21日の米株式市場でダウ平均は36.97ドル安(-0.11%)と小反落、ナスダック総合指数は+1.56%と5日ぶり反発。ナスダックは3週連続で下げた反動もあり押し目買いが優勢だった。また、好決算を期待された半導体エヌビディアの上昇を中心にハイテクが全体をけん引した。米ハイテク株高を引き継いで日経平均は226.96円高からスタートすると、半導体を中心に買いが先行するなか一時31906.10円(340.46円高)まで上昇した。為替の円安を追い風に自動車関連にも買いが入った。ただ、心理的な節目を前に戻り一服となると、高く寄り付いた香港ハンセン指数が失速するに伴い、日経平均も伸び悩み、高値から上げ幅を200円超縮める場面もあった。
個別では、米フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の上昇を手掛かりにアドバンテスト<6857>、レーザーテック<6920>、ディスコ<6146>のほか、太陽誘電<6976>、芝浦メカトロニクス<6590>、SUMCO<3436>などが大きく上昇。日米の長期金利上昇を背景に三菱UFJ<8306>、三井住友<8316>、りそなHD<8308>の銀行が大幅高となり、かんぽ生命保険<7181>、第一生命HD<8750>、T&DHD<8795>の保険、岩井コスモ<8707>、大和証G<8601>、野村<8604>の証券なども高い。三井物産<8031>、三菱商事<
8058>、丸紅<8002>の商社も揃って大幅に上昇。ソフトバンクG<9984>は傘下のアームの米上場申請を受けて買われた。ハイデイ日高<7611>は業績上方修正が好感され、さくらインターネット<3778>はGPUクラウドサービスへの追加投資が材料視された。
一方、川崎汽船<9107>、商船三井<9104>の海運、カチタス<8919>、オープンH<3288>、住友不動産<8830>、東京建物<8804>の不動産、京成電鉄<9009>、JR九州<9142>、小田急電鉄<9007>の陸運などが軟調。サカイ引越センター<9039>は株式売出しの発表が嫌気され急落。エービーシー・マート<2670>は業績上方修正も月次動向から概ね織り込み済みで売り優勢。西松屋チェ<7545>は月次動向が良好だったものの短期的な出尽くし感から下落。
セクターでは銀行、輸送用機器、卸売が上昇率上位に並んでいる一方、海運、不動産、陸運が下落率上位に並んでいる。東証プライム市場の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。
日経平均は続伸ながらも、75日移動平均線が上値抵抗線として作用しており、同線を手前にした上値の重さが意識される。一方、東証株価指数(TOPIX)は75日線が下値支持線として機能しているが、13週線がやはり上値抵抗線として作用しており、上値の重い印象は拭えない。
前日はエヌビディアを筆頭とした半導体関連株やハイテク・グロース(成長)株が相場をけん引し、ナスダック総合指数は1.56%、フィラデルフィア半導体株指数
(SOX)は2.83%と大幅に上昇した。これに対し、為替が再び1ドル=146円台に乗せ、円安・ドル高も進んでいる状況も踏まえると、日本株の上昇率の鈍さはやや気になる。
また、本日はハイテク・グロース株が反発しているが、先週末にかけて上昇が一服していた米長期金利は早々に上昇を再開している。米10年債利回りは前日21日、一時4.35%を付け、2007年以来の水準にまで上昇した。海外投資家の夏季休暇入りに伴って商いが減少し、ボラティリティー(変動率)が高まりやすいとはいえ、ここ最近の米長期金利の上昇ペースの速さは懸念材料だ。
25日の国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」でのテーマは「世界経済の構造変化」である。米国では、景気や物価への影響が中立的な金利水準とされる自然利子率がコロナ禍での相次ぐ財政政策などにより引き上がっているとの議論が活発化してきている。こうしたなか、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が講演で自然利子率の上昇について言及した場合には、米長期金利が一段と上昇する可能性がある。
多くの外資系大手証券のストラテジストらが足元の米10年債は買い場だと指摘している。ジャクソンホール会議でのパウエル議長の講演を無難に消化し、海外投資家も夏季休暇から戻って商いが復活すれば、たしかに米長期金利が低下に転じる可能性は十分にある。しかし、一方で、米経済が本当にソフトランディング(軟着陸)に成功するのであれば、米長期金利の低下余地はさほど大きくないのかもしれない。また、米政府の財政赤字の補填を目的に中長期債の発行規模が拡大されている。需給悪化による金利上昇圧力は長期的なものと思われ、金利の先行きについては楽観視できないだろう。ハイテク・グロース株の上値追いには慎重になるべきと考える。
(仲村幸浩)
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