3. 橋本総業ホールディングス<7570>の強み
近年、MRO(間接資材)※の販売において、MonotaRO<3064>やアスクル<2678>、アマゾン・ドット・コム
※Maintenance, Repair and Operationsの略。生産に直結する原材料・資材・部品など専門性の高い直接材以外を指し、建築資材業界以外でも広く使用される工具や消耗品などの経費購買品のこと。
同社は、取引先向けに商品情報や地域~マクロの情報、人材の研修・教育などのサービスを提供することで業界自体を育成しているほか、設計段階から見積もりに参加するなどし、業界に深く関わっている。この結果、流通を高付加価値化し、仕入先との取り組みもより深いものとなる。このようにして同社は、メーカー、2次卸、ゼネコン、工事店と、川上から川下までが一体となった強固なバリューチェーンを構築している。これを同社は、仕入先、販売店、工事店及び同社による「4位1体」と呼んでいるが、インターネット通販やホームセンターが持ちえない強みと言える。このほかにも、主要倉庫や各拠点で在庫を取りそろえていることや、経営相談や後継者育成などのサポート、IT技術の活用など、同社独自の強みがある。特に、IT技術については積極的に活用している。土日祝日も含め24時間365日いつでも注文や在庫検索のできる会員専用Webサイト「OPS」を運営している。またネットカタログ「e設備NET/PRO」では、建築現場で必要となるカタログや図面などをWeb上から取り出すことができる。販売店からのWeb受注は既に売上の2割を超え、口座数も毎月伸びているが、販売店の効率化のため、さらに比率を引き上げることを目指している。これらの強みが評価され、同社は工務店の多くから支持されていると弊社では見ている。
在庫の積み増しと仕入・販売価格のコントロールにより収益性が向上
4. 収益向上に向けた取り組み
水道用材料からスタートした同社は、管材類全般から住宅設備機器類などへと取扱商材を拡大することで取引メーカー数を増やしていった。1980年代以降は全国展開を目指すエリア戦略を背景にシェアを拡大し、足元ではおおむね全国をカバーする管工機材・住宅設備機器卸へと成長した。近年はM&Aを積極化することでグループを拡大させていることから、2016年4月に持株会社体制に移行した。狙いは、共同営業・共同仕入・共同配送などによってグループ会社間のシナジーを発揮するとともに、西日本の深耕や、管材から電材や建材への領域拡大、インターネット取引など新たな事業への取り組みを強化することにある。ここ数年、収益性が向上しているが、競争が起こりにくい低単価品やトレンド商品などの在庫を積み増すことにより、在庫リスクを取るようになったことが背景にあると考えられる。一方、コロナ禍や原材料価格高騰のように在庫リスクが取りづらい状況になった場合には、仕入価格や販売価格をコントロールすることで収益性の改善を図っている。このように、在庫の積み増しと仕入・販売価格のコントロールが、同社の収益性向上に寄与していると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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