1. グローバル総合エネルギーサービスグループへの進化を目指す
シナネンホールディングス<8132>は、各種燃料や石油製品などを販売する燃料卸売業者の大手である。エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では家庭向け・小売業者向けにLPガスや各種燃料を、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、大口需要家向けに石油製品や各種燃料を販売している。そのほかにガソリンスタンド運営なども行っている。非エネルギー及び海外事業では、抗菌事業や自転車事業、海外事業など多角化を推進している。エネルギー流通の業界は競争が激しく、再生可能エネルギーなど新たなアプローチも求められる一方、生活に必要不可欠な業界と言える。同社は現在、資本効率の改善、持続的な成長、企業風土の変革を進めることで、時代の変化に応えるグローバル総合エネルギーサービス企業グループへの進化を目指しているところである。
2. 第二次中期経営計画で経営基盤と収益力を強化し、成長戦略を展開
同社の強みは、LPガス充填基地や灯油センター※、販売店のネットワークにある。こうした拠点は全国にあるため、同社から販売店へのリーチが短く、サービスの厚さもあって、同社に対する販売店の信頼は厚い。一方、売上高利益率の低い石油製品の卸売への依存度が高いという課題があるため、過去5年の平均ROE(自己資本当期純利益率)は5%台に留まる。同社は、第三次中期経営計画やその先の創業100周年を見据えた現行の第二次中期経営計画で、強みを生かし、資本効率の改善、持続的成長を実現する投資、社員の考え方・慣習・行動様式の変革を推進により課題の解消へつなげていく考えである。そのための事業戦略は明確で、BtoC事業ではM&Aによるシェア拡大や新規商材を使った顧客深耕によって経営基盤を強化、BtoB事業では既存事業の安定的な成長を基礎に新規事業の開発によって収益力を強化、非エネルギー及び海外事業では各事業の環境や特性に応じた成長戦略を展開するとしている。
※灯油センター:2020年3月末時点で、全国にLPガス充填基地25ヶ所、灯油センター84ヶ所を有する。今後、同社は「灯油センター」の軽油出荷能力を増強し、災害時対応能力を高めた最新鋭石油出荷基地施設「オイルスクエア」へのバージョンアップを進めていく予定である。
3. 第三次中期経営計画へ向けて成長けん引役が期待される注目事業
新規事業の中で、同社の中期成長をけん引することが期待される注目事業がいくつかある。韓国再生可能エネルギー事業では、韓国で90メガワットの風力発電設備を建設する計画である。長期固定価格の契約のため収益計画が立てやすいという特徴があり、今後、更なる風力発電プロジェクトに参画できるよう積極的に投資を進めているところである。新型マイクロ風車関連事業では、発電効率や静音性などで注目される新型マイクロ風車を開発した会社と提携した。2022年3月期の本格販売へ向けて検証中だが、既に国内外からの引き合いが増えるなど人気となっている。シェアサイクル事業では、「ダイチャリ」ブランドで電動アシスト自転車のシェアリングサービスを展開、2020年9月末時点で、ステーション数約1,400ヶ所、保有自転車約6,600台と、業界トップクラスの規模を誇る。コンビニや自治体から用地の提供を受け、サービス提供を拡大しているほか、自治体や企業との連携で実証実験をおこなう等、新たな取り組みにも注力している。同社のシェアサイクル月間利用者数・利用回数・利用頻度はいずれも上昇傾向にあり、新型コロナウイルス感染防止対策として、シェアサイクルが新たな交通手段として注目をされていると言える。
4. 新型コロナウイルス感染症拡大の業績への影響は限定的
2021年3月期第2四半期の業績は、売上高79,789百万円(前年同期比13.8%減)、営業利益968百万円(同518.3%増)となった。原油価格・プロパンCPの下落で販売価格が低下し減収となったが、仕入施策や販売施策が奏功したことで大幅増益となった。同社は2021年3月期の業績見通しを、売上高226,000百万円(前期比4.7%減)、営業利益2,200百万円(同10.4%減)と見込んでいる。第二次中期経営計画の中で先行投資が多く減益計画になっているものの、新型コロナウイルス感染症の拡大(以下、コロナ禍)の業績への影響が限定的と考えられるため、同社は期初の業績予想を変更していない。中期的には先行投資が花開き、既存事業の利益率改善と多角化事業の収益拡大を背景に、利益成長していく姿がイメージされる。
■Key Points
・第二次中期経営計画では資本効率の改善、持続的な成長投資、企業風土の変革を目指す
・第二次中期経営計画は第三次中期経営計画へのマイルストーンとはいえ注目事業が多い
・2021年3月期第2四半期は大幅増益達成。コロナ禍の業績への影響は限定的
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<NB>
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