前日6日の米国株式相場は反落。ダウ平均は375.88ドル安の27772.76ドル、ナスダックは177.88ポイント安の11154.60ポイントで取引を終了した。追加経済救済策の合意期待感に大きく上昇して寄り付いた。しかし、貿易赤字が14年ぶり最大に拡大、雇用関連指標も予想を下回ったことが上値を抑えた。トランプ大統領が追加経済救済策の交渉を選挙後まで延期するよう指示したと報じられると、引けにかけて大きく下げに転じた。
米国株安を受けた今日の東京株式市場は売りが先行した。米経済対策の早期合意への期待感が後退し米景気の先行き不透明感が嫌気された。また、昨日までの2営業日で日経平均が400円を超す上げとなった後ということもあり、売りが出やすかった。一方、トランプ米大統領が追加経済対策の与野党協議を中止するよう指示したことは民主党から譲歩を引き出すための戦術だとの見方もあり、日経平均は寄り付きが安値となり、その後下げ渋った。
個別では、第1四半期営業利益が前年同期比64.4%減となった東海ソフト<4430>が10%を超す大幅安となり、仏食品大手ダノンが保有する全株式6.61%を売却するとの発表を受けたヤクルト本社<2267>、第1四半期連結営業利益が前年同期比93.9%減となったインテリックス<8940>、21年8月期連結営業利益が前期比31.0%減予想と発表した日本BS放送<9414>が下げた。
一方、未定としていた21年2月期連結営業利益が前期比6.8倍予想と発表したOlympicグループ<8289>が24%を超す大幅高、第3四半期の3カ月間の連結営業利益が前年同期比51.1%増となったアルテック<9972>が13%を超す大幅高となり、また、第3四半期より高成長路線に回帰として国内証券が格上げしたコムチュア<3844>、成長ポテンシャル評価で国内証券が買い推奨したくら寿司<2695>、自社株買いを発表したアドヴァン<
7463>が上げた。
セクターでは、医薬品、水産・農林業、陸運業、空運業、食料品などが値下がり率上位。一方、海運業、情報・通信業、精密機器、倉庫運輸関連、その他金融業などが値上がり率上位だった。東証1部の値下がり銘柄は全体の57%、対して値上がり銘柄は36%となっている。
今回も「株価=景気/金利」について考える。景気が良くなるか金利が低下する局面で株が上がり、景気が悪くなるか金利が上昇する局面で株が下がるということを表した式だ。これについて書いた前回10月5日の当欄は、「投資家にとって重要なことはニュースの衝撃度ではなく、ニュースがこの式に及ぼす影響を的確に判断することだ」という一文で結んだ。これが簡単なようで意外と難しい。
最近の株式市場を解説する文章でよく目にする「米中対立の激化を嫌気し株価が下げた」というフレーズ。ぼんやり読むと何の違和感もない。しかし、よく考えてみないといけない。「米中対立」を、貿易やハイテクを巡る経済摩擦と、安全保障を巡る軍事面での対立に分けて考えてみる。経済摩擦が激化すると、企業活動の制限や貿易縮小などにより経済が停滞し「株価=景気/金利」の景気を冷やし、株価を押し下げる。ただし、9月28日の当欄で指摘したように、中国企業が担う産業分野を代替する市場が西側社会に生まれる可能性もあり、この点は考慮しなければならない。
一方、軍事面での対立は株価を押し下げるだろうか。いささか古い話だが、太平洋戦争。戦争中の米ダウ平均は40%を超す上昇となった。米国は戦勝国なので米国株の上昇は当然かもしれないが、日本軍が攻勢を強めていたとされる真珠湾攻撃(1941年12月)からミッドウェー海戦(42年6月)直前までの約半年間、米ダウ平均の下落率は12%程度と意外と小さい。米軍劣勢下でも、米軍による軍需の拡大により「株価=景気/金利」の景気押上げ要因と認識されたとも考えられる。
こう考えると、ここで指す「米中対立」が経済摩擦なのか軍事面での対立なのかによって、投資家は対応を変えるべきかもしれない。南シナ海や東シナ海、台湾海峡の緊張はますます高まっている。いつ何時、衝撃的なニュースが飛び込んでこないとも限らない。その時に、ニュースが「株価=景気/金利」に及ぼす影響を的確に判断することが重要だ。「株価=景気/金利」の話は次の機会に続く。
さて、後場の東京市場で日経平均は底堅い動きとなりそうだ。前場の日経平均は寄り付き161円安が安値となり、その後は下げ渋った。日経平均VIは朝方から上昇幅を縮め、その後一時マイナスに転じており、市場心理が朝方に比べ改善していることが窺える。後場もこの流れが継続するだろう。なお、今日夕方、ノーベル化学賞の受賞者が発表される。米国ではFOMCの議事要旨(9月15-16日開催分)が公表され、また、米副大統領候補の討論会が行われる。
(小山眞一)
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