までの2日間で1000円近く下落したことなどを受け、押し目買い優勢の展開となった。
個別では、21年3月期が3度の上方修正で大幅増益予想となったスクロール<8005>がストップ高となり、20年4-12月期の営業利益が前年同期比74.3%増となったZOZO<
3092>が一時ストップ高まで買われた。このほか、四半期決算発表銘柄では、SCSK
<9719>、アサヒHD<5857>、TOTO<5332>、NEC<6701>、日通<9062>、小糸製<7276>、住友重<6302>、カシオ<6952>、エムスリー<2413>が5%を超す上げとなった。また、決算発表銘柄以外では、ワクチン接種用注射器の増産への動きがRCC中国放送で報じられたJMS<7702>、20年10-12月期の営業損益が35億円前後の黒字だったようだと報じられたコニカミノルタ<4902>が上げた。
一方、四半期決算を発表したTDK<6762>、味の素<2802>、日立建機<6305>、JR東<9020>、村田製<6981>などが4%を超す下げとなった下げた。
セクターでは、ガラス土石製品、非鉄金属、金属製品、倉庫運輸関連、海運業などが値上がり率上位。一方、食料品、石油石炭製品、陸運業、電気・ガス業、空運業などが値下がり率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の65%、対して値下がり銘柄は31%となっている。
株式市場が揺れている。米国での空売り銘柄を巡る取引が株価乱高下の端緒とされているが、背景に、ここまで株高を支えてきた金融財政政策の変化を市場が感じ始めている可能性はないだろうか。もしそうであるならば、問題はより深刻になる。また、金融財政政策と同じく警戒材料となりそうなのが、この問題をきっかけとした株式市場の規制の問題だ。
バイデン氏の米大統領就任からまだ10日余りだが、今回の株価乱高下は市場が新政権に突き付けた最初の難題のようにも思える。すでに市場の関心は空売り銘柄取引問題そのものから、この騒動をきっかけとした規制の問題に移りつつある。バイデン政権がこの問題にどう対応するのか。新政権が今後、株式市場と向き合う姿勢そのものが問われる可能性もあり、新大統領と市場との会話は当面の市場の関心事になりそうだ。
少し脱線するが、お許しいただきたい。バイデン米大統領の短縮形名はジョー・バイデン。ジョーと言えば矢吹丈(ジョー)を思い浮かべる年配の方も少なくないと思う。互いに尊敬するライバル力石徹が「おわった。なにもかも」と呟いた後、帰らぬ人となった原因のひとつはジョーが放ったテンプルへの一撃。今回の株価乱高下と規制の問題を考えている時に頭に浮かんだのは、なぜかこのスポーツ漫画「あしたのジョー」の名場面だ。力石徹が株式市場に、そして矢吹ジョーがジョー・バイデン米大統領に重なってくる。これまで市場にかかわってきて幾度か感じた。力強く見える時の株式市場は実は意外にもろいものだ。力石徹のように。ジョー・バイデン米大統領の最初の一手が株式市場のテンプルへの一撃とならなければ良いが。「おわった。なにもかも」。株式市場が呟く場面は想像したくない。
さて、後場の東京市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。米国株の動向が気になるところだが、ダウ平均先物が朝安の後は概ね底堅い推移となっており、やや安心感となっている。一方、発表がピークを迎えている20年10-12月期決算の内容を見極めたいとする向きが多く、また、上述のように、今後の米国市場の規制などの動きにも注意が必要だとの指摘もあり、方向感が定まりにくい相場展開となりそうだ。なお、今日はローム<6963>、京セラ<6971>、任天堂<7974>などが20年4-12月期決算を発表する予定。
(小山 眞一)
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