―子どもから大人まで幅広い世代で人気、インバウンド需要回復で成長再加速か―
カプセル玩具の人気が続いている。「ガチャ」「ガチャガチャ」「ガシャポン」などと呼ばれるカプセル玩具は、古くは駄菓子屋などの一角に数台の自動販売機が置かれていたが、最近では大量の自販機を置く専門店の出店が相次いでいる。また、高価格帯や大人向けなど玩具の内容も多様化しており、購入層もかつての子どもから、男女問わず大人を含めた幅広い層へ広がっている。市場規模は右肩上がりで拡大を続けており、関連銘柄も更なる成長が期待できよう。
●「第5次ブーム」で大型専門店の出店加速
カプセル玩具好調の背景にあるのが、売り場の変化だ。かつては駄菓子屋やコンビニエンスストア、書店などの小規模な小売店の店先に置かれていたカプセル玩具の自販機だが、「第3次ブーム」と呼ばれる2000年代に入ると大手スーパーなどの玩具売り場への設置が増加。同じころ、1ヵ所に複数台の自販機が置かれる専門店が出現すると、若者が集まる地域に徐々に出店されるようになった。
現在は「第5次ブーム」と呼ばれているが、特徴は数十台から数百台のカプセル玩具自販機が並ぶ大型専門店の出店が相次いでいることにある。特に新型コロナウイルス感染症が拡大した20年以降は「大人が楽しむ手軽なエンタメ」として出店が加速。ショッピングモールなどで、コロナ禍によりアパレル店などが撤退した後の空きテナントを活用した大型店の出店も増えている。
●インバウンド需要回復にも期待
大型専門店が増えることで、「売り場」「商品」「メーカー」の3つを巡る好循環が回り出したこともブームを支えている。大量の自販機が並ぶ店舗が増えたことで、「面白いものがあったら買ってみよう」というユーザー層を掘り起こし、これがメーカーによる商品づくりにも生かされるようになった。それに伴い、以前は子ども向けが大半を占めていた商品が、大人向けも意識した商品へと変化しており、専門店のなかには大人が購買層の大半を占める店舗も多いという。
また、 インバウンド需要の効果も見逃せない。訪日外国人が帰国する際、残った小銭を使ってもらおうと空港などに設置したことがきっかけだが、海外でも人気のコミックやアニメのキャラクターをはじめ、和風の商品や日本発祥の小物など種類が豊富なことから、日本を訪れる外国人客の間でカプセル玩具が人気化した。新型コロナウイルスの感染拡大に伴うインバウンド需要減少の影響をカプセル玩具市場も受けたが、訪日外国人旅行者数は回復に向かっていることから、カプセル玩具市場にも好影響を与え、成長を再加速させよう。
●カプセル玩具の関連銘柄は
カプセル玩具メーカーは中堅・中小企業も多いが、関連銘柄の代表格はバンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]だ。同社は「ガシャポン」のブランドでカプセル玩具を展開するほか、幅広いラインアップのガシャポン自販機をそろえた「ガシャポンのデパート」を関東を中心に78店舗展開している。11月10日に発表した上期(4-9月)決算説明会でも川口勝社長がトイホビー事業に関して「カードや菓子、ガシャポンなどのカテゴリーがここ数年で大きく伸びている」とコメント。ハイターゲット層向け商品やトレーディングカードなどの好調と並んで同事業を牽引した。また、引き続き出店などを進め事業拡大を図る方針だ。
ハピネット <7552> [東証P]はカプセル玩具業界最大手級で、カプセル玩具自販機のオペレーションを行う。また、カプセル玩具専門店「gashacoco(ガシャココ)」を全国の大型商業施設を中心に69店舗展開している。11月14日に発表した上期(4-9月)決算では「ガシャココ」の出店や新規ロケーションの拡大などが寄与しカプセル玩具事業は前年同期比34.4%増の108億円に伸長。今後も商品ラインアップを拡充するとともに魅力的な売り場展開を実施することで同事業の拡大を狙う。
タカラトミー <7867> [東証P]は、子会社タカラトミーアーツが「ガチャ」ブランドでカプセル玩具を展開。アニメやゲームをはじめとするさまざまなIP(知的財産)とコラボした商品を展開している。11月8日に発表した上期(4-9月)でタカラトミーアーツのガチャは前年同期比19%増となったとしており、特に大人ガチャ市場拡大に合わせた大人ターゲット商品の拡充が貢献したという。
スクウェア・エニックス・ホールディングス <9684> [東証P]は、傘下のタイトーがタカラトミーグループのタカラトミーアーツやペニイと組んでカプセル玩具専門店「ガチャステ」の展開を21年12月に開始した。アミューズメント運営のノウハウを持つタイトー、多くのガチャ製品を生み出してきたタカラトミーアーツ、カプセル玩具の卸であるペニイの3社が協業することで、順調に店舗数を拡大しており、現在は全国で18店舗を展開している。
ブシロード <7803> [東証G]は、MD(マーチャンダイジング)ユニットに属する子会社ブシロードクリエイティブがカプセル玩具の企画・製造・販売などを手掛けている。11月14日に発表した第1四半期(7-9月)決算でMDユニットの売上高は前年同期比0.9%増にとどまったが、会社側によるとカプセル玩具やライブグッズは好調だったとしている。
イオンファンタジー <4343> [東証P]はカプセル玩具専門店「TOYS SPOT PALO」を展開している。足もとで出店を加速させており、今年11月までに国内で139店舗を出店。8月には海外1号店をマレーシアに出店した。10月5日に発表した上期(3-8月)決算ではカプセル玩具売上高は前年同期比62.5%増になったとしており、業績も好調だ。
このほか、「たべっ子どうぶつ」や「サラブレッドコレクション」などのカプセル玩具を手掛けるエスケイジャパン <7608> [東証S]、「ハローキティ」をはじめ多くのIPを有し、カプセル玩具にも展開されているサンリオ <8136> [東証P]などにも注目したい。
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